息子が毎週楽しみにしている「仮面ライダーオーズ」を一緒に観ていたら、深く思うところがありました。
「仮面ライダーオーズ」は、子ども番組とは思えな深い話で、とても簡単には説明できないのですが、あえて大雑把に書いてしまうと、人の欲望が怪人を生み出し、人々の生活を脅かす存在になるその怪人を、仮面ライダーオーズが倒す、という話です。
毎回、人が持ついろんな欲望がテーマになります。
「物欲」「食欲」「名誉欲」など、いろいろですが、今回は「正義感」がテーマに展開されていました(2011.2.13放送「第22話:チョコと信念と正義の力」)。
世の中を良くしたいと思っている登場人物の「正義感」が怪人を生み出し、その怪人は登場人物の正義感に突き動かされ、悪事を働いている人達を倒しはじめます。
悪いやつをやっつける怪人を倒す必要があるのか?という仲間の問いに、主人公はこう答えます。
「誰かを守りたい気持ち、自分たちの正義を守りたい気持ちが
どんどんエスカレートすることがある。
正義のためなら、人間はどこまでも残酷になれるんだ。」
「正義感」の怪人を生み出した登場人物=神林と、主人公=映司の正義についての会話が次のように展開されます。
映司:「誰が正しくて誰が間違っているかって、とっても難しいことだと思います。
自分が正しいと思うと周りが見えなくなって
正義のためなら何をしてもいいと思ったり
きっと戦争もそうやって起こっていくんです。
」
神林:「戦争ですか。でも悪い奴らを放っておいていいわけじゃないですよ。」
映司:「目の前で起こっている事に一生懸命になるしかないんです。
小さな幸せを守るために。」
神林:「小さな幸せ」
映司:「自分ができること以上のことはできませんしね。」
神林:「難しいですね。」
映司:「でもやるしかないんです。
自分が関わった人みんなを幸せにするために。
そうすれば、ひどいヤツもきっとわかってくれます。
」
僕は、このコラムで何度か書かせていただきましたが、小さい頃から「世界平和」を願うような子どもで、そのことで悩み続けたことが今の僕を作り出していると思っています。
カウンセラーになって、ご相談を受けていくうちに、この「世界平和」ということに、この仕事が繋がっているのではないかと思うようになりました。
それは、当初は、思っても見なかったことでした。
僕たちのカウンセリングでは、「今の人間関係を作り出しているのは親との関係である」という考えの元にお話を進めさせていただくことが多いです。
それだけ、僕たちの心を形成するのに親との関係は大きな役割を果たしていると言えるわけですが、どんなに大変な家庭で育った方でも、カウンセリングを進めていくうちに、最後には、親に愛されていた自分というところにたどり着くことが多いのです。
子どもを愛していない親はいない。確かにやり方はまずかったかもしれない。でも、親には親の仕方がない事情があったのかもしれない。
そこまでたどり着くことができると、愛されなかったことが誤解であることがわかります。
そして、そんな愛される自分は、愛されるにふさわしい生き方ができるはずだ、と日常に戻って行くきっかけをつかまれることもたくさんあります。
そうしたところにたどり着いた方が結婚して子どもを授かったら、あるいは、すでに結婚されて子どもがおられる方は、今度はその思いを子どもに伝えようとされます。
カウンセリングサービスに寄せられる相談の多くは「恋愛・夫婦関係」の問題です。
その問題を解決して、幸せなパートナーシップを築いていただけること、あるいは、これから新しく出会った方と素晴らしいパートナーシップを築いていただけること、そんなお手伝いをすることが、僕の仕事だと思っています。
幸せなパートナーシップを築かれたご夫婦から生まれる子どもは、やはり幸せを感じながら生きていくのではないでしょうか。
そうした方がどんどん増えていけば、幸せな子ども達はどんどん増えます。
そんな子ども達がたくさんいる社会は、やっぱり幸せな社会なのではないかと思うのです。
僕がカウンセラーになって気がついたのは、「パートナーシップへの貢献は社会への貢献ではないか」ということだったのです。
仮面ライダーオーズの主人公、映司が語ってくれた、「自分でできる以上のことはできない」ことを自覚して「小さな幸せを守るために、目の前のことに一生懸命になる」という言葉は、僕の胸に大きく響きました。
僕の力でどこまで「幸せなパートナーシップ」のためのお手伝いができるかわかりません。
けれど、今できることを一生懸命にやりたいと改めて思いました。
仮面ライダーオーズの主人公、映司が語る平和論は、絵空事かもしれません。
そして、僕のこの考え方も絵空事なのかもしれません。
でも、僕はこのことを「自分ができること」としてやり続けていくつもりです。
それが今、僕がたどり着いた「世界平和」への答えでもあるからなのです。
池尾昌紀のプロフィールへ>>>
2件のコメント
今回のコラム、感動しました。
そうですね。
私も、正義のために残酷になるともあります。
池尾さんとお話してみたいと思いました。
このコラムを読んで、特撮モノの話の中でそういうことを感じられるカウンセラーさんもいらっしゃるんだと、そう思いました。
アニメや漫画、ことに子供向けとして作られている作品にそういうやりとりやお話は多いですよね。
大人向けに作られるドラマや映画って、こんなやりとりはないですもんね。娯楽作品というと、「楽しむためだけ」の作品が多い気がします。
世界平和のため、という言葉と直接繋がらないかもしれませんが、最近深夜アニメで放映が始まった「Fate/zero」という作品が面白いですよ。
主人公は正義の味方になり、より多くの人を救いたいという理想を持った魔術師。
その理念の下行動をするのですが、大勢の人間を救う為、少数の人を殺してしまわざるを得ない、その決断と行動の積み重ねに疲れた主人公は、手にすれば何でも望みが叶うという「聖杯」を求め、魔術師同士が聖杯を求めて争う「聖杯戦争」に挑む、という話です。
他にも、最近作られているガンダムUCでも、やはり似たような話があります。
宇宙移民政策といえば聞こえはいいが、単なる棄民政策だった宇宙移民。
棄てられた民、スペースノイドは、ニュータイプ論を提唱するジオンに惹かれ、やがて自治独立を勝ち取るため、戦争への道を歩んでいく、という。
人間はどうあるべきか。
どう幸せに生きるべきか。
「そんなんわかってるよ」という前提の下作られる娯楽作品よりも、アニメや漫画作品というのは深いところを衝いていると思います。
それは純粋なればこそ。
わかったような気になっている大人の発想では難しいのかもしれません。
別に誰かを非難するつもりは無いんですけどね。
読んでいただいてありがとうございました。