パートナーシップの落とし穴~うまくいかない競争の罠~

パートナーシップにはたくさんの見えない落とし穴がありますが、今回はその中でもとてもよくお見受けする“競争の罠”と、その原因、そして、解決方法までをレクチャーします。

パートナーシップがうまく行かなくなるとき、無意識にお互いが「競争」しているのかもしれません。

(“無意識”というところがポイント。意識的には全然そんなつもりは無いケースも多いんです。)

お互い自立した大人同士なので“自分の考え”や“やり方”をある程度持っています。
だから、自分の考えを曲げて相手に素直に従うのは、それ相応の理由(大義名分)が必要ですし、自分のやり方を抑えるわけですから「相手に合わせてやってる」くらいの思いがないと釣り合いが取れないように感じてしまうんですね。

それに、相手に合わせてる自分は心のどこかで“自分らしくない”と感じますし、まるで“服従している”ような屈辱感を味わう事もあります。
それはビジネスでお互いの顔を立てようとして玉虫色に決着させるかのように後味が悪いものです。

お互い競争があると高いプライドが邪魔して素直になれず、意地を張り合ったり、相手をけなしたりしてしまいます。そうすると、

夫:「このところ変な事件が多いよなあ?知ってるか?この大阪の○○事件」
(妻は多分ニュースなんて興味がないから知らないだろうな。ふふふ)

妻:「(まずいっ。また馬鹿にされる!)あ、もちろん、し、知ってるわよ。でも、そんなことより、あなた、この前の飲み会で女の子達から大モテだったんだって?」
(あたしだって会社の後輩から情報が入ってくるんだからね。好き勝手できないわよ!)

夫:「(うっ、なんでそのこと知ってるんだ?)あ、あほか。そんなん、社交辞令に決まってるだろ?なんだ妬いてるのか?」

妻:「そんなわけないでしょ?あたしだって、その気になれば言い寄ってくる男だっているんだからね。あなたもうかうか出来ないわよ」
(しめしめ、これで私のペースに巻き込めたわ)

などと、夫婦のコミュニケーションにとても緊張感が走るようになっていくんですね。
相手の一言一言にトゲを感じたり、いちいち反感を覚えたり、言葉の裏をあれこれ読んだり、自分の発言がまるで記録されてるかのように慎重になったり、非常に相手に気を使うんです。

多くの人がパートナーシップに「ジェットコースのようなスリル」よりも、「柔らかいお布団のような安らぎ」を求めてますから、緊張感ばかりが強くなると、その関係(=夫婦)から目を逸らしたくなって問題を起こすようになります。(それが浮気だったり、離婚だったり、経済的な問題だったりするわけです)

そして、こういうときは「相手が逃げてばかりで自分に向き合ってくれない」状態になるんですね。
つまり、問題を作ることでパートナーシップから目を逸らしたかったわけですから、そこでパートナーから「ちゃんと向き合って欲しい」と言われても、なかなかウンとは言えない状態を作り出してしまいます。

●競争意識の作り出す問題

だから、夫婦喧嘩だけでなく、離婚や別れを始め、浮気やセックスレスなどあらゆる問題が起きる背景には、この“競争意識”が原因になってることも多いんですね。

○浮気

特に浮気の問題では「パートナーに愛想を付かして浮気するケース」もありますが、「パートナーを怖れて防衛的に浮気するケース」もとても多いんです。
例えば「家に帰るととても緊張感溢れる家庭・・・」だとしたら、ご主人はどこかに安息の場所を求めたくなるもの。
もちろん、それがいけないことと分かっていても、人間、追い詰められると弱いですから、逃げてしまうことだってあるんです。
その場合、奥さんがとても傷ついて「なんで浮気なんかするの!」とキレてしまうと逆効果なんですね。
相手から見れば元々怖い人が余計怖くなるだけで、ますます相手はあなたの元へは戻って来にくくなるのです。

○セックスレス~不戦の誓い~

また、逆にお互いうまくやりたいと思っていて、表面的にも仲良くしているカップルでも、内実、競争状態にあることも多いんですね。
「今、夫婦は特に問題はないんだけど、次の目標が見つからないなあ」という状態ならば、ちょっと改めて関係性を見つめた方が良いかも知れません。
また、「夫婦・恋人同士というよりは友人や兄弟みたい」と感じているとしたら、競争状態にあるか、心理的な距離が空きすぎてる場合が多いようです。

こういう状態では、セックスレスになっていたり、セックスがマンネリしていることも多いので、その点からも要チェックですね。
表面的には平和でも、水面下では争いのある、“冷戦”の状態なのかもしれません。
いずれは何らかの大きな問題に発展することもありますから、今のうちに対処したいところです。

○お互いの潜在意識では次のステップに進むことを怖れている

他にも経済的なものや結婚など様々なパートナーシップの問題が、この競争意識によって作られます。
でも、全ての問題に共通しているのは、競争がある状態というのは、勝つか負けるかの弱肉強食の世界ですから、次のステップに進めなくなるんです。

例えば、常に彼氏に負けてるように感じている女の子が「このまま結婚したら、ずっと自分は虐げられるに決まっている」と思い、(無意識ですが)その負けを逆転するために婚約を破棄したり、急に別の男性と付き合いだしたりしてしまうかもしれません。
でも、それはとても自己破壊的な選択なので、あとですごく後悔することになりやすかったりします。
競争原理が働くところでは、特に敗者が自己破壊的な行動に出やすいようです。

トーナメント方式のようにパートナーと勝ち負けで競ってしまえば、負けた方は“退場”しなくちゃいけませんよね。
だから、次のステップにはなかなか進みにくいのです。
(だから「二人の目標が見つからないとき」は黄信号なのです)

●“競争状態”の分かりやすい見分け方。

もし、あなたが「最近、相手の言うことに、つい反発したくなる」と感じているのならば、ほぼ間違いなく“競争状態にある”と言っていいと思います。
また、あなたはそう感じていなくても「相手が私の言うことにいちいちケチを付けてくる」と感じるのならば、やはり二人は競争状態にあると言えるでしょう。

ただ、平和主義者でケンカするのが怖い人だと、その反発を表に出せずに、表面上は「そうだね」と同意したり、繕ったりします。
そうすると鬱憤が溜まるので陰口を叩きたくなるものです。
ですから、表面上はいい奥さんでも、公園の井戸端会議では夫の悪口を言ってしまうものなのです。

ある女性のタレントさんがテレビで、こんなことを言ってました。
「先日、夫婦でゴルフのコースを回りましたの。一日一緒にいましたけど、私が何か言うたびに夫は反発するんですよ。悔しいから何度反発するか数えてみたら、18ホール回る間に77回も私に反対するんですよ!」

結婚して何十年の夫婦が一緒にゴルフを回るというのは仲良しな証拠ではありますが、でも、だいぶ競争もあるようですね。

●競争意識の罪なところ。

競争意識は全てにおいて相手を凌駕することを目指します。
だから、ゴルフのスコアはもちろん、その知識や経験、クラブハウスで食べる料理の値段についても自分が勝っていないと気がすまなくなるんです。
もちろん、そんなことをしていたら、とてもしんどいですよ。
(だから付き合った期間が長くなればなるほど向き合えなくなるのでしょう)

それが分かっていながらやめられないのも競争の罠なんですね。

それはある意味では闘争本能かもしれませんが、パートナーシップは勝負事ではありませんから、どちらかが勝って、どちらかが負ける競争原理では必ずお互いに疲弊します。
プロ野球のペナントレースも試合数が決まっているから頑張れるわけです。
1年365日休みがほとんどなく、いつ優勝が決まるとも分からない無制限勝負だとしたら、ほとんとやる気がなくなってしまうと思いませんか?

それに人間関係に起こる競争は長い目で見ればトントンになることが多いんです。
だから、30年間ずっと勝利していたはずの夫が、退職した途端、妻から離婚を切り出されて、それまでの勝ち分が一気に帳消しになるといったこともありますよね。

因果応報といいますが、買った分負けるし、負けた分どこかで勝つんです。
だから、ずっと勝ち続けるというのはあり得ませんし、少なくとも、それではお互い幸せになれないのです。
つまり、お互いが勝たないと幸せにはなれないんです。

もし、あなたがパートナーに勝利して、相手を「参りました」と平伏させたとして、その相手にずっと魅力を感じ続けることができるでしょうか。
また、逆に相手に負かされて屈辱的な気分を味わったときに、その相手に一生付いていこうと思えるでしょうか。

お互い自立してる分だけ競争は付き物なのですが、その先、相互依存のステージを目指して、お互いの利益になる選択は何だろう?と考えていきたいところですね。

●見逃しやすい勝負のアヤ

さて、この競争の問題。
多くの人が「勝ち」と「負け」を反対に捉えていることも少なくないんですね。

先ほどの「競争意識の作り出す問題」の「浮気」のところで「防衛的に」と紹介したのですが、例えば浮気は必ずしも「勝ち組」がするものではないんですね。
言葉は悪いですが、時に「負け犬の遠吠え」とか「一発逆転を狙った自爆行為」になってしまうことも多いんです。

表面では平和的に振舞ってる夫婦でも、しっかり一方が他方を押さえつけてる(勝ち続けている状態)にあることが少なくないですし、なかなかすぐには分かりません。

でも、簡単に判別するとしたら、「あなたが勝ってる」と感じたら、きっと「負け」の状態にあり、「わたしは完敗だわ」と思ったら「圧勝」と、感じていることと逆のケースが多いですね。

これは言わば『競争の競争』と言えるのですが、「負けてるのは屈辱的だから意識的には勝っているつもりでいる」とか「勝っているのに、それを主張するとケンカになるから、負けている振りをしている」という複雑な心理構造になっているんですね。
(もちろん、これらも意識的なものではなく、無意識に感じるものです)

また、「うちは私が勝ってるのか、相手が勝ってるのか、よく分からないわ」と言う場合には特に注意が必要なんです。
例えば、いじめた方はすぐに忘れますが、いじめられた方は何年経っても忘れないものですよね?
また、お金を貸したほうは覚えていて、借りた方はすぐに忘れてしまうものです。
それと似たようなもので、勝ってる方は、勝っているいる意識がないんです。

だから、ふとご主人が「うちの奥さん、意外に怖いからなあ」と笑いながらボソッと呟いたりしたら要注意。
「あたしが怖いわけないじゃん。むしろ、いつも気を使ってるのは私の方よ」などと思ったら、「ちょっと待てよ・・・」と夫婦関係を改めて見つめなおしてみるといいでしょう。
もしかしたら、気がつかないうちに、あなたがご主人の首根っこをしっかり押さえつけてることに気付けるかもしれません。

●競争から相互依存へ。

そうした競争時代を抜けると良くデッドゾーンという状態になりやすいんですね。
お互いもう勝ち負けに疲弊して諦めてしまう状況です。
「もう、あいつに何を言ってもあかんわ」
「あの人には何一つわかってもらえない」
と感じてしまう状態です。

そこでは自立した状態のまま、勝ち負けもよく分からないまま、固定化されるようなもので、非常に味気ない状況です。
でも、動くに動けない状態でもあり、「このままではあかんのやけど」と思いながらも、月日が過ぎてしまいます。

競争を抜けて、このデッドゾーンに落ちるのではなく、相互依存のステージに向かうとき、一つのポイントがあります。
(デッドゾーンを抜け出す秘訣でもあります)

それは「負けを認めること」あるいは「勝ちを受け入れること」です。

どっちをすれば良いかというと、あなたが「まだやってないなあ」とか「こっちは抵抗を感じるなあ」という方をやってみてください。
もしあなたが「後者の方はすんなりできそうだけど、負けを認めるのは嫌だなあ」と感じたとしたら、きっとあなたに必要なのは負けを認めることかもしれません。

どちらか一方ではなく、両方が必要なケースもあります。
どちらかが他方を圧倒しているケースなんて非常に稀で、ある領域ではご主人の勝ち、別のジャンルでは奥さんの圧勝という場合がほとんどです。

プライドの分厚い仮面を外し、素直に、謙虚になってみましょう。
もちろん、すぐには難しいと思いますから、それを目標にするところから。
力を抜いて、深呼吸をして、「俺の負けです」と伝えるイメージトレーニングから。

例え、今離婚問題が浮上してきてすごく焦る状況の時は、何とかしたいがために、本気ではなく負けを認めてしまうこともあるんです。
それでは多分うまくいきません。
心から負けを認める、勝ちを受け入れることが求められるからです。

深いレベルで見れば、ここで感じる感情は、今回のパートナーシップだけでなく、過去の恋愛や親子関係から繋がってきていることも多いんです。
だから、時には今起きている問題を一旦脇に置いても過去の関係性に意識を向ける方が早く解決することも多いんですね。

また、今セックスができる状態ならば、それをより楽しむことも効果的です。
勝ち負けの世界ではセックスはゲームになれども愛し合う行為にはなりにくいのです。
だから、お互いにもっとセックスを楽しもうとすることは、同時に相手をもっと愛そうとする行為になり、また、繋がりや信頼をもっと深められるものですから、すごく大事なものなんですね。

セックスレスだけれどコミュニケーションはできる、というケースでは、何か共同作業をしてみることをお勧めすることも多いです。
(例えば、旅行とか、一緒に料理を作る、とか)

そんな風に今のお互いの状態に合わせて何かの手を打つことができます。
パートナーシップで問題が起きても諦める必要はありません。
自立度が高ければ高いほど、競争は手放しにくいものですが、できるところから始めていくと、パートナーシップの素晴らしさが実感できるようになるでしょう。
それは果てしない繋がりや高揚感、楽しみや深い安心感となって実感できるのです。

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