子どもの頃の私たちには大好きなことに我を忘れて夢中になった経験が誰にでもあるものです。ところがいつのころからか私たちは、わくわくしたり本当に心から楽しいと感じることよりも、誰かに認められたり評価されることにばかり注意を向けてしまってはいないでしょうか。
新しいことにチャレンジしたり、ひとつのことを継続低に取り組んでいくにはワクワクする情熱を持つことはとても大切。「何かに打ち込んでみたいけれど、継続していく自信がない」そんな相談者のリクエストに、”失敗が育むもの”をテーマにお答えします。
◎リクエストを頂きました◎
===================================
子供の頃は絵を描くのが大好きでした。風景やイラストなどを描いているととても楽しく夢中で描いていたことを思い出します。
でも今は、絵を描きたいという気持ちがまったく湧いてきません。何かに打ち込んでみたいという気持ちがありますが、継続していく自信がありません。
何かを始めてみても途中で諦めてしまってばかりいます。何が原因なのか・・諦めてばかりいる自分がいます。
===================================
先日、出張のために利用した飛行機の中でお絵描きに没頭している男の子を見かけました。歳の頃は三歳くらいでしょうか。真っ白なスケッチブック相手に、大人も退屈する長時間フライトの間中、何やら楽しそうに書き込んでいます。
子どもの頃は私たちにも、興味のあること大好きなことに没頭し、夢中になって遊んだことがあったはず。
けれど、大好きだったお絵描きやプラモデルなど、子どもの頃夢中になったことを大人になっても趣味として持ち続けている人は決して多くはありません。
なぜ、大人になると子どもの頃好きだったことを忘れてしまうのでしょう。なぜ私たちは、時間を忘れるほど夢中になれるものをひとつ、またひとつと無くしていくのでしょう。
大好きなことが挫折感を生む
幼い頃の私たちは、ただ楽しいと感じること、ワクワクすることに夢中になることができました。
ところがそんな時代も永くは続きません。「上手に描けたわね」とお絵描きをママに褒められた子どもはやがて、褒められる為に絵を描き、評価されることを期待し始めるからです。
もちろんそれは悪いことではありません。褒められるのが嬉しく、ますます夢中になるなかでどんどん腕前が上達していくことだってあるでしょう。
けれどもし、褒められることが絵を描く目的になったとしたら、楽しむことより上手に描くことが重要になります。そうすると、ただ時間を忘れて夢中になっていた頃のようには純粋に絵を描くことを楽しめなくなるもの。
また、充分に褒めてもらえないと不満に感じたり、挫折感を感じて自信を無くしてしまうこともあるかもしれません。
まずは「楽しむ」ということ
思ったほど褒めてもらえない、望んだ評価と違う。挫折というのは私たちに大きな心理的ストレスをもたらします。
そうした度重なる挫折は、好きなことや新しいことにチャレンジする意欲を私たちから奪っていきます。
もし今あなたに、夢中になれることやワクワクすることがないとしたら、あなたは「楽しむこと」よりも「評価されること」の方に意識が傾いているのかもしれません。
新しいことを始めてみよう考えたとき、それが「楽しいことかどうか」よりも、「上手くできるかどうか」ばかり気になってはいないでしょうか?
どんなことでも、上手くいくことばかりを期待していては長続きさせるのは難しいものです。失敗しても当たり前、そんな開き直りと、まずは楽しんでみようという意欲を持つことが大切。夢中になれるものはワクワクする心の中から生まれるのですから。
失敗が育むもの
新しいことを始めるにも、何かに継続的に打ち込むにもまずは楽しむことが大切です。
心の自然な作用として私たちは、楽しいこと心地のいい事、幸福感を感じること以外に長期間取り組むことができません。
行動するうえで、楽しむということはもっとも効果的なモチベーションといえます。
ところが、どんなに楽しかったこともそう感じられなくなる場合があります。評価され周りからは羨望を集めているにも関わらず、情熱を感じられなくなることがあります。
私たちは他者からの評価を求めると同時に、自分自身の自己評価とも向き合わなければなりません。自分で自分を認められない、満足できないという挫折感は他者から認められない挫折感よりも私たちに大きくのしかかるからです。
何かに取り組み、熟練すればするほど、自分に掛ける期待と求めるクオリティは高くなるもの。
目指すものが高ければ自ずと、不十分さや失敗感を感じることも多くなります。
ひとつのことに継続的な情熱を持ち続けていくには、自分の中の挫折感を越えていく勇気が必要です。
上手くいかないのは目標が高いから、「失敗したっていいじゃないか」と気楽に構えてみることで、挫折感を越えていく勇気を育むことができるのではないでしょうか。
(完)