何かに夢中になれない、いつも中途半端、自信がなかなか持てない・・・
そんなあなたに自分を見つめる冷静な目を感じませんか?
何をしていてもいつも冷静な自分の存在を感じることって無いでしょうか?
何かに夢中になっているときも、冷たい目線を投げかけてる自分の存在。
どこか冷めているような自分の存在。
それはまるでプールで事故が起きないようにちょっと高いところから眺めている、監視員さんによく例えてお話します。
あなたはプールで遊んでるお客さんですね。
じゃ、プールは何か?というと、感情だったりします。
あなたがどれだけ楽しんでいたとしても、監視員さんはプールの外から黙って眺めています。
役立つこともあるんです。
おぼれそうになったときに、ふっと助けてくれるような。
でも、飛び込んで助けてくれる、というよりは、おぼれそうになる寸前にピピーっと笛を鳴らして注意するような感じ。
また、あなたの立ち居振る舞いを細かくチェックする審査員さんでもあります。
誰かと話をするとき、恋人の部屋で、ファッションについて、様々な細かい項目を持って、あなた自身をチェックします。
そして、何かのイベントが終わったとき(例えばデートの帰り、会社の帰りなど)、厳しく反省会が開かれるわけです。
「あの一言、余分だったぞ」
「あの笑い方はちょっといけてないぞ」
「あの人のこと傷つけたんじゃないか」
「私のこと誤解されたんじゃないか」
「あの態度はちょっと大げさだったぞ」などなど。
そして、「次回はしっかりやるように」ときつくお灸をすえられたりして、結果的にそれがプレッシャーとなってしまいます。
こうしたパターンは対人関係や男女関係など人を介在する問題の時によくお聞きする話ですね。
監視員さんや審査員さんが心の中にいると、何に対しても夢中になれない分、自分がいつも中途半端な感じがしたり、ベストを尽くしていないような感覚になったりしてしまうものです。
そして、ため息と一緒に「私ってダメだな・・・」とまた反省会を開くようになるんです。
●監視員さん誕生秘話
そういうパターンを持つ方に「いつ頃から監視員さんはいらっしゃるんでしょうか?」なんて質問をすると、たいてい「物心付いた頃から」とか「気付いた時にはいたかもしれない」という答えを返してくれます。
そうすると物心付く前にはどんなことがあったんでしょうね?
それは大きく二つのパターンに別れるような気がします。
一つ目は“躾”を通して生まれたもの。
もう一つは、自立していくプロセスで生まれたもの。
事例を紹介する方が早いと思いますので、Aさん、Bさんに登場していただくことにしましょう。
Aさんは家族の誰かの視線を監視員さんに置き換えた例、Bさんは自分で監視員さんを作り出した例です。
もちろん、A+Bさんなんて方もいらっしゃいますよね。
Aさんは子どもの頃から、親の躾がとても厳しかったんですね。
大人になれば“躾”の部分もあったけど、親が感情をぶつけてただけ、感情の捌け口にされてきただけ、というところもあったそうなのです。
でも、小さい子どもにとっては「親は絶対的な存在」ですから、その言いつけをいつも守っていました。
でも、親が自分の感情をぶつけてくる分だけ、どうして叱られたのか、どうしてダメなのかがイマイチ理解できなかったところもあるそうです。
だから彼女は、両親に怒られないようにいつも気を遣っていい子になろうと思うようになりました。
叱られそうな行動は一切しないようになったと言ってもいいでしょうね。
怒られる前に、自制することを覚えたわけです。
これが監視員さんへと成長していくんですね。
Bさんの場合は、Aさんとは逆で、共働きの忙しい家庭で育ちました。
寂しい気持ちや甘えられない気持ちも強かったのですが、自分がしっかりしなきゃ、という意識をより強く持つようになります。
つまり、すごく早く自立してしまったわけです。
少々大げさですが、「誰も守ってくれる人はいない」なんて感覚があったし、人と接する時にもどういう風に話をしたらいいのか、どんな態度を取ったらいいのかを教えてもらえないわけですから、確実に人とうまくやっていけるような厳しい基準を持つようになりました。
これが監視員さんなわけですね。
●監視員さんを手放す
何かに夢中になれないまま、不完全燃焼ばかりを繰り返すと、自分が中途半端であるような感覚を持つようになって、なかなか自信を持つことができなくなりますね。
Aさんの場合は、いつも何かに怯えているような感じだし、Bさんは自信を持つに十分な実績があるのに、全然自信が持てなかったりするんです。
それではとてももったいないことをしているので、セラピーを使って監視員さんを手放すようにしていきます。
Aさんの場合には、ご両親の目が監視員さんになっているので、ご両親との癒着(彼女の場合は特にお母さんとの癒着がありました)を手放したり、また、自分の気持ちをきちんと把握する必要がありました。
つまりは、親離れをきちんとしていくことを提案したんですね。
イメージを使ったセラピーをした後、彼女に「一人暮らしをしてはいかが?」という提案をしてみました。
彼女のようにご両親と同居していると、現実の監視員さんも身近にいるわけですから、なかなか手放すことが難しいようです。
実際に行動に移すのは経済的な理由もあって難しいこともあろうかと思いますが、少なくとも心理的にご両親を手放していくことができればいいんですね。
Bさんの場合には、自分で自分を厳しく査定しているわけですが、その背景となるのが、「私は一人」「誰にも頼れない」という自立的な部分でした。
だから、彼女の場合は、人に頼ること、人をアテにすることを提案しながら、実際に、助けを求めていくようなセラピーを提案していきました。
「一人でできることには限界がある、だから、誰かに頼ってみようじゃないか」
という感じですね。
自立している分だけ、誰かに頼るということが屈辱的だったり、恥ずかしかったりするものですが、甘えたかった気持ちやずっと寂しかった気持ちなどを取り戻して解放していくに連れて、Bさん自身の顔が徐々に小さな女の子の表情を見せていく様子が印象的でしたね。
「現実にもこうして誰かに頼れたらいいんですけどね・・・」
なんて後でおっしゃっていましたが、彼女にとってはカウンセリングを使うこと、カウンセラーに頼ること自体が自立を手放し始めた証拠とも言えますから、きっと彼女の希望も適えられるようになるでしょうね。
僕はカウンセリング後の日常でもカウンセリングやセラピーを生かせるような宿題を必ず一つは出すようにしているのですが、Bさんにはちょっと過酷に「あなたの知人、友達、家族、誰でもいいですから5人選んで、その人に『私のいいところってどんなところか教えて』と頼んでみてください」なんて宿題を出してみました。
監視員さんとの付き合いは多く長年にわたりますから、すぐに手放せるほど甘いものではないかもしれません。
でも、手放し始めた分だけ、自由を手に入れ、また、自信を感じるようになって行きます。
Aさん、Bさんともに最近の事例で、結末はこれからのお楽しみでもあるんですが、Aさんは本人の念願も叶って一人暮らしができるようになり「希望が沸いてきました」とのことです。
またBさんは思い切って何人かの友達に頼んでみたそうなのですが、そんなことを聞くものだから、みんなが心配してくれて、その優しさにちょっとウルウルしちゃったこともあったそうです。
ちょっと今回は事例を中心にお話しましたので、皆さん自身のケースに当てはまらない部分もあろうかと思いますが、夢中になれるものを見つけるために、また、自信をつけるためにも、参考になれば幸いです。
※今回ご紹介したAさん、Bさんには予め、掲載の了解を頂いています。