僕には、夢がありました。
その夢とは、「マッシュルームカット」にすること。
なぜそれが夢になったのかはさておき、その夢は、叶わぬ夢なのであります。
なぜなら。僕の髪はくせ毛だから。
髪を伸ばしても前髪はパックリ2つに分かれ、毛先はあさっての方向へ向いてしまうために、実現しないのであります。
「マッシュルームカットが無理ならばリーゼントに!」と思えども、なぜリーゼントなのかはさておき、広いおでこと、この猫毛では、これまた叶わぬ夢なのであります。
「ストレートヘアがうらやましい」
「髪が立つ人がうらやましい」
何度思ったことでしょうか。
「パーマをあてなくてもウェーブが出ていいね」などと言われても、当人にとっては全然よくありません。
夢が叶わないわけですから。
この髪は、長年の僕の密かなコンプレックスなのでありました。
ところが、最近そのコンプレックスが解消されつつあるのです。
もちろん髪質は一切変わっていません。
それどころか白髪が随分増えました。
でも、それが嫌じゃなくなったんです。
きっかけは、娘でした。
娘の髪はクリンクリンなんです。
耳の上の辺りの髪などはクリンとカールして、毛先が上を向いています。
それが、めっちゃくちゃかわいいのです!!
僕は、そのクリンクリンの髪が大好きなんです。
ある日、風呂上がりにクリンとなった自分の髪を鏡で見た時、「娘と一緒だ!」と思ったんですね。
娘と一緒だと思った途端に、あさっての方向を向いている自分の髪のことが好きになっている自分に気づきました。
単純というか、バカというか、自分でも呆れて苦笑いをしてしまいました。
それにしてもびっくりしました。
一生付き合っていかなければいけないこの髪(いや、場合によっては失ってから気づく幸せになっているのかもしれませんが…)のことを好きになることがあるなんて、夢にも思っていませんでしたから。
僕の夢は相変わらず実現しそうにはありませんが、僕は自分の髪を見るたびに、幸せな気持ちになるようになりました。
そして、娘の髪を見ると、もっと幸せな気持ちになります。
コンプレックスを解消する鍵は、「愛」なのかもしれませんね。