ぼく:「昔観た映画でね、あったじゃない、いろいろ話したこと。」
奥さん:「この忙しい時に何言い出すのん。何の映画?」
ぼく:「草薙くんが主役のやつ。あの時話したこと、覚えてる?」
奥さん:「ああ、あの話ねえ。あんたが、ぐだぐだ言ってたやつね。」
ぼく:「あれを思い出してさあ、今」
奥さん:「なるほどねえ・・・」
今年(2008年)8月6日のことです。
僕のおじさんが突然倒れて亡くなりました。
本当にお世話になり、かわいがってもらった方でした。
奥さんにとっても、結婚後はとても付き合いのつきあいのある方だったので
僕達夫婦はそろって驚きを隠せませんでした。
そこで、僕は、昔あったある出来事を思い出したのでした。
僕たち夫婦は、若い時から親友を何人も亡くしています。
しかも、突然であるケースが多かった。
ある時のことです。
僕たち夫婦は、「黄泉がえり」という映画を家で観ました。
(注:昔の映画ですが、観る予定で内容を知りたくない方は、読み飛ばしてください)
この映画は、簡単に説明できるほど単純ではないのですが、
あえて無理にまとめさせてもらえば
あるエリアで、その場所で亡くなった方が、短い一定の期間だけ
生き返って戻ってくる、というお話です。
戻ってきた人たちは、歓迎されたり、戸惑われたりしながらも、
亡くなる前に言い残したこと、やり残したことを
伝え、行うために、限られた時間を残された家族たちと過ごします。
そして、またこの世を去っていくのです。
残された家族や友人たちは、その最後のメッセージを胸に、新しく
人生を生きていこうとします。
当時の僕は、この映画を納得して見終えることができませんでした。
それは、もし、僕の亡くなった親友に同じことが起こったら、
また去っていく時に、あまりに悲しすぎるじゃないか、と思ったからです。
それでも、わずかな時間でも戻ってきてくれるなら、会いたい、そう思う
自分もいました。
なぜだか、ものすごく悲しくなって、この思いを奥さんに伝えたのです。
今思えば、去っていった友人自身がやり残したことを思ったのではなく、
僕自身が彼らに伝え、やってあげられなかったことへの後悔がそうさせていたのでしょう。
自分自身が自分を責めるために自分の中から言わせていたと思います。
そんな僕を救ったのは、やはり奥さんでした。
彼女は僕にこう言ったのです。
「池尾くん。死んだ人はね、けっして生き返ったりしないんだよ。」
その言葉に、はっとしました。
僕だけではなく、奥さんにとっても、同じように大切な友人達です。
こんな話をされたら、奥さんだって友人を思い出して悲しくなります。
僕はそれを忘れて、自らの中ばかりを見て浸り込んでいたのです。
けれど、そんな僕に奥さんは、自分の悲しみをおさえて、
自分の中に浸り込むのと、
自分自身をきちんとみつめて、直面していることを受け入れること
とは違うことを伝えてくれたのでした。
どんなに突然であってもその人には僕たちに伝えるべきメッセージが
その時、すでにある。
もしそうだとしたら、自らの中しか見られなくなれば、そのメッセージを
キャッチすることそのものができないのだと思ったのでした。
おじさんが亡くなった時、思い出したのはこの話だったのです。
そうは言っても。
いくら理屈を並べても、大切な人の死を目前にしたら
誰もが、自分を責めます。
してあげられなかったこと、伝えられなかったことを悔やみます。
その人が伝えたかったメッセージを汲み取ろう。
その人のことを無駄にしないようにしよう。
頭でわかっても、そんな言葉は聞きたくない、と思います。
友人を亡くす度に、僕もそう思いました。
そして、今、おじさんを亡くした時も。
けれど。
今度も、悩みに悩んだすえ、僕が出した結論は、やっぱり同じでした。
亡くなったおじさんの通夜の番、親戚が一同に集まって
いろんな話をしました。
おじさんのこども、つまり、僕のいとこ達は
様々な理由で家を離れていました。
それが、父親の訃報に悲しみながらも集まってきた。
今回のことをきっかけに、家族の絆が戻り始めた気がしました。
大きな変化は何も起こっていません。
でも、こうしてみんなが集まってきたこと。
それだけでも、どれだけ大きな幸せだったか。
この日のことが、この思いがあるだけで、何かが心の中で生またと思うのです。
理屈でわかっていても、悲しすぎる思いは、自分を自らの中に閉じ込めてしまいます。
それは仕方のないことです。
けれど、日常が積み重なっていく日々を送りながら
そして、段々、亡くなった方が伝えられたメッセージがわかるのだと思うのです。
この思いを奥さんに伝えました。
ぼく:「こんなことを思ってたんだよ。
    俺もさ、こういうことがあればいろいろ思うよ、やっぱり。
    でも、それでも、前に進むぞ!って思いが消えないんだよね。
    きれいごとを言うつもりも、無理にがんばって背負うつもりでもなくて、
    何ていうかなあ、決意したって感じ。ただ、決めた。」
奥さん:「そうやねえ。私なんか、今、お腹に赤ちゃんがいるやんか。
    自分の中に育つ命と一緒にいながら、やっぱり思うんよ。
    だから大切にしよう。幸せになろうって。
    あんたと、やんちゃだけどかわいい娘と生まれてくる子と四人でさ。
    それだけだよ。あたしが今、思うのは。」
ぼく:「そういえば、出産ラッシュやねえ。我々の仲間は。」
奥さん:「そうやん。かわいいベビがたくさん産まれるよ。お祝い考えなきゃね」
亡くなったすべての方へ
そして、今を生きるすべての方へ
そして、自分自身と家族へ
心からの感謝と愛をおくります。
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この記事を書いたカウンセラー

About Author

名古屋を軸に東京・大阪・福岡でカウンセリング・講座講師を担当。男女関係の修復を中心に、仕事、自己価値UP等幅広いジャンルを扱う。 「親しみやすさ・安心感」と「心理分析の鋭さ・問題解決の提案力」を兼ね備えると評され、年間300件以上、10年以上で5千件超のカウンセリング実績持つ実践派。