仕事中毒とも言われますが、ずーっと仕事モードでなかなか切れない状態のことをハードワークと呼びます。
処理しきれない量を抱えてハードワークになってしまうこともあるのですが、その一方で、仕事は大した量ではないのだけど、ずーっと頭の中を仕事が支配しているとしたら、それは精神的には立派なハードワークと考えていいと思うのです。
今回は4回シリーズを通じ、ハードワークに嵌まる心理を考えたいと思います。
まずは、ハードワークがもたらす問題についてご紹介していきます。神経が仕事に奪われる分、それを緩めようとするマインドが働きます。それがアルコールやセックスなどの刺激の強いものに依存する結果を招いたり、または病気になることにより神経を緩めようとする心理が生まれるのです。
そうしたハードワークに嵌まるには、背景として大きく無価値感によるものと、罪悪感が影響しているものと2種類あると考えられ、それ故、わかっていてもなかなかハードワークが手放せないのです。では、それを理解した上で、そのハードワークと手放していくにはどうしたらいいのでしょう?
そんな4回シリーズをお届けしたいと思います。
カウンセリングをしていますと、「毎日終電まで働いて、時にはタクシーで帰宅。土日も無く、ひたすら働き続けている」という方のお話を伺うことがあります。
ご本人・・・は、そのようなスケジュールですから、滅多にいらっしゃらなくて、その奥様、恋人から話を伺うことの方が多いんですね。
現在のような社会情勢では、仕事がある方は猛烈に忙しく、上記のようなスタイルとまでは行かなくても、毎晩遅くまで働き、休みの日はほとんど寝ているだけ、という方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
また、経営者や、フリーで仕事をされていたり、在宅でも、カフェでも仕事ができるような業態の方の場合は、“拘束時間”はあまり無くとも、事実上、年中無休で仕事モードの方もいらっしゃるかもしれませんね。
また、勤務時間はそれほど長くなくても、その短時間に極度のプレッシャーを感じる職業の方もいらっしゃいますよね。
そうすると、その仕事に割くエネルギーって膨大なものになるので、やはりハードワークと称して問題ないと思うのです。
そういう方のお話を直接・間接的に伺っていると、「根本さんて本当にお忙しいですよね」とたくさんの方に言って頂くことも、ちょっと恥ずかしいような気がします。
そんなに働いてないよな・・・と思いながら、家人や友人にそれとなく「僕ってハードワーカー?」って聞いてみたら、揃いも揃って「何を今更そんなこと聞くわけ?」と白い目で見られたので、「ああ、そうなんだ」と改めて納得した次第です。
「ハードワーカーってそれをしてるって実感て無い人も多いんですよね」とよく解説していましたが、自分のことでもあったわけですね(汗)
さて、ハードワーカーと言うと、一般的にはそうした仕事中毒(ワーカホリック)の人間を指しますよね。でも、心理的に見るとハードワーカー的な精神状態の方て実は意外と多いことに気付かされます。
例えば、カウンセリングでこういうお話をさせて頂くことがあります。
「奥さんは今、職業的には専業主婦ですけれど、いつもご主人のこと、考えていらっしゃいますよね?今、何をしているんだろう?また浮気相手と会っているんじゃないか?どうしたらもう一度私の方を向いてくれているか?とかね。
しかも、ご主人の一挙手一投足が気になって、その言動に気持ちが上がったり、下がったりする状態ですよね。だから、ご主人も確かにハードワーカーですが、奥さんだって、同じようにハードワークをされてると言えるんですよ。」
つまり、私は広義のハードワークとして、仕事のみならず、継続的、あるいは、断続的に精神的な負担を強いている状態のことを呼んでいるのです。
それが「仕事」だろうが、「問題・悩み」だろうが、同じような心身の状態に陥るからであり、また、その背景にあるものも似たようなところがあるからなのです。
ですから、今回はハードワークについて紹介していきますが、仕事のみならず、精神状態のひとつの比喩として見つめてみるとより楽しんでいただけるのでは、と思っています。
●ハードワークのもたらす問題
また、仕事ばかりしていてずっと神経が張り詰めていると、その神経が緩むことがないので病気にかかりやすくなります。
でも、急に病気になるわけではなく、体が重たかったり、疲れが取れにくかったり、気力が湧かなくなったりと感情的な変化が出てくるものなんですが、その義務感や責任感、そして、ハードワークがもたらす“麻痺”によって、そうした心の警告に気付かなくなるのです。
精神的な病気はもちろんですが、ずっとお腹を下していたり、一度引いた風邪がずっと治らなかったり、胃腸に問題が出てくる場合が多いようです。また、女性の場合は、婦人科系に影響が出ることも少なくありません。
医学的にはそれほど深刻ではないために「心療内科を受診されては?」という提案をされた、という方にもお会いします。
それは仕事そのものが問題というよりも、その仕事から生まれる責任感、義務感、緊張などが、神経を張り詰めさせ、そうした状況を招いてしまうのです。
それがゆっくりリセットできる時間を定期的に持っていればいいのですが、張り詰めた状態が続くと、体が強制ストップをかけることがあります。
その一つが先ほどの体調に関するものなので、“休ませるために”体が症状を訴えてくるわけです。
例えば、胃腸が弱ってくると食欲がなくなったり、元気がなくなったりしますよね。そうすることで、それまで無理に搾り出していたエネルギーを止め、むしろ、休ませようとするわけです。
でも、ハードワークがもたらす問題はそうした体調に関するものだけではありません。
例えば、アルコールやギャンブル、株などへの投資、買い物など、刺激的なものを持ち込むことによって神経を緩めようとする作用が働くこともあります。
仕事がもたらす強い刺激を、さらなる刺激で緩和させようと言うわけです。
いわば、毒を持って毒を制す、という感じでしょうか。
お酒を呑んで開放的な気分となり、競馬にエキサイトし、パチンコで奮闘し、そうして神経を緊張させたり、緩めたりしながら、ストレスを解放しようとするわけです。
そして、その神経を緩めるためによく使われるのが“異性問題”なんですね。要は“浮気”です。
特にセックスはそもそもが神経を緩め、解放するエネルギーに満ちています。特に男性にとっては、普段自立的に“男性性”を使っている分だけ、それを緩めてくれる“女性性”を取り入れることのできるセックスはとても魅力的なものに感じられるのです。
また、女性にとってもセックスは自分が女性であることを思い出させ、そして、女性性を解放できる絶好のチャンスです。
仕事に疲れた夜に「今日はセックスがしたいなあ」と思う男性が多いのは、それも理由の一つと言っていいでしょう。
本来のエネルギーバランスから言えば、最もセックスがしたくなるのは、本来は“朝”のはずなんですけれど。
そういうわけで、カウンセリングでも“浮気”や“不倫”の問題と、“ハードワーク”の問題がよく関わってくるのかもしれませんね。
>>>『ハードワークに嵌まる心理~無価値感がもたらすハードワーク~』につづく