こんにちは、平です。
私どもは、心理カウンセラーを育てるカウンセリングの養成スクールをもっているのですが、そこで、もっとも基本的なこととして教えているのが「すべてのことは、コミュニケーションである」ということです。
カウンセリングの基本は“聞く”ということです。
そして、この聞くということは、相手が話してくれるという前提があってこそ成り立つわけで、カウンセリングのテキストには、“聞く技術”についても多くのことが書かれているわけです。
しかしながら、実際にカウンセリングを行っていて意外と多いのが、ひとことも話すことのできないクライアントさんの存在です。
面談ならまだしも、電話カウンセリングで相手がなにも話さないと、ほとんどのカウンセラーが「あれ、電話機の故障かな?」と思います。
そこで、「聞こえてますか?」と聞いてみると、かすかな声で「‥はい‥‥‥」と応答があるわけです。で、「きょうは、どんなお話を聞かせていただきましょう?」と言うのですが、「‥‥‥‥‥‥」となにも答えてはもらえないんですね。
とくにカウンセリング経験が少ないカウンセラーにとって、これはまさに地獄です。電話カウンセリングの45分間が、それはそれはもう、人生でいちばん長い45分間になったりします。
で、ついつい、「お話がまとまらないのであれば、きょうはこれで切っていただいて、まとまったら、またお電話くださいね」などと言いたくなるのですが、私どもでは、よほどのことがないかぎり、カウンセラーのほうから電話を切るということを禁止しておりますので、切るわけにもいかず、困ってしまうわけです。
そんなカウンセラーに対し、私は「返事がないのも、コミュニケーションの一つだよ」、「きみがなにも話せない状況だとしたら、どんなことが考えられるか想像してごらん」と指導しています。
なにも話せない状況、それはたぶん、よほど話しにくいことなのか、よほど緊張しているか、ということが考えられるでしょう。
とくに緊張してしまうタイプの人は、声が出にくいものです。そんな人には、こんなふうに語りかけます。
「急いで話さなきゃとか、ちゃんと説明しなきゃとか、考える必要はまったくありませんよ。私どもから電話をお切りすることはけっしてありませんから、ゆっくり時間をかけて考えていただいてもなんの問題もありません。どうぞ、あなたのペースで、この時間をお使いください」
こんな言葉をかけるだけで、「は、はい‥‥。では‥‥」などと話が始まることも少なくないのです。
これは恋愛も同じです。下を向いて泣いてばかりの彼女を「泣いてばかりじゃ、話にならないだろう」と問いつめても、あるいは、黙り込んでいる彼を「なんとか言いなさいよ!」と責めたとしても、それではますます話しにくくなるだけですよね。
相手がコミュニケーションを閉ざしてしまうと、ついつい責めたくなってしまいますが、そういう状況にあるとき、人は必ず自分のことをものすごく責めていて、とても苦しい状況にあります。
そして、こんなときによくするお話が、イソップ童話の『北風と太陽』です。北風さんと太陽さんが、旅人のコートをどちらが先に脱がすことができるかという競争をする話ですが、北風さんが強く吹けば吹くほど、旅人はコートをしっかり押さえ込んでしまいましたよね。
ここで必要なのは、太陽さん‥‥、温かい心と思いやりです。つまり、愛であるわけです。
愛するということは、彼や彼女のことがとても愛おしく感じられるときにするというよりも、パートナーがあなたの怒りを禁じえないような状況にあるときにこそ示すものだと考えていただきたいわけです。
そのとき、あなたのパートナーは「自分など、けっして愛されるわけがない」とみずからを疑い、あなた自身も愛の限界を感じているかもしれません。
まさにそのとき、あなたには攻撃や怒りを選択せずに、この状況で「どのようにパートナーを理解してあげようか」、「どう愛してあげようか」と考えてほしいのです。
そう思えたその瞬間、あなたとパートナーの間にはより強い絆が生まれるようですよ。
それは、具体的な方法というよりも、あなたが直感的に感じとったり、思いついたりすることなのかもしれません。パートナーシップにおいては、そうしたこともとても大事なのですね。
最悪の状況のときに、愛を選ぶこと。
あなたが選択しさえすれば、天使のほほえみが二人の上に降りてくるようですよ。
では、次回の恋愛心理学もお楽しみに!!