まりりんさん、はじめまして。今回担当させていただく三島桃子と申します。どうぞ よろしくお願いいたします。職場で隣の席の女性に悩まされているご様子ですね。こういう状況って本当に困りま すよね。まりりんさんとしては、ご自分でできることはいろいろ試されて、でも変化 がないということで、途方に暮れていると思います。こういう場合、一体どうしたら いいのでしょうか。相手が変わってくれたら一番いいのですが、心理学でよく言われるのが、「人を変え ることはできない、自分が変わることはできる」ということです。そして、自分が変 わった結果、相手の態度が自然に変わることはよくあることなのです。 ですから、焦点を当てるのは結局のところ「自分」になってきます。どう考えても相 手に問題ありなのに、何でこちらが自分自身のことを考えないといけないの?と私な んかも今でも思うことがあります。でも、それが一番効率がよく、また、自分自身が とてもラクになるのは事実です。今問題になっている相手だけでなく、これから先も 「困った人」にふりまわされないようにな自分になるからです。 さて、この女性はさかんに人の悪口を言うわけですね。そして、まりりんさんとして は >人の悪口ばかり聞いていると私の気分がめいってくるので本当に止めてほしいで す。 という気持ちになるわけです。ところが、この人の悪口を聞いていても、まりりんさ んほどには気分が悪くならない人もいるわけです。「この人いつもこんなんやな~」 ぐらいは思うかもしれませんが、だからといって問題になるほど自分の気持ちが嫌な 感じになるわけではない、というわけです。 「悪口を聞いていてもさほど気にならない人」と、まりりんさんのように「気になっ てめいってしまう」人の違いは何なのでしょうか? 「気になってしまう人」に多いのは、感受性が強く、それゆえに相手の感情と自分の 感情の区別がつきにくくなってしまうタイプの方です。自分でも無意識に、すっと心 の波長が相手の心の波長と同調してしまうような感じです。これは一種の才能で、知 らず知らず自分にとって良い作用も起こしているのですが、場合によっては自分を苦 しめることもあります。 相手の心の波長に同調するということについてもう少し説明しますね。例えばまりり んさんの隣の女性が悪口を言う時の心の状態はどんなものでしょうか?楽しいとか嬉 しいとか、ポジティブなものではないですよね。当然ながら、怒りとか苦しいとか、 ネガティブな感情がたくさんあるような心の状態なわけです。その感情と無意識にす るっとつながってしまうとしたら、こちらの気持ちもなんだかネガティブな感じに なってしまうわけです。 また、悪口を言う、自分勝手な理由で怒る、その女性のように他人の手柄を奪うよう な行動をとる、その他のいわゆる「悪い態度」というものは、その下に「助けて」と いう叫びのような気持ちが隠されていると言われます。 「悪い態度」をとる人の気持ちは、全体的にネガティブです。何が理由であれ、ネガ ティブな気持ち―つらい、苦しい、悲しい、寂しい、不安だ、など―を持っていれ ば、自然に出てくるのは「助けて」という気持ちです。でもこの「助けて」を素直に 表現できない場合に「悪い態度」でわかってもらいたい、という感じになるのが人間 の心理のようです。 学校で嫌なことがあった子どもが、家に帰ってすぐお母さんに抱きついて、「聞いて ~、こんな嫌なことがあったんだよ~、つらいよ~」と甘えられたら、悪い態度には なりません。そして自然に助けてもらえます。 でも、甘え下手の子供だったらどうなるでしょう。甘えたいけど甘えられない。でも お母さんにつらい気持ちをわかってほしいし、助けてほしい。お母さんが「元気ない けど何かあった?」ときいてくれても、「別に!」と言ってみたり、「おやつ食べ る?」ときいてくれても無視したりと、悪い態度をとるわけです。でもそこに隠され たメッセージは、「こんな悪い態度になるほどつらいんだから助けてよ!」なんです よね。 まりりんさんの隣の席の女性も、心の中にたくさんネガティブな感情があって、「助 けて!」という気持ちも持っていると思います。本人もわかっていないかもしれませ んが。そして感受性の強い人は、この心の底に隠された「助けて」という部分も無意 識に察知します。 察知すれば助けてあげたくなるのが人情です(無意識ですが)。すべて無意識なんで すが、相手のネガティブな感情をいっしょに感じ、かつ助けてあげたいけど、どうし ようもできないと感じると、人間どよ~んとした気持ちになるものです。 自分でわかる意識としては、このどよ~んとした感覚の中で、「この人のそばから離 れたい、これ以上がまんできない」というような気持ちになります。 一方で、この女性のような人は、目の前にいる人が自分のネガティブな感情に同調し てくれる人だということに、もちろん無意識で、ですが、気付きます。自分の「助け て」という無意識の声を聞いてくれる人がいるということは、やはり人間にとって嬉 しい事です。聞いてくれるならいくらでも「助けて」を言いたいぐらいつらさや苦し さを抱えているので、いくらでも言います。ただし、「悪い態度」を使って、です。 おそらく、まりりんさんとその女性の間には、このような無意識のやりとりがあると 思います。「はあ~?」という感じかもしれませんが、人と人はみんな、実はこのよ うな「無意識の会話」をしているものです。 まりりんさんが嫌味を言うことは、相手からすると、「自分のネガティブな叫びに反 応してくれた」というような感覚を呼び起こしているかもしれません。そうすると、 むしろ嬉しいんです。かまってくれているわけですから。 さて、そうなると、現実的にはどんなことができるでしょうか? まず、ご自分がそういう感受性の強いタイプなのかも知れない、ということを心の隅 においておいてください。感受性の強い人は、このような困った人が相手でなくて も、対人関係の中でエネルギーを消耗しがちです。ですから、日常から睡眠をちゃん ととることや、食事その他、自分自身をケアしてあげる、ということに気持ちを向 け、スケジュールも詰め込め過ぎないようにして余裕を作るようにすると、ずいぶん コンディションが良くなります。 また、とにかくこの女性のことは本当の意味で「相手にしない」ようにできるといい ですね。彼女が悪口を言うのを聞いて気がめいるとしたら、やはり無意識には相手に しているわけです。 彼女の気持ちに同調してあげる必要はない、ということを自分に言い聞かせてくださ い。いくら同調してあげても、実は彼女にとって本当の救いにはなりません。まりり んさんが彼女をかまってあげる(いっしょに嫌な気持ちを共有してあげたり、反応し て嫌味を言ってあげたりする)必要はまったくありません。 このような人と目を合わせたくないのは当たり前ですから、基本目を合わす必要もあ りません。仕事の話をする時も、適当に目を合わせずに話してもかまわないと思いま すよ。あくまでさりげなく、それなりに他の人にするのと同じように親切にしてあげ つつ、目は合わせない、というやり方は、相手とぶつかることなく、相手に対してバ リアを張れます。 「本当に相手にしない」ことができて、バリアを張れたら、この女性のまりりんさん への態度は何か変わってくる可能性が高いと思います。仮に彼女が変わらなくても、 まりりんさんの気持ちの負担はかなり軽くなるはずです。 それから、もしかしたらなんですが、「本当の意味で相手にしない」ことで、この女 性を見捨てているような罪悪感を感じるかもしれません。でも、彼女にとっての救い はまりりんさんが知らないところにちゃんとありますから、心配しないでください。 安心してほったらかしにしてあげてください(ちょっと変な言い方ですが)。その方 が彼女にとってもいいのですから(ここを説明すると長くなるので、今回は省かせて いただきますね)。 最後に、少し私が気になっていることを書かせていただきますね。まりりんさんのよ うに、困った人に悩まされるという方は、感受性が強いことと同時に、過去に家族な どの中に「悪い態度」(いつも不機嫌だったり、お酒が入ると荒れる、家族が困るよ うなことをする)をとる人がいて、そのことで心を痛めてきているという経験をされ ている方が少なからずいます。 もしまりりんさんもそのような経験があるようでしたら、その部分をカウンセリング などで見ていき、心の傷になっている部分をほぐすことで、今回相談してくださった ような問題がより早く解消することがあります。 まりりんさんのことを応援していますね。ご相談ありがとうございました。 三島桃子 |