家族にはヒーロー、チャーマー、殉教者、傍観者、問題児という5つの役割を担います。
でも、それは家族を助けるための私たちの選択なのです。
家族には大きく5つの役割があると言われます。
そのパターンは学校や職場などの対人関係、はたまた男女関係にも引き継がれ、自分が作る新しい家族でも再現されようとします。
ただ、この役割は苦しみを得るものではなく「家族を助けるため」に各自が無意識的に選択するもので、その役割の影には本来備わっている才能が多数隠れています。
今日はこの5つの役割についてご紹介したいと思います。
1.ヒーロー(ヒロイン、スター)
家族の中でヒーローになって家族を救おうとするパターンです。
優等生になったり、成功者となって、家族の幸せを作り出そうとするわけです。
日のあたる場所を好み、良い意味で注目されることを目的にします。
社会の中では良きリーダーになろうとします。
一般的には父親、長男、長女がこの役割を選ぶことが多いです。
(抱える問題点)
ヒーローになるために過剰に頑張りすぎて燃え尽きてしまったり、失敗から立ち直れない場合もありますし、また、周りの意向を無視して暴走してしまうケースもあります。
また、ヒーローとして輝くために、結果的に周りの家族に無価値感を与えてしまうことがあります。
また、スターを目指すあまり、特別意識に捉われて、自分本来の輝きを失ってしまうこともあります。
(問題を乗り越えるために)
誰かに助けを求めること、誰かをあてにすることが求められています。
自立の問題を抱えることが多いので、自分の素直な気持ちや感情と繋がることが一番の鍵となります。
また、誰かを助けること、サポートすることで、このパターンを変えて行くことができます。
謙虚さを学ぶ必要がありますね。
(才能)
リーダーシップ。
成功。
信頼。
カリスマ。
2.チャーマー(マスコット、ピエロ)
可愛がられることで家族を助けようとするパターンです。
笑いを取ることや楽しませることに意識を向けていきます。
一般的には末子など子ども達がこの役割を負います。
(抱える問題点)
可愛がられる役割だけに“子ども”として生きようとして、自立した大人になることに抵抗を感じることが少なくありません。
そのために自分は何もできないような気がして自信が持てなくなってしまうことがあります。
また、マスコットを“演じている”感覚が強いと、この役割のために愛されているように感じて、本当に愛されているような実感がなくなります。
(問題を乗り越えるために)
チャーマーが大人になると、エンターテイナーとして楽しみや喜びを人に与えられる人物になります。
自分が今していること、人に与えるものに対して価値を見出すことが大切です。
特にこのパターンを持つと、目に見える貢献よりも、精神的な目に見えないものを与えている場合が多いので、それを受け取るようにしましょう。
(才能)
エンターテイナー。
喜びを人に与える人。
カリスマ。
ヴィジョナリー。
3.殉教者(犠牲者)
家族の痛みや苦しみを一身に引き受けて、家族を助けようとするタイプです。
だから、我慢や犠牲ばかりになり、自分自身もその苦しみや痛みに捉われるようになります。
つまり、このタイプが苦しみを背負ってくれているので、他の家族は自分の痛みを感じなくて済むようになります。
一般的には母親や病気勝ちな家族がこの役割を担います。
(抱える問題点)
十字架に貼り付けにされているような苦しみや痛みを多く抱えます。
意識的には積極的に痛みをひきうけている自覚がないために、被害者になって、他者を攻撃したり、ヒステリックになってしまうことがあります。
また、犠牲や我慢、抑圧が多いために、病気を引き起こすこともあります。
(問題を乗り越えるために)
痛みを背負うのではなく、手放す勇気が必要です。
家族を助けるための犠牲はオーバーワークになって自分への攻撃を招きます。
被害者にならないことを受け入れ、人を助けていることや周りの家族からの感謝の気持ちを受け取ることが求められています。
自分自身をきちんと見つめ、できる範囲で貢献していくことが大切ですし、もう一方で、周りを信頼し、援助を求めることもこのパターンを変えていくきっかけになります。
(才能)
ヒーラー。
グレートマザー。
包容力。
受け取ること/与えること
4.傍観者(家なき子)
家族からは少し距離を置き、外側から家族を眺めています。
また、家族の中に居場所を感じないために、意識は家族の外に向かうこともあります。
客観的な視野を持つために問題点や解決方法が良く見えます。
一般的には次男、次女、あるいは父親がこのポジションに入ることが多いようです。
(抱える問題点)
分離感や孤独感などを多く抱えます。
繋がりが切れてしまっているために、引きこもってしまったり、あるいは、厭世的になってひねくれてしまう場合も少なくありません。
マイペースに物事を進められるものの、どこかしら自信がなく、周りには「自分勝手」な印象を与えることも多いようです。
また、客観的な立場のため、問題点をよく見つけるものの、自分では関わりを避けているので解決するまでには至らず、無力感を強く感じることもあります。
(問題を乗り越えるために)
人に近づくこと、与えること、貢献することが求められます。
誰かとの繋がりを得たときに、あなたが与えられるものがとても多いことに気付けるでしょう。
その視野は多くの人に役立つことを学ぶことができます。
(才能)
問題点を見出すこと。
繋がり。
ハブ(人と人とをつなげる役目)
問題解決のプロ。
5.問題児(悪役、スケープゴート)
ヒーローとは逆に、自分が問題を起こすことにより、家族を助けようとします。
つまり、自分が悪役になることで、他の家族の負の面を全て引き受け、家族が自分の問題から目を逸らすことを可能にします。
例えば、親が周りからあまりいい評判でない場合、子どもが非行に走り、親以上に悪い評判を得ることで、親に向いていた悪い評価をかき消そうとすることです。
(抱える問題点)
罪悪感を潜在的に強く持つようになり、日陰から闇へと暗い意識にとらわれるようになります。
人生に絶望したり、やけになったりすることも少なくありません。
また、存在そのものに意味を感じなくなり、死の誘惑に駆られることも多く、そのため、自己破壊的、あるいは暴力的な行動に出ることもあります。
(問題を乗り越えるために)
あなたがそうして家族を助けていることを受け入れることが求められます。
そして、問題児から真のヒーローになることを選ぶ勇気が必要です。
かつて手の付けられなかった不良少年が、大人になって社会に貢献するように、正しく自分のエネルギーを使うことにより、多くのものを人に与えられることを学びます。
(才能)
真実のヒーロー、リーダーシップ。
人を助ける。
パワー、エネルギッシュ、セクシャリティ。
良い意味での自立
●役割の持つ意味
これらは一人が必ず一つの役割を持つわけではありません。
殉教者とチャーマーを“兼務”している場合(例:明るくて元気だけど、家族のために犠牲しているお母さん)もありますし、ある面では殉教者を、また別のシーンでは悪役になる場合もあります。(例:お母さんの前ではいい子になるが、隠れて弟をいじめている兄)
ただ、どれも“家族を救おうとして”持つ役割であることが重要です。
ヒーローやチャーマーは理解しやすいですが、その他のパターンについてはすぐには理解し難いかもしれません。
でも、自分では意識していないことが多いものの、「助けようとする」ポジティブな理由なため、なかなか自分のパターンを変えられないことが多いのです。
でも、そこに気付き、学ぶことで、家族の関係性は元より、職場や恋愛での人間関係にも良い方向に変化を作ることもできます。
例えば、家族の中ではいつもヒーローをしてきた長男が、就職して社会人になった時に、会社の中では落ちこぼれ扱いをされたとします(問題児扱い)。
そうすると、慣れない役割に戸惑いを覚え、「この会社は俺がいるところじゃない」という気持ちを抱くかもしれません。
また、家族の中ではマスコットとして可愛がられていた女の子が、参加しているサークルでヒロイン扱いをされたとしたら、堅苦しく感じたり、あるいは、その扱いに反発して引きこもってしまったりしてしまうことあります。
それから、これらの役割は家族全体のバランスを保つために働きますので、
結婚や就職、留学などで家族が不在になると、その間は別の役割を持つことも
少なくありません。
(例:ヒロイン役のお姉ちゃんが結婚して家を出てしまったので、妹がその役目を負おうとする)
●ある事例
抽象的なお話しなのである事例をご紹介しましょう。
相談者の女性は家族の中で「ヒロイン」の立場でした。
お母さんが「殉教者」、弟さんが「問題児」、お父さんが「傍観者」という関係を持っていました。
彼女にとって結婚して母になることは、お母さんの影響から自分が「ヒロイン」から「殉教者」に変わるように感じられていたので、なかなか結婚に結びつく恋愛ができなかったんですよね。
でも、彼女自身がヒロインに執着するパターンを変え、お母さんと向き合ってみた時に、家族の関係が変わり始めました。
実際には、思い切ってお母さんに近づき、今まであまりしなかった自分の話をし始めたんですね。
そして、時間があるときには一緒に料理を作るなどお母さんをサポートしたんです。
ヒロインの彼女が、犠牲者の母親に手を差し伸べることになり、家族間のバランスが少し崩れ、それぞれの役割にも変化を与えていきました。
そうすると不思議なことに今まで働かなかったり、引きこもっていた弟さんも家族に対して前向きな態度を取るようになり、アルバイトではありますが仕事を見つけてきて働くようになったそうです。
また、家族にあまり関わろうとせず、少し遠くから見ていたお父さんもお母さんに対して心遣いを見せるようになり、二人で一緒に温泉旅行に出かけるまでに関係性が改善したそうです。
この話を伺って、僕は「家族って本当はきちんと繋がっているんだなあ」としみじみと感じたものです。
もちろん、家族の関係だけでなく、結婚を前向きに捉えられるようになったり、仕事に対する迷いも吹っ切れてきて、以前よりも充実した生活を彼女は送っているそうです。
そんな風に家族の役割を誰か一人でも変えてみると、家族全体の関係性も変化を起こすことになります。
また、この家族の役割を自分と関わりのある場所に当てはめてみると、より深く理解できることも出てくるでしょう。
今の自分を知るために、お勧めしたい見方です。
(事例はご本人の許可を頂いて掲載しています)