この4月から、僕は午前中やお昼すぎの時間帯に、カウンセリングをさせていただいています。
その時間帯のためか、4月から今まで、特に一歳未満~二歳くらいまでの小さなお子さんの子育て中の方のご相談を受ける機会が多く、その中で、強く感じたことがありました。
ご相談内容は様々ですが、カウンセリングの内容を問わず、その中で、以前から僕が感じていることをお話しさせていただくと、多くの方が、「その言葉を言って欲しかった」とお話しくださいます。
それは、たった一言
「子育ては大変です」
という言葉でした。
特に、初めてのお子さんを育てておられる方は、何もかも初めてのことで、生まれて一年くらいは、子どもを育てること以外に全く頭に入らないような状況になります。
ですから、子育て以外の家事が、きちんとできなかったり、夫や家族に目がいき届かなかったりします。
しかも、初めての子育てはなかなかうまくいきません。子どものあらゆることに悩み、苦しんでいることも珍しいことではないように思います。
それは、ある意味、しかたがないことだと思うのですが、多くの方は、「できないこと」を自分に許していないように感じます。
そこにあるのは、「子育てや家事はきちんとやれて当たり前」という思いなのではないでしょうか。
僕がこのことを強く感じるようになったのは、うちの奥さんが同じような苦しみを持っていたからです。
僕の奥さんは、自他共に認める能天気で明るい性格で、本人も「悩むことがほとんどない」と公言している人なのですが、初めての子どもを出産した時に、子育てでものすごく悩みはじめました。
うちの奥さんに限っては、子育てでブルーになることはありえない、とたかをくくっていた僕は、本当に驚いたし、うろたえました。
そんな奥さんを救ってくれたのは、彼女の母親の一言だったのです。
「そんなにこだわらなくてもいいじゃない!」とお母さんは彼女に言ってくれて、ああ、そうなんだ、自分が自分にきちんとやれていないことを許せなくて、自分を責めていたんだな、と気づき、徐々に奥さんの気持ちも楽になっていきました。
この出来事は、僕自身がその時の奥さんに持っていた不満を解消する鍵にもなりました。
当時、僕は、奥さんが子どもにばかり意識が向かっていて、自分のことをほったらかしにされていると感じていたのです。
この感覚は、子育て中の妻を持つ夫が感じることが多いように思います。
僕も、ご多忙にもれず、そうした感じを持っていました。
愛されていない、とか、自分は必要ない、みたいな感じでした。
どうしてこんな感じを持つかというと、夫も子どもが生まれたら、奥さんとは関わり方は違うけれど、すごく悩んで努力しているからなのです。
子どもが生まれたら、その子や奥さんに経済的なゆとりを持たせたいと思うのは自然なことです。
だから、仕事もよりがんばって働いて、たくさん収入を得なければ、と思ったりします。
また、子どもは親の背中を見て育つ、という言葉がありますが、それを意識して、りっぱな父にならなければ、と強く思ったりもします。
けれど、自分なりにがんばっていることが、奥さんにわかってもらえないような気分になることもあります。
でも、真実はそうではなくて、本当にシンプルな理由だったんです。
「子育てが大変すぎて、他に目を向けることができない」
ある意味、ほったらかしにされているのは事実です。
けれど、夫のへの愛情がなくなったのではなく、単に、しかたがない理由があっただけなのです。
つまり、子育て中の夫婦は、妻も夫も悩み苦しんでいる、ということなんです。
お互いに「しっかりしなちゃ」「がんばらなきゃ」「親としてそれは当然」という思いを持っているがゆえに、それができない時に自分を責めていたんだと気づけた時に、相手への不満が、実は、自分への批判だったと気づくことができます。
その思いがあれば、相手を思いやることも、今よりはできるようになってきます。
それは、パートナーへの愛情を思い出し、感じることへつながります。
僕達は、このことに気がついてから、お互いに意識して、「できるだけ話す機会を持つ」ことをやっていきました。
そうすることで、こうした誤解を解消していけたと思います。
人は、様々な問題や困難や苦しみに直面した時に、どうしても自分自身を疑ってしまいます。
それは、相手への攻撃という形にでることもありますが、結局は、自分への批判攻撃なんですね。
子育て中の夫婦は、それぞれに大変なものなのです。
まずは、それを感じることを、自分に許してあげてください。
そして、パートナーへの愛、パートナーからの愛が隠れているだけで、そこには存在することを感じてみましょう。
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