人との距離を強引に縮められた思い出

こんにちは、五十嵐です。
前回のコラム「あの夜が教えてくれた「いま」を感じるということ。」
宮古島に住んでいた時の日記でしたが、たくさんの方に興味を持っていただき、とても嬉しく思っています。
ありがとうございました。
自然はもちろん、人に教えてもらったこともたくさんあった宮古島での生活。
今日はその思い出の一つ。
人との距離感が変わった、ある友達との出来事についてご紹介させていただきます。
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島では人と仲良くなるスピードがとても速くて、出会った次の日に一緒に遊んだりするのもよくあること。
誰の家も車でいける範囲だし、プライベートな時間が多い生活なので、急速に仲良くなることができるんです。
とても気があって、昔から一緒にいるみたい!と思っていたら、気づけばまだ出会って1ケ月しか経っていなかった、なんていうこともありました。
そんなふうに新しくできた友達、数人とイベントに出かけて行ったある日。
私にしてはめずらしく、個人的な悩みがあって気持ちが乗りませんでした。
一緒にいるメンバーは大好きなのに、その日だけは自分の心がついていかない。
いつもみたいに笑えない自分を申し訳なく思っていました。
理由はわかっていて、でもそれは人に言うには恥ずかしい程度のことだったので、このまま時間とともに軽くなって行くのを静かに待とうと思っていたんです。
昼間から盛り上がって、夜もまた集まって飲もう。
気の合う仲間同士、そんな流れにはなっていったけれど
私はこれ以上、その場所にいることすら辛い状態。
こんな状態の私がいたら、みんなにも迷惑をかけてしまう。
かと言って、自分の問題をシェアなんてできない。
みんなにはせっかくの時間を楽しんで欲しい。
そう思って、「今日は疲れたから帰るね」と理由をつけて
夜は家で1人、暗い気持ちを抱えてウツウツと時間が過ぎるのを待ってました。
みんなが行ったお店、私も行きたかったところだった。
今日行けば、もっと仲良くなれたかもしれないのにな。
行けない自分と、行きたい気持ちが交差して、なんだか余計につらくなる。
でも今日はじっとしてるしかできない。そう思っていると
「ピンポーン」
急に家のチャイムが鳴りました。
もう外は真っ暗。引越して来たばかりなのに、こんな時間に誰だろう?
ドアから外をのぞきこむと、昼間一緒だった友達の1人がドア越しに手を振っているではありませんか。
「Yちゃん、どうしたの?みんなと飲んでたんじゃないの?」
びっくりしてドアを開けると、2人分の缶ビールを持ったYちゃんは
「ちょっといい?なんか、かおるちゃんが気になって。私の気のせいだったらごめんね。」
聞くのと同時に部屋に入ってきた彼女は、座るのより早く話を始めました。
「昼間さ、いつもと何か違ったんだよね。何かあったの?
言いたくないのかもしれないけど、もし私でよかったら聞かせて。
ひとりで抱え込まないほうがいいよ。」
正直、面くらいました。
私たちは成長して人間関係に慣れてくると、傷つけない程度の、傷つかない程度の
暗黙の「人との距離」をつくり、それを保とうとします。
都会ではなおさらみんなそれが上手で、クールにこなせることが
「人の気持ちがわかる」「空気が読める」って言われたりもする。
それを彼女は思いっきり無視して、いい意味で「ズケズケと」私の気持ちに入って来てくれた。
もしかしたら私が「放っておいて」「今は言いたくない」そう言って拒否したら、
傷つくのは彼女自身かもしれないのに。
でも彼女は「自分が傷つく」という恐れよりも、「友達が心配」という気持ちの方がずっと勝っていたから私に近づいて来てくれたんです。
そして私は、そこまで近づいて来てもらうと、拒絶するなんて選択はできないことを知りました。
「いやね、ちょっと悲しいことが重なってね。でも情けないことでさぁ、人になんて言えることじゃなかったし、みんなを暗い気持ちにさせたくなかったんだ。」
私は1人で抱えようとしていた気持ちをポツポツと彼女に話し始め、
一度話し始めると雪崩のように止まらなくなり、気づいた時にはありのままを全部、
彼女に話しきっていました。
そして言葉を外に出すのと同時に、自分が抱えていた重い何かも外に出ていき、
気持ちまですっかり軽くなっているのも感じました。
ビール片手に、ニコニコと黙って話を聞いてくれたYちゃんは最後に
「な~んだ、そんなことだったの。言ってくれればよかったのに。
私たちはそんなことじゃ暗い気持ちになったりしないよ。
それより、かおるちゃんが悲しいことをひとりで抱え込んでいるほうが、ずっと嫌だよ。」
そっか・・・
信頼して吐き出すことの大切さ。
普段はクライアントさんに言っている自分が一番知っているはずなのに。
それを新しい友達がサラリと教えてくれた。同時に「信頼」も生まれていました。
それからは、「元気ないのより、吐き出して早く笑顔になったほうがいいのよね」と味をしめたのか、Yちゃんを始め誰にでも何でも話せるようになった私。
話したからと言って批判されるわけではない。
みんな優しい。ちゃんと受け入れてくれる。友達なってそういう存在なんだと。
秘密主義だった私が、フルオープンになった大きなきっかけのひとつ。
今になって、「あの時のYちゃん、迫力もタイミングもすごかったわ~」と話に出すと
「え、そんなことあったかな。わたし飲み足りなかったから、近くに引越してきたかおるちゃんちで飲み直したかっただけだと思うよ。」
カウンセラーも叶わない。
私にとって、Yちゃんはどこまでも最強なのです。
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