コンプレックスと言うと様々な種類があるのですが、ここでは一般的に使われている“劣等感コンプレックス”について一緒に考えて行きましょう。
コンプレックスが生まれる背景には、そもそも心の痛みがあります。傷ついたり、恥ずかしかったり、不安になったりすることを防衛するためにコンプレックスは生まれるのです。
そして、さらに奥には親子関係をはじめとする、様々な関係性や、その関係性から生まれた価値観が影響していることも多いのです。そのため、コンプレックスを解消するためには表面的な原因を取り除くだけでなく、時には歴史を遡って過去の思いを癒すことも必要になってきます。
しかし、そもそもコンプレックスというのはあなたにとっては大切な個性を生むもの。解消するのは何もそれを消してしまうのではなく、前向きに受け入れることでも可能なんですね。
その一方、コンプレックスというのは他人から見ればそう大したことのないものにも見えるので、逆に、私たちは知らず知らず他人を傷つけてしまうことがあるのです。それを逆手にとって、あなたの大切な人のコンプレックスを癒す方法をお伝えしたいと思います。
コンプレックスと言うと、心理学的には「劣等感コンプレックス」だけでなく「エディプス・エレクトラコンプレックス」などいくつかの種類があります。
今回はより一般的に用いられるコンプレックスとしての「劣等感コンプレックス」をご紹介したいと思います。
(本文中ではコンプレックスと表記させていただいています)
心の痛みから生まれたルールがコンプレックスの原因となる
皆さんは今、どんなコンプレックスを抱えていらっしゃいますか?
外見とか年齢。
運動能力。
学歴。
家柄。
今の仕事や職歴。
語学力。
コミュニケーション能力などの人間関係に関するもの。
営業力や企画力などの仕事に関する能力。
私も英語が苦手とか、あまり行動的でないとか、講師なのに声がこもって聞こえにくいとか、顔がデカいとか、海外が苦手とか、色々とコンプレックスがあります。
私たちはコンプレックスがあると、その部分を隠そうとしますし、恥ずかしいし、指摘されたら傷つくし、何とか解消したいけど勇気が出ないし、という問題を抱えます。
だから、なかなか人に言えないんですよね。
言ったらバカにされるような、恥ずかしいような、悪いような、変に思われるような、そんな思いを感じてしまうのかもしれません。
また、私たちはコンプレックスが強ければ強いほど、そこに「特別意識」のようなものを持ってしまいます。
「このコンプレックスはきっと解消できないし、誰にも分かってもらえないし」と誰にも触れさせないように一人で抱え込んでしまうのです。
そうすることでこれ以上傷つかないように「防衛」をするんですね。
そうなんです。皆さんがコンプレックスだと感じているもののそんな心の「傷」と共にあります。
癒されるのをずっと待っている傷なのです。
だから、そこと向き合わない限り、そのコンプレックスは解消されません。
しかし、実はコンプレックスの多くはあなたが決めたルールによって生まれました。
誰かの言葉や態度で傷ついたことは事実なのですが、その言葉で傷つくようなルールを持っていたのは自分自身なんです。
一つの事例を紹介しましょう。
私のクライアントさんのAさんはある時「TOEICで790点しか取れなかった」とすごく凹んでいました。
こんな点数じゃ人に話せないし、バカにされるよ・・・と自分を責めていました。
「ええーっ!すごいスコアじゃない!?」と言うと彼女はこう言うんです。
「帰国子女だったら800点取って当たり前なんですよ。ほとんど900点とかそういう人たちばっかりで」
私のような英語がよく分からない人からすれば異次元の世界ですが、彼女は「自分は帰国子女なのに英語が苦手」というコンプレックスを持っていたのです。
でも、よくよく話を聴いていけば「勉強嫌いだし、苦手なのは試験の方。TOEICの勉強もほとんどしてないし」ということ。
しかも、英会話は全然問題なく、仕事でも海外の人たちとふつうに話が出来ているそうです。
それだったら点数が悪くても全然問題ないじゃない??と思うのですが、彼女は違うようです。
「帰国子女なんだから900点取らなきゃダメ」というルールに縛られていたのです。
でも、そのルールを決めた人、頑なに守っている人は誰でしょう?
彼女自身なんです。
「え?でも周りの人たちもそうなんでしょ?」と思われるかもしれませんが、周りの人が言ってることを選択するのも私たちの自由ですよね。
だから、その意見を採り入れたのは彼女自身の選択なんですよね。
もちろん、実際、帰国子女の仲間に笑われて傷ついた経験があるのかもしれません。
周りの人と同じでないといじめられる、という別のルールが影響しているのかもしれません。
しかし、そのルールを持っているからこそ、また、周りの人の言葉に傷ついてしまうのです。(これは実際に周りの人が声を発さなくても、彼女が持っているルールによって、“そう言っているように聞こえてしまう”のです。
では、どうしたら、彼女はこの呪縛から解放されるのでしょう?
次回はコンプレックスの解消についてお話ししたいと思います。