引きこもりの傾向と対策をカウンセリングの現場からお届けします。
引きこもりと一言でいっても千差万別、色んなスタイルがあります。
もっとも一般的なものは、自分の部屋や家に閉じこもって外に出ないことかもしれませんが、心理的に見れば、きちんと仕事に行ったり、友達と話をしたりはするけれど、自分の心(感情)を表現しないことも引きこもりの一つと捉えます。
言わば自分の心に閉じこもってしまっている状態ですね。
自分の意見や思いを口にしなかったり、周りに合わせて顔は笑ってるけど目は笑っていない、というのもこの心理的引きこもりに当たります。
家に引きこもる状態がいきなりやってくることは滅多になく、多くはまずは心の部屋に閉じこもり、それでも駄目な場合に物理的な態度として現れるのが一般的です。ですから、実は多くの引きこもりの問題は事前にキャッチしてしかるべき対応を取ることで解消されていくものでもあります。
自分自身を含めた、周りの人との繋がりがカギになりますね。
そう考えるとほんとに多くの人が引きこもり状態にある、といっても過言ではないのかもしれませんし、逆にあなたのすぐ近くにいる家族、友達、恋人だって今まさに引きこもっているところかもしれません。
もし、そうだとしたら、態度に表れる前に気付いてあげたいものです。
●なぜ、引きこもるのか?
皆さんが引きこもりたいときがあったとしたら、どんなときでしょうか?
辛いことがあったとき、むしゃくしゃしているとき、何かを我慢しなきゃいけないとき、何かを隠したいとき、強い不安や恐れがあるときなどなどたくさんあるかもしれません。
それらを総括すると、引きこもってしまう目的は多く「何かを隠さなければ」という潜在的な観念が作り出すものようです。
もちろん、意識的にそう思う時もあるけれど、多くは無意識的に反射的に引きこもってしまうので、当人はなかなか気付けません。
例えば「怒ってはいけない」という観念があったとすると、その怒りを隠そうとします。でも、怒りはとてもパワフルな感情ですので、押さえようとすればするほどイライラが募り、ますます隠さなければならない気持ちが膨らんでいきます。
そうするとまずは笑えなくなり、泣けなくなり、やがては、人に自分を見せることも出来なくなってしまいます。潜在的には自分自身がまるで怒りの塊になってしまったように感じるわけで、自分を見せることと怒ることが一致してしまうのです。
実はこの「怒りを隠す」というのが引きこもりで一番多い原因(目的)のようです。
多くの人は「怒り」をあまりいい目で見ませんね。
だから、多くの人は「怒るなんて悪いことだ。我慢しなければ」と思っています。
特に「良い人」「いい子」として育ってきた人の場合、怒りを表現することが最大のタブーの一つになってしまうことが少なくありません。
怒っている自分を認められず、また、許せないから世間から怒りを隠すために、心や体を隠してしまうわけです。
また、罪悪感が強いとき、社会に出れば自分は罰せられる、と感じたり、自分は罰せられなければならない、と思うものです。
そうすると引きこもること、イコール、牢獄に自分を閉じ込めるイメージとなり、それ自体が自分を罰する行為になります。
一方では、自分のセクシャリティを隠すケースもあります。
思春期に入ると男性は男性らしく、女性は女性らしい体に変わっていきます。
そうすると体の変化が激しい分、潜在的に常に自分の体を意識するようになります。
それが「恥ずかしさ」や「自己嫌悪」を作り出す要因にもなりますが、その変化を受け入れられなかったり、社会の目線が怖くなったりすると、周りの目に触れさせないために自分を隠そうとするわけです。
特に10代の後半から20代前半にかけて見受けられるパターンですね。
それから、劣等感やコンプレックスから引きこもりに入る場合もあります。
どちらも、劣っている自分の要素やコンプレックスに感じている要素を周りから隠したい欲求が作り出すものと考えていいでしょう。
こんな風に一言に「引きこもり」と言っても、その目的・原因はさまざまなものが考えられますし、個人個人感じ方が異なりますから一概に何が問題か?とは言えません。
実際にカウンセリングの現場でも、引きこもりを扱う場合には「何を、どんな風に感じて、隠してしまっているんだろう?」とすべて個別対応になるんです。
ですから、あなたの周りで引きこもっている人がいても、原因を特定しようとしたり、ましてや決め付けたりするのはとっても危険な行為になります。
特に家族の中にそういう方がいらっしゃる場合には、自分にも同じパターンがあるけれど、感じ方のわずかな違いが引きこもりを作り出すケースもありますので、本当のところを見極めにくいところもあります。
●引きこもりのメッセージ性
引きこもりを見ていく上で、もう一つ欠かせない視点がその「目的」に関するもの。
例えば、怒りを表に出せない人はそれを隠すために引きこもるわけですが、同時に、引きこもることで「あたしは怒っているのよ!」というメッセージを周りの人や特定の誰かに伝えようとしています。
実際、引きこもっている誰かを無理やり連れ出そうとしたら、大抵は怒り出しますね。
しかも、こちらの想像以上に暴れだしたりすることだってあるでしょう。
そして、結果的に今まで以上に強行に篭城するようになったりもします。
あなたが引きこもりの状態にあるのならば、誰に何を伝えたいと思っているのかを考えて見てください。
もちろん、考える余裕があれば、でいいですよ。
今の自分を誰に気付いて欲しいのか?誰に助けて欲しいのか?そして、あなたが言えない言葉は一体なんだろう?と。
それがあなたがそこを抜けるカギになります。
逆にあなたの近くにそんな状態の人がいるのであれば、彼(彼女)があなたに何を伝えたいのか?を考えてみてください。
愛して欲しい、助けて欲しい、解って欲しい、受け入れて欲しい、話を聞いて欲しい、叱って欲しい、かまって欲しい、など。
きっとあなたがその人に対して見落としている何かを引きこもりという態度を通じて教えてくれているはずです。
あなたのその人への態度や考え方を謙虚に振り返り、改めてみることもお互いの成長のために必要なことです。
その人を攻撃するよりも、その人の側に居てあげることを選んでみてください。
●引きこもりを癒す
あなたが今まさに引きこもりの最中であっても、また、あなたの大切な人がこの状態にあったとしても、一番大切なことは「根気良く、忍耐強く」です。
忍耐強く何をするかというと、コミュニケーションなんです。(やっぱり・・・だけど)
あなたが引きこもっているのであれば、伝えたい気持ち、解って欲しい気持ち、気付いて欲しい気持ちがきっとあるはず。
それを伝えられるような自分になろう、と思ってみてください。
そのためには「怒ってはいけない」「迷惑をかけてはいけない」などの観念に気付いて、それを手放していく必要があります。
でも、あなたにとって、それは一人でやることではなく、誰かの援助を受けながらやるものでもあります。
頼れる誰か、信頼できる、安心できる誰かを探すところから始めてみるのがいいかもしれません。
また、あなたの周りに引きこもっている人がいるのであれば、まずはその人と向き合ってみましょう。
それはちょうどその人が掴まえられるように手を差し出すようなものです。
いつ手を掴んでくれるのか?は解りません。
明日かもしれないし、数年後かもしれません。
だからこそ、ここでは強い愛情と忍耐が求められますね。
でも、その人はそんなあなたの強い気持ちが一番欲しいのかもしれません。
だから、「嫌だなあ」とか「自分で立ち上がれよ」のような自立的な思いで手を差し出したとしても、そこに攻撃性がある分、その人は決して手を取ろうとはしないでしょう。
そして、そのために辛抱強くその人の声に耳を傾けてあげる必要があります。
話をさせようとするのではなく、話したくなるのをじっと待つことが大切な場合もあります。
もちろん、優しい言葉だけではなく、時には叱ってあげることも愛情ですね。
そのどちらを使うのか、あるいは、自分で立ち上がれると見込んでただ見守っているのか、その明快な答えはありません。
すべてケースバイケースです。
だからこそ、あなたのその人への愛情がカギを握ります。。
使い古された言葉かもしれませんが、愛があれば人を傷つけることはありません。
叱っても、優しくしても、愛から出た態度であれば、やがてはその人の心に届きます。
そうして、あなたの本当の愛を与えることが出来たとき、自然とその人は引きこもる必要はなくなります。
なぜなら、そのときあなたはその人にとってのかけがえのない味方であり、信頼できる人になっているからです。
※カウンセリングの現場より※
引きこもりに関するご相談はご家族やその恋人からよく頂きます。(もちろん、本人からのものが一番多いのですが)
その中には「その人にカウンセリングを受けさせたい」というご依頼も多く含まれます。
もちろん、カウンセリングを使うことで引きこもりの状態から抜け出すことは可能なのですが、そのかぎを握るのは実はその依頼者自身であることは覚えておかれると良いかと思います。
その「カウンセリングを受けさせたい」気持ちの裏に「(色んな事情で)自分では埒があかないからカウンセラーに任せてしまおう」という気持ちがあると、その分時間がかかってしまうようです。
その理由を簡単に言えば、本文中で触れた「愛」の部分に疑問符が付くからです。
逆に「引きこもりを抜けさせるために、私も頑張らなきゃいけないと思うので力を貸して欲しい」という場合には、依頼者自身が考えているよりもずっと早くこの問題をクリアにすることができるようです。
引きこもりの問題をその人一人のものと捉えるのではなく、家族全員や自分自身のものとして捉えてみることで、幸せをぐいっと手元に引き寄せることができます。
しかし、自分や周りの人があまりに深刻になり過ぎると、逆にそれが罪悪感となって引きこもりを一層強化させてしまうこも少なくありません。
このバランスはとても難しく、また、存在が近ければ近いほど見えない部分もありますので、一度僕たちに声をお掛けくだされば、心の専門家として、また第3者の立場から色々なサポートをさせていただけると思っています。
引きこもりを脱して社会や学校に復帰したとき、あなたや家族が情熱を注いだ分だけ爆発的な喜びと一体感を感じることができます。諦めないでその時々の精一杯の愛情で接してあげてくださ