投影と許し(3)~投影を取り戻す~

投影を使った人間関係の改善のアプローチの仕方のすばらしいところは、その人間関係に影響を与えている投影の元を見ていくことで、その元を投影しているであろう人達全員に対して有効という点であります。例えば、父親との葛藤が人間関係にマイナスの影響を与えていた場合は父親との葛藤をクリアーすることで父親を投影するであろう人達全員の関係にプラスの影響がでてきます。

投影を取り戻す

前号の続きとなります。前号では父親との葛藤を上司に投影していると、父親に対してでていた心理的反応が上司に対して出やすくなると書きました。
父親に対して持っている反発心や、否定的な感情を上司にも持ちやすくなるわけです。

投影は無意識的にしてしまうものなので、投影をしているとは本人は気付きにくい物でなのですが、上司に父親を投影していたということを気づくことができると、物事の捉え方を変えることができます。

例えば、『上司は私のことを快く思っていない!』と思っていたことを、『父親が自分のことを快く思っていないのではないか?と思っているを上司に投影していたので、そう感じがちなのであって上司の本音はそうではないのかもしれない?』と意識を広げて考えることができます。

実際に『相手は○○と思っているはずだ』と感じたのは自分の投影であって相手は全くそんなことは思っていないという話しは多々あるのです。

このように今まで見ていたものは投影をしていたんだなと気づくことを“投影を取り戻す”という言い方をします。

この上司に感じていることは父親との葛藤を投影しているということから起因してるわけですから、父親との葛藤をクリアーにすることができたら、上司に対して近づきにくかったり、反発心がよく出るという心理的な反応が消えていきます。

この投影を使ったアプローチの仕方のすばらしいところは、上司との関係だけではなく、父親を投影するであろう人達全員に対して有効という点なんです。

どういうことかと言いますと、もし上司以外にも父親を投影していた人がいたとしたらその人との関係も良くなりますし、これから出会うであろう父親を投影する何十人、何百人という人の関係が円滑になっていくんですね。投影の元である父親という一人の人への葛藤をクリアーにしていくことで何十人、何百人という人の関係に良い影響がでてくるんです。

上司に父親への葛藤を投影した場合の例え話をしてきましたが、この投影を活用した問題解決の手法は上司との関係だけではなく、恋人関係、友達関係、職場での人間関係などありとあらゆる関係で同じように活用できます。

例えば昔の恋の傷が完全に癒えていない場合は、現在の恋に昔の恋を無意識的に投影してしまいます。例えば浮気をされて振られた経験などがあるとします。すると男性に対して『男なんていつか浮気をする生き物なのよ』的な疑いの目で見がちになってしまうことがあります。
男性全般に対して自分を裏切った元彼を投影して見てしまうわけです。

しかし投影を取り戻すと『私は前の恋の傷が癒えてないので疑いの目で男性を見てしまうのかもしれないわ。この人は誠実な人かもしれないのにどうせ浮気をするというレッテルを貼って見ていたわ』と意識を広げて考えることができます。
また男性全般に自分を裏切った元彼を投影しなくてもよくなるように、心の内にある昔の恋愛の傷に向かい合って癒しに取り組んでいこうと思うこともできます。

投影を取り戻し、投影の元となる問題を解決することで、投影をしていく何十人、何百人という人の関係が円滑になっていくとしたらとても素晴らしいことではないでしょうか?

 

>>>『投影と許し(4)~許しという手法で痛みのリピート再生から解放されよう~』へ続く

この記事を書いたカウンセラー

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若年層から熟年層まで、幅広い層に支持されている、人気カウンセラー。 家族関係、恋愛、結婚、離婚、職場関係の問題などの対人関係の分野に高い支持を得る。 東京・名古屋・大阪の各地でカウンセリングや心理学ワークショップを開催。また、カウンセラー育成のトレーナーもしている。