理不尽なことを言われたり、嫌な目にあったりしても、その場で怒りを感じられないために適切な対応ができず、後になって「ああ言えばよかった、こうすればよかった」と、くよくよ考えてしまうことがあります。
嫌な思いをしたこともストレスですし、対応できなかった自分を責めてしまったり、くよくよと考えてしまうことも大きなストレスになるものです。こういう場合、どうしたらいいのでしょう?
その場で怒りを感じられないとしたら、「怒りを抑圧している」ということが考えられます。そうなる原因には日本という社会の特性があり、加えて個人的な経験がベースになっている場合もあります。
その場で怒りを感じられるようになると、自然に良い対応ができるようになります。自分の怒りを抑圧せずに感じられるようになるにはどんなやり方があるのかお伝えします。
◎リクエストを頂きました◎
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私は、なかなか瞬時に怒りが出てきません。何か理不尽なことを言われると、まずびっくりして固まってしまって、その場ではうまく対処できません。あとで、あの時こう言えばよかった、ああ言えばよかったと、後悔して怒りがこみ上げてくるのが常です。もっと瞬時に、的確な対応ができるようになるにはどうしたらよいでしょうか。
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リクエストをいただきありがとうございます。
理不尽なことを言われた時に瞬時に対処できず、後からああ言えばよかった、と思うのは嫌なものですよね。理不尽なことを言った相手への怒り、その場で対応できなかった自分を責める気持ち、いまさら言い返すこともできない悔しさなどが重なって、とても重い消化不良的な気持ちになると思います。
もし瞬時に対処できれば、相手への怒りもその場である程度消化できますし、胸に残ってしまうものはずいぶん少なくてすみそうです。
では、瞬時に的確に対応するためにはどうしたらいいのでしょうか?
まずは、相手の言動に対して自分が怒りを感じていることに「その場で」気付く、ということが大切になりそうです。その瞬間に自分の気持ちに気付かないことには、対応もなかなかできませんよね。
その場で怒りを感じることができない、という状態は、実は、「本当は怒りを感じているけど、怒りを抑えて感じないようにしている」のかもしれません。
「怒りの感情」というのは、私たち日本人が抑圧してしまいやすい感情のひとつです。日本社会では、対人関係の中で相手に対して怒りを見せることは、どちらかというと良くないこと、といった捉え方をしています。私たちは子どもの頃からそういう空気の中で成長していくので、「怒ってはいけない」という感覚を持ってしまいがちです。
さらに、例えば家族の中によく怒る人がいて、子どもの頃から怖い思いをしていたりすると、「怒りなんてろくなもんじゃない、私は絶対あんなふうにはならないぞ」と強く思ってしまうことがあります。そうするとより一層「怒りを感じにくい」コンディションになってしまいます。
この様ないろいろな事情の中で、自分が怒りの感情を感じてもその感情を抑えてしまうクセがついてしまうと、本当は怒りを感じていても、その場ですぐにはなかなか感じられなくなります。
どうしたら「怒りの感情」をその場で感じられるようになるのでしょうか。
まず第一には、「怒りの感情を感じる許可」を自分に与えてあげることが大切かと思います。これは、「怒って相手にぶつかってもいい」ということではなく、「自分の心の中で怒りを感じる」ということを自分に許すということです。「怒り」という感情は、人間誰もが持っているもので、けして悪い感情ではありません。
自分自身に対して、「怒りを感じてもいいんだよ」と毎日のように言ってあげていると、自然に怒りの感情を感じやすくなります。
また、二つ目の方法としては、「感情全体を感じやすくしていく」ということも重要な場合があります。
「怒り」の他にも、私たちは様々な感情を持っています。嬉しい、楽しい、悲しい、寂しい、などなど、ポジティブな感情もネガティブな感情もいろいろあるわけです。そして、こういった感情は実はひとかたまりのエネルギーのようなもので、例えば「怒り」を抑えようとすると、感情のエネルギー全体を抑圧することになり、「楽しさ」や「嬉しさ」など他の感情も感じにくくなると言われています。
逆に言えば、「楽しい」とか「嬉しい」などという感情を感じやすくすることで、「怒り」の感情も感じやすくなります。ですから、自分が楽しいと思うことを積極的にやる、ちょっと贅沢かなとあきらめていたことをやってみる、などということで感情全体が動きやすくなり、嫌なことがあった時にその場で怒りを感じやすくなります。
それから、先ほど例にあげたように、家族関係の中で「怒り」という感情に対してマイナスイメージを強く持ってしまっている場合には、改めて過去の出来事や自分の気持ちを振り返ることで今の自分のコンディションをよくしていくことができます。ただし、場合によってはとてもつらい気持ちを思い出し、大きな抵抗感を感じることもあります。その場合はカウンセラーの助けを借りる方が安全かもしれません。
その場で怒りを感じることができるようになったら、あとはあまり深く考えなくても意外に的確な行動がとれるものです。といっても、これまで怒りを感じないクセがついてしまっていたとしたら、怒りの感情を感じてもすぐに「ベストな対応」はできないかもしれません。
それでも、「怒りを素直に感じる」「怒りを感じている自分をいたわってあげる(嫌な思いをしてしまったね、つらかったね、というような優しい感覚で自分を見てあげる)」ということを大切にすると、怒りを抑圧している状態よりはるかにストレスが小さくなりますし、心に余裕ができるので、ふと気付いてみるといい形の対応ができるようになっていたりします。
怒りを抑圧することなく素直に感じることは、よりよい対人関係のためにとても大切なことなんですね。