理不尽な振る舞いをする上司に出会った時、部下の立場で何かできることはあるのでしょうか?
立場が強い上司と、その下にいることに甘んじなければならない自分。たてつけばさらに理不尽なことをされたり、仕事がやりにくくなる可能性だってある。転職するしか道はない、と思うようなケースもあるでしょう。
状況によっては転職が一番の解決方法である場合もあると思いますが、どんな出来事も自分の成長に生かすことができるとしたら?転職するしないにかかわらず、理不尽な上司との出会いを自分の成長につなげる視点、「投影の法則」についてご紹介します。「相手の姿は自分の姿」がキーワードです。
◎リクエストを頂きました◎
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理不尽な振る舞いをする上司に対して、部下は一方的に弱い立場です。抗議しようにもそれがうまく受け入れられなければ、ますます働きづらくなると思います。一度できてしまった人間関係は、当人同士にその意思がなければなかなか壊しにくいものです。その場合、転職しか方法はないのでしょうか。怒りの感情をどう(上手に)ぶつけるか、について、アドバイスがあれば嬉しく思います。
(一部編集させていただいております。)
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リクエストをいただきありがとうございます。
相手が上司でなく、例えば家族であれば、怒りの感情を上手に表現しコミュニケーションをとることで、お互いの意思疎通をスムーズにし関係をよくしていく、ということもひとつのやり方ですね。
しかし職場での場合、「怒りの感情をぶつける(表現する)」という発想より、もっとスマートかつ効率の良い方法がいいのではないかと思います。
もちろん、心の中で「うわっ、腹立つ!」などとはっきり思えることは、心の中でも怒れずにもやもやするよりずっと健康的なのですが、そこからもう一歩先へ進み、自分が成長できる道を見つけていく方法があればベターですよね。
相手の姿は自分の姿~投影の法則~
「投影」という心理法則をご存知でしょうか。
これは、目の前の相手には(自分で気付かない)自分の姿が鏡のように映る、という法則です。
例えば、私は20代の頃、人が怖くて仕方ない時期がありました。すれ違う人さえ怖いのです。その頃、私はカウンセリングを受ける側で、当時お世話になっていたカウンセラーに言われたんです。
「仮に、あなたがナイフを振りかざして歩いているとします。向こうから歩いてくる人がもしポケットにナイフを持っていて、あなたの姿を見たら、その人はどうすると思いますか?」
「わかりません」と私は答えたような気がします。
「逃げるという選択肢もありますが、それができない状況だったら、向こうもナイフを振りかざしてくると思いませんか?」
「そうですね…」と私。
「自分がナイフを振りかざしていると、相手もナイフを振りかざしてくるような気がするんです。人が怖いとしたら、それは、相手が攻撃してくるような気がする、ということですよね。つまり、自分が相手を攻撃する気持ちがあるから、相手も攻撃してくるような気がしてしまうんです。自分の姿が相手に映し出され、それを見て自分が反応しているんです。これが投影です」
丁寧に教えてもらったにもかかわらず、私はこの時何を言われているかがよくわかりませんでした。
つまり、私がナイフを振りかざしている、攻撃している、ということ?だから相手が攻撃してくるように見える、ということ?
私、攻撃しているつもりなんかないけどなあ…。
というのが正直な気持ちでした。私がぽかーんとしていたので、その時は別の切り口に話が移っていったように思います。
その後しばらくかかりましたが、あれこれ自分の気持ちと向き合っているうちに、私は自分がかなりきつい攻撃心を心の内に秘めていたことに気付きました。そしてその解消に努めて、人が怖いということがなくなっていきました。
もともとは誰に対する攻撃心だろうか?
上司が自分に理不尽な振る舞いをする=自分に対して攻撃的、だとしたら、上司に映っているのは自分の姿なので、自分が攻撃的だということになります。
つまり、自分が上司に対して攻撃的、ということです。内心上司を無能だとバカにしていたり、上から目線になっていたり、ということがあるとしたら、それも攻撃なのです。
しかし、問題解決のためにはさらに深層を見る必要があります。上司に対して攻撃的だとすると、根っこのところでは親に対して攻撃的である、と考えられます。親を恨んでいる、というのもそうですし、そこまでいかなくても、親にいろいろな文句があり、あんな親、と思っているとしたら、それは親への攻撃です。
親への文句や、親に対する上から目線を解消すると、上司への攻撃心もなくなり、すると、上司から攻撃されなくなる、ということになります。不思議ですが、実際そうなんです。心理の面白いところですね!
親への文句や攻撃心を解消するには?
親への文句や攻撃心がある時、私たちは思います。「私は正しい。親が間違っている。だから私の怒りの感情は正当である」と。
ところが、私たちは知らず知らず多くのカンチガイをしています。子ども時代に見た親の姿というのは、子どもの未熟な理解力で判断して見たものです。大人にしかわからない事情などもあって、それがわかれば見方がかなり変わってきたりもするのです。
また私たちは往々にして、根拠もなく、「親より自分がエライ」と感じていたりします。赤ちゃん時代、私たちは親に上げ膳据え膳してもらいました。そして知らず知らず、「自分は親にいろいろしてもらって当たり前」という感覚になっていたりするのです。
そして、やり方が悪い!などと文句を言っていたりします。この状態では親の愛も感じられないので、「私は愛されていない」と思っていたりもします。
その辺りのカンチガイを解消し、親にどれだけ愛されていたかがわかると、親への攻撃心はなくなり、上司との関係はもちろん、あらゆる人間関係が改善します。しかも自分が大きく成長できます。
自分のカンチガイを知るのはショックなものですが、それだけの価値は十分あるんですね!
(完)