被害者意識は、「自分は責められるべき人間」という意識がある場合に生じます。
自分が責められる人間と思っているという事は、どこかで「悪い人間」とか「迷惑をかける存在」という加害者意識がある事にもなります。
この加害者の立場は、その人が持っている罪悪感がその元になっています、罪悪感を持つのは、子供の頃の誰かの一言であったり、置かれた環境によるなど、人によりそれぞれです。
罪悪感を持っている人は、罪悪感を人に感じさせる言動をとったり、本当に迷惑な存在になってしまったりする事がよくあります。
そのような人と接するには、罪悪感を感じさせられても、その心理的な罠に引っかからないこと、その深刻さに引きずられず、力を抜いて接してあげる事です。
また、その人をそのような状態から救い出したい場合には、その人に信頼のメッセージを送り続ける事です。
◎リクエストを頂きました◎
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職場に、被害者意識の強い人がいて困っています。
例えば、単純に仲良くなろうと「前の仕事は何をされてたんですか?」と聞いたところ、数日後に以前の名刺を持ってきて「もし気になるのでしたら上司に出したきちんとした履歴書をお見せします」と言ったり、SDカードを失くした人がいて、失くしてしまったと騒いでいたときに、数日後、「見つかりましたか?私のこと(私が盗んだと)疑いましたか?」と言ったり、パソコンのデータが書き換えられているのを、必要以上に「自分がやったのではない、今目の前で直しますから見ていてください」と言ったり・・・
結局その人は、私たちには理由も告げずに上司に退職願いを出し、もうすぐやめてしまうのですが。
私たちが働きづらい職場にしていたのかもと思う反面、どうしてそういう考えになってしまうのか、そういう人にはどう対応したらいいのだろうかと思います。
どうしてそうなるのか、よい対処法など教えてください。
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「私は悪くない」とあたかも証明するような言動をとる人に出会うと、「凄い被害者意識だなぁ」と思いますね。こちらが責めてもいなくて、ただ普通の会話をしているだけなのに、その人は何かを責められているような感覚になったり、そう解釈してしまうのです。
では、この被害者意識はどのような心の仕組みから生まれてくるのでしょうか?
私達の心は、自分が感じている心を自分の外の世界に映し出します。
例えば、自分が辛い中で頑張っているとき、道端に咲く一輪の花を見て「頑張っているなぁ」と思えたり、自分が落ち込んでいる時には、鳥が鳴く声が何か寂しげに感じたりします。これを心理学では投影と言います。
誰でも、どんな時でも見たり感じたりする事は自分の脳の作用で補正してしまう事を「投影」と言います。
分かり易いと思いますので、例えば「見る」という事をいかに脳が補正しているかという事を考えます。
私達の目から入った光景は、先ずは網膜に映ります。網膜はスクリーンのように2次元しか映し出しませんから、遠近感など全く無く、平面画像になり、そのまま脳にインプットされる訳です。
しかし、脳はそれを左右の視差や脳の経験値などから立体的に補正し、私達は網膜に映し出された平面像をあたかも立体のように認識するのです。これを応用したのが3D映像やトリックアートなのですね。
私達は目で物を見ていると思いがちですが、実は脳で物を見ているのです。
これと同じように、感じることや解釈することもまた、脳が補正しながら行っている事なのです。
さて、被害者意識をこの「投影」を使って紐解いていくと、「人に責められる」と感じるという事は、「私は人から責められる存在」と感じている事になります。
私の子供の頃の思い出なのですが、ある日ボールを窓ガラスにぶつけて割ってしまい、悪いことをしたと思いつつも言い出せなかった事があります。そんなとき、私の心の中では、「ボールが滑っただけだ」とか「あんな所にガラスがあるのが悪い」などと、今考えると理屈が通らない「私は悪くない」という言い訳が山のように出てきたものです。
私達の心は、「私が悪い」と感じていると、「私は悪くない」という気持ちが生まれてきて、心のバランスを取ろうとするのですね。そして、私はそんな気持ちを持ったまま、母親にばれて怒られるのではないかと長い間びくびくしていたものです。また、咎められようものなら、自らの潔白を先の理屈にもならない理論で証明しようと思ってもいたのです。
その時、私は正に「責められる存在」であると感じていた訳ですね。
このように潔白を証明しようとする裏には、「私は悪いことをした」とか「私は人に迷惑をかける」といった加害者意識があるからなのです。
つまり、被害者意識を持っている人は、必ず加害者の意識も併せ持っているという事になります。
さて、リクエストの中に出てくる被害者意識の強い方が実際に何か悪い事をしたかどうかは分かりませんが、少なくともその方の心の中には「私は悪い」とか「私は迷惑をかける存在」という気持ちがあった事は間違いが無さそうです。
それは、子供の頃の誰かの一言からそう思い始めたのかも知れませんし、周りの環境からそう感じてしまったのかも知れません。その原因は、人により様々なのです。
このように「私は悪い存在」「私は迷惑な存在」と感じる気持ちを心理学では「罪悪感」と言います。
この罪悪感があると、罪悪感を他の人に感じさせる行動をとってしまい、本当に迷惑な存在になってしまうケースがとても多いのですね。言わば自分のもくろみ通り「悪い存在」になるのです。
リクエストをいただいた方も『私たちが働きづらい職場にしていたのかもと思う』と罪悪感を感じる状態になられていますね。一方、その方は罪悪感を信頼した結果、職場で困った存在になってしまった訳です。
では、そのような人が周りにいた場合、どのように接していけばいいのでしょうか?
一つは、自分が悪いのではないか、と感じさせられたときに、「まてまて、これはその人の罪悪感だ」とその心理的な罠に引っかからない事です。
そして、その人の深刻さに引っ張られないで、力を抜いて接してあげる事です。
更に、その人をそんな状態から救い出したい場合ですが、その人は自分を信頼できていない状態なのですから、あなたがその人に替わって「信頼」のメッセージを送り続けてあげる事です。