過保護・過干渉が作り出す癒着を手放していく具体的なアプローチを紹介します。
一つ目は逃げずに向き合い、感謝するということ。感謝ができるには適切な距離がないとできないんです。
二つ目はパートナーシップを大切にする、ということ。お母さんよりもパートナーを優先させることでやはり適切な距離が作れるようになります。
こうしたプロセスをじっくり時間をかけながら進めることで、新しい自分に生まれ変わることができるのです。
●過保護・過干渉を手放すための具体的なアプローチ
そうした関係性の中では、お母さんと向き合うこととは別に、お父さんやきょうだいの力を借りること、そして、何よりもパートナーシップに力を入れることで平和的な解決を図っていきます。
嫌って離れても罪悪感しか残りません。
恨み辛みはあるけれど、「あれだけのことをしてくれたお母さんを捨ててしまった」という罪悪感は、後々自分が幸せを感じ始めたときに強い戒めとして心を痛めます。
だから、まずは一旦、お母さんに近付くんです。向き合うんです。
すごーく、嫌な感じが出てきますが、でも、自由になるための一つ目のチャレンジと思ってみてください。
そのとき、有効なのが「感謝」ということ。
実は癒着があるところでは、「やってもらって当たり前、やってもらえないことは不満」という状態になりますから、感謝ができないんです。
逆言えば感謝ができるということ、ある程度の心理的距離がないとできないんですね。
皆さんも、身近な人にしてもらう親切よりも、通りすがりの人の親切の方が心に染みた経験ってありませんか?
始めは気持ちが伴わなくても構いませんから、感謝の気持ちをひたすら伝え続けていくことが大切です。
そんなことしたら、余計に取り込まれてしまいませんか?という疑問が出てくるかもしれませんが、大丈夫。
始めはそんな素振りを見せますが、感謝し続けていくと、お母さんの中にある「一人ぼっちになってしまう不安、寂しさ」が癒されていくんですね。
つまり、離れていても、ちゃんと私のことを思い、感謝してくれる存在がある、という思いがお母さんの中に芽生えていくんです。
実はこの「一人になってしまう不安、寂しさ」という感覚が癒着の中の核になる感情であり、ここが癒されていくと、関係性は驚くほど前に進み始めます。
以前、嫌だけれど頑張ってお母さんに感謝を続けた女性が、あるとき「あんたも気付けば大人になったんだね。なんだか、お母さんが色々言い過ぎちゃったみたいでごめんね」といきなり反省され、嬉しいというよりも、「え?お母さんどうしたの?もしかしてどこか悪いの?」とびっくりしてしまったことがありました。
そして、もう一つはパートナーシップ。
今パートナーがいらっしゃる方は、その人との関係性にもっと意識を向け、さらにいい関係にしていくことで、大きな学びを得る事ができます。
パートナーがいらっしゃらない方は、まずはパートナーと出会うことに注力してもいいでしょう。
過干渉から来る癒着の問題を抱える方は、実はパートナーとの間にもその関係性を再現してしまいます。
自分が彼の行動を過剰に監視しようとしたり、自分をもっと支配してもらうことを望んだりするんです。
だから、パートナーとの関係を見つめることは、間接的にお母さんとの癒着関係を解消する力になるんですね。
その一歩目は「お母さん(家)よりも、彼を大切にする。自分の気持ち(ニーズ)よりも、彼を大切にする」という意識。
無意識のうちにお母さんに行きがちな気持ちを整え、彼に向かわせます。
そこでは、より自分が女性として成長することが求められることも少なくありません。
お母さんの支配下では自分は常に“子ども”ですから、大人の女性が持つ雰囲気、セクシャリティがタブーになってしまいます。
だから、いつまで経っても自分が子どものままのような気がしてしまうのです。
こうしてパートナーと向き合ううちに、自然とお母さんと衝突します。
例えば、「彼に服を選んでもらうといいですよ」という宿題を実行すると、必ずお母さんが気に入らない服を彼は選んできたりします。
そこで、彼を優先すれば、当然お母さんと対立してしまうんですね。
でも、それは癒着を切り離すための必要な“痛み”。
彼との幸せに投資することで、より成長することができるんです。
因みに、なかなかうまく行かない彼との関係を一生懸命良くしようとしたある女性は、長年いがみ合い、癒着関係にあったお母さんと、気がつけば親友のように仲良しになり、彼のことを気軽に相談できるまでになったそうです。
こうして、お母さんとの適切な距離を整えていくと、自然と関係性は好転します。
そもそもが愛情込みの関係なわけですから、わだかまりや恨み辛みが解消すれば、お互いの気持ちがよく分かり合える親友のようになれるのです。
そうすると、お母さんの表情は見違えるくらいに穏やかになり、あなたが欲しかった、優しくて頼もしいお母さんが手に入るのです。
それは新しい自分に生まれ変わった、いや、新しい自分が誕生したことと言えないでしょうか。
もちろん、このプロセスを一人で頑張る必要はありません。
むしろ、知らず知らずのうちに取り込まれてしまうことが少なくありませんから、カウンセラーなり信頼できる人をあてにするのが良いのです。
時間がかかるかもしれませんから、気長にお付き合いさせていただく覚悟で向き合わせていただいています。
いつかはほんとうに自然な笑顔が溢れてくるのを知っていますから。
(完)