外食をするときの僕の楽しみの一つは、新しい料理に出会える事です。
この料理はこんなもの、とか、こんな味とか、こうして食べるべき、とか、自分自身が持っている食材や料理に関する固定観念の多さに気づかされる事も多々あります。
「創作料理」と銘打っているお店も最近は随分と多くなりましたが、料理の世界で固定観念はどうも禁物のようですね。おそらく、百人の料理人がいれば、百人のアイデアや工夫が盛り込まれている百通りの料理があるのではないか、と思っています。
僕が固定観念を打ち砕かれた例を挙げてみると、
☆焼き河豚(ふぐ)
河豚料理の定番といえば、てっさ(刺身)、唐揚げ、ふぐちり(鍋)と思っていましたが、あにはからんや。醤油とにんにくベースのタレに漬け込んだ河豚を焼いて食べるという料理がありました。
河豚を焼く、というと、干物にした河豚を焼いて食べた事は何度もありましたが、てっさにすることができるような、河豚のおおぶりの切れ身を焼いて食べるという経験は初めてしました。
焼きながら食べるのですが、醤油の香ばしさ、にんにくの香りが食欲を引き立てます。
一口ほおばると、柔らかい河豚の肉からジューシーな旨みが出て、醤油の香ばしさと調和します。
今までの僕の固定観念は覆され、「また食べたい」と思う逸品でした。
☆ポン酢で食べるもつ鍋
もつ鍋の定番は、味噌か醤油をベースにしただし汁に、もつ、にら、キャベツなどを入れて、食べるものだと思っていました。
味付けは、鍋のだし汁なんですね。これも結構美味しいのですが、先日食べたのは、鶏ガラスープがベースになっていて、ポン酢で食べるというものでした。
いつもはこってりとした感じが強いもつ鍋ですが、あっさりした感じで、これはこれでまた美味しいなぁ、と感心しました。
☆生キャベツをのせる豚骨ラーメン
豚骨ラーメンの本場と言えば、九州です。
特に有名なのは、長浜(博多)ラーメンですね。でも、同じ豚骨ラーメンでも九州内の地域によっては味も、トッピングも変わります。
長浜ラーメンは、一般的に紅生姜をトッピングして、豚骨スープ特有の臭いと脂っこさを緩和しているように思いますが、熊本のラーメンで、角切りにした生のキャベツをのせて出すところがあります。
最初は、なんで?という感じだったんですが、これが少し濃い目の味付けのスープやラーメンの上にのっているとろける豚の三枚肉と相まって、絶妙なバランスを作り出していました。
キャベツが、絶妙にラーメンを引き立てている、そんな感じでした。
☆鯖の刺身
これは、地方による文化の違いだと思いますが、関西出身の僕は、両親から「鯖は生で食べたら駄目だ」と厳しく言われていました。
煮付けるか、焼くか、酢でしめるか、というのが関西地方での定番でした。
鯖はいたみが早いので、生で食べるという習慣が無かったんだと思います。
ところが、九州では、鯖は生で食べるのが定番だと知りました。
新鮮な鯖が手に入る地方ならではの事かも知れません。おそるおそる食べてみると、とろけるような感じで美味しさが口の中に広がります。
今では、僕も当たり前のように鯖を生で食べています。
料理の世界では、チャレンジが当たり前なのかも知れません。そして、その評価は美味しいかどうかで決まります。
料理の世界は、チャレンジが固定観念にとらわれない自由な発想から生まれてくる事を教えてくれている身近な一つの世界ですね。
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