十年、二十年

3月12日、九州新幹線鹿児島ルートが全線開業しました。
九州は、いま元気です。
新幹線の経済効果は、熊本だけでも220億円と試算されています。
しかし、新幹線は地域経済だけでなく、九州に住む私たちをも、元気にしてくれているようなのです。
新幹線が通る福岡、佐賀、熊本、鹿児島はもちろんのこと、大分、長崎、宮崎、九州各地で、“ご当地グルメ”や“おもてなしサービス”が用意され、観光客の方々に楽しんでいただきたいと、みなさんのお越しをウキウキしてお待ちしているのです。
ウキウキしている人の笑顔を見ていると、直接には関係していない人までウキウキしてくるようで、春の訪れと相まって、九州全体がお祭り気分のようになっているのを感じます。
ふと、5年前に訪れた金沢駅のことを思い出しました。
金沢駅の東口広場には、将来新幹線が通ることを考えて建築されたといわれる“もてなしドーム”が建っています。
加賀宝生の鼓を模した木造の門と総ガラス張りのドームとの、全く異質なコントラストは圧巻です。
巨大な鼓門の下に立ち、その美しさに圧倒されて眺めていると、出張だと思われるビジネスマンの話し声が聞こえてきました。
「新幹線が通るのは十年後だろう!?その頃には、古くなってメンテナンスが大変だよ。民間企業では、こんな投資、考えられないことだよ。よくやるなぁ。」と驚いていました。
横で案内人らしき地元のビジネスマンも上を見上げながら、「ほんとうに、何を考えているのだか・・・」と溜息をついていたのです。
そんな話を聴きながら、前日に参加したビジネス講演会で、一橋大学の米倉教授が、「これからのリーダシップにおいては、明確なビジョン(将来の見通し、未来像)を示すことが必要です」と話されていたのを思い出し、このドームは、十年後の金沢の行き先を具現化して示しているのかもしれないと思ったのです。
そして金沢の人達は、このドームを見る度に、無意識のうちに自分たちの行き先を確認することになるのだろうなと思いました。
5年後の今、まだ金沢に新幹線は通っていませんが、九州新幹線が開業したことで、新幹線開通後の金沢の街の雰囲気を、一足先に体験したような気分になりました。
そして、あの巨大の鼓門は、無謀な無駄遣いではなく、いま九州で私が目の当たりにしているような“人々の笑顔と活気に溢れた街”というビジョンを見据えて建てられたのだと確信したのです。
金沢は、歴史と文化と美味しいものが沢山ある素敵な街ですが、長い年月を経ても魅力ある街として存在しているのは、行く先に“ビジョン”を見据えて、十年、二十年とそれを継承してきたからかもしれません。
ビジョンを掲げることは、ビジネスや街づくりに限らず、私たち一人一人の幸せのためにも、とても大事なことです。
私もあの金沢の鼓門のように、「十年、二十年後、カウンセリングを通して、私の周りに“笑顔と活気が溢れる”」というビジョンを掲げたいなと思っています。
追記 今回の大震災で被災されたみなさまに、心よりのお見舞いを申し上げます。
この原稿を書き上げた数日後、東日本大震災が発生しました。
九州新幹線全線開業のイベントを翌日に控えていた九州各県では、全てのイベントを中止し、被災された方々のお力となれるよう、各方面で様々な取り組みが行われています。
遠く離れていて、直接出向いて何をすることも出来ませんが、いま出来ることをしたいと、それぞれが想い、その想いをいろんな形で表わしています。
被災していない地域の者ちが、まず元気でいて、東北の明るい将来像を思い描きながら働き、物資や資金を力強く生み出して、北へと送り出すことも、その一つの形だと思っています。
近い将来、東北のみなさんが元気に笑顔を浮かべ、街に活気が溢れているというビジョンをイメージしながら、被災地の復興を願っています.

この記事を書いたカウンセラー

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