●親の愛情

もう知って頂いている方もたくさんいらっしゃると思いますが、7月16日我が家にわん子がやってきました。
私は犬・猫を飼った経験がなく、うさぎをかつて飼っていただけでした。
「犬と暮らす生活」というのは昔から憧れていました。
「犬」と聞くと、道端で散歩している愛らしい姿や、車の助手席にちょこんと座ってドライブのお供をしている姿や、果てはアニメの名犬ラッシーやフランダースの犬まで想像して、犬ってなんて飼い主に忠実でおりこうなんだろう・・と感心していました。
犬を飼おう!と決めた時、私も犬とお互い堅い絆で結ばれたステキな関係を築きたい!と思い、私の横にいつも忠実な犬がちょこんとくっついている姿や、おりこうそうなつぶらな瞳で私を見上げる姿を想像して胸を膨らませていました。
ものすごく気合いが入っていた私は、連日インターネットや犬の育て方なる本を買ってきては、ふんふん、そっかーと感心しながら勉強に励んでいました。
まだどの子を飼うかもわからないうちから、頭の中で犬と接している自分をシミュレーションするあり様です・・。
何度も何度も本を読んで、頭の中に躾の仕方がインプットされました。
「よし、この通りすれば完璧。」と思っていました。
私と夫の生活スタイルを考え、我が家にピッタリな性質だろうなと思われたパピヨンを飼うことに決めました。
手続きも済ませ、あとは我が家にやってくる日を待っている間に、飼育に必要なサークルや餌、餌や水の器、トイレシート、おもちゃ等一つ一つを揃えるのも、一生懸命名前を考えるのも、またとても楽しいものでした。
待ちに待ったわん子がブリーダーさんの家からやって来る日、前日までにもう既に全ての物をセッティングし終えていた私は朝からそわそわ待っていました。
運悪く台風がやってきている日と重なり一時は延期か!?とドキドキしていましたが、無事到着しました。
箱からわん子が取り出され、初めて対面した時のかわいさといったら・・。
うちにやって来た「ショコラ」は、もの珍しそうにトコトコと少しよろけながら部屋の中を探索し始めました。
「か、かわいい〜」と見ていると、うちの自慢の和室に歩いていって、そして・・・「ジャ〜」。
さっそくおしっこを粗相しました。
それからが子犬との奮闘の日々の幕開けでした。
私の頭の中には既にトイレの躾の仕方がインプットされていました。
『子犬が粗相をしても叱らないように。叱ると排泄行為自体が悪いと考えるようになるので、隠れて排泄をするようになってしまいます。

「そう、叱っちゃダメダメ。」と始めは黙々とその処理をしていました。
でも余りにもあちこちで粗相はするは、サークルの中にいてもトイレ以外の場所でおしっこもうんちもして、体中が汚れたり、ちょっと留守をするとサークルの外にうんちが飛び散っていたり、いい加減我慢の限界です。
何度も何度も教えても、私なりに工夫をしても全然わかってくれません。
「何で??飼育書にはあんなに簡単にできるようになるって書いてあるのに〜!!」
「私の教え方が悪いのかな?」「この子がバカなんだろうか?」「どうしてできないんだろう??」
こんな考えがぐるぐる常に頭をまわります。
おまけに夜鳴きで寝かしてもくれないし、始めの一週間は夫婦共々くたくたでした。
こんなに子犬の躾が大変だなんて、本当に想像もしていませんでした。
かわいい姿を見ていると、ついつい甘やかしてしまいそうになる気持ちを押さえて
「ダメ!この子の将来の事を考えると今が大事な時期なんだから、しっかり躾しなくっちゃ」と思う時もあれば、「でもそう言っても新しい家に来たばかりで、この子はまだ不安で一杯だろうし、何を言ってもまだ赤ちゃんなんだし・・。」という思いもでてきます。
どこまで躾をして、どこまで可愛がってあげたらいいのか?この境目が難しい・・・。
どうしていいかわからなくなると、インターネットの子犬育てのコーナーを見ながら、「こういう風にすればいいのか」と感心したり、この方法はやってみたけどショコラにはうまくいかないなぁと悩んでみたり。
躾の方法はわかっていても実際にうまくいかないと、自分に自信をなくしてしまったり、試行錯誤の連続でした。
犬でこれだけ大変なのですから、人間の赤ちゃんだったらどれだけ大変なことか・・・。と感じました。
よく子育ての真っ最中のお母さん方が育児書と睨めっこをして、ああでもない、こうでもない。と悩まれている気持ちが本当に良くわかりました。
育児ノイローゼになる気持ちも、大人が本気になって小さい子に腹が立つ気持ちもわかるような気がしました。
皆こうやって悩みながら、手探りで一生懸命「育てる」ということをしているんだな。
そうか、私の母もこうやって色々悩みながら私を一生懸命育ててくれたんだな・・・。と身に染みました。
と、同時に悪いことばかりして怒り狂っていた私も、すやすやと寝息を立てて可愛い顔をして眠る姿を見ている時は、本当にいとおしい気持ちが込み上げてきたり。
手がかかって大変な反面、ただ無邪気に一生懸命生きている姿を見る度に、大人に無上の喜びを与えてくれる小さな存在に、すごく癒され救われる自分がいます。
そういえば、母も「怒った後にすやすや眠る姿をみたら、ちょっと怒りすぎたかなってよく反省したものよ。」と言っていたな・・・。
私達に自立心が芽生え初めて思春期を通って大人になり始める頃、親に対して文句が一杯でてきます。
「私のことなんて、ちっともわかってくれてない!」「親なんだからこうするべきよ!」「もっとこうして欲しい、ああして欲しい!」etc・・・。
確かに子供には子供の言い分があります。
そして、親も人間なので完璧ではありません。出来ないことも間違っていることもあります。
でも親なりに一生懸命努力してくれたこと、私達の知らないところで悩みながら精一杯与えてくれた愛情が確かにあると思います。
コインロッカーベイビーの話をご存知でしょうか?
昔外国で、ものすごく残酷な実験がなされたことがありました。
生まれた赤ん坊をコインロッカーに入れて、ミルクなど必要な物は与えるのですが、スキンシップなどを与えずにどこまで育つか?という実験がなされました。
物理的にはちゃんと生きていけるはずなのですが、やはりスキンシップや愛情というものを与えられない赤ちゃんは、10歳までほとんど生きられなかったそうです。
ということは、現在生きている私達には確かに「愛」があったということになります。
私達が望んだ与えられ方ではなかったかもしれません。でも「愛」は確かにあったのです。
私達に後輩ができたり、部下ができたり、親になった時、親の愛情を実感できるようになるのかもしれませんね。
根本理加

この記事を書いたカウンセラー

About Author

退会しました。