返事なき返事

こんにちは、平です。

早春の頃、学生さんにとっては卒業や新入学の時期であり、社会人のみなさんにとっては転勤や異動の多い時期といえますね。そして、恋に臆病な人にとっては、告白のチャンス到来の時期ともいえそうです。

たとえば、「同じ職場だから、告白して、もし、ふられたとしたら、その後、どう顔を合わせればいいかわからない‥‥」と思い悩み、結局、告白できずにいるという人は意外と多いものです。

しかし、どちらかが転勤や異動でオフィスを離れていくのだとしたら、ふられたとしても、その後、バツの悪い思いをしなくてすみそうですからね。

といっても、いきなり、「前から、あなたのことが大好きでした」などと直球勝負でいく人はあまりいません。

転勤や移動から少し経ったころに、「もう、新しい仕事には慣れましたか?」とか「久しぶりに食事でもどう?」などという口実でアプローチしてみるという人が多いようです。

そして、しばしば、そうした人からご相談いただくことに、「何度か食事に誘っているのだけど、仕事が忙しいのか、なかなか返事が来ないんです」というものがあります。

返事が来ない。

じつは、それがもう返事になっているのです。

先方もあなたと食事をしたいのであれば、返事をそんなに引き延ばすとは考えにくいでしょう。

なかには、「返事をするヒマがないほど、仕事がすごく忙しいのだろう」と考えたい人もいるでしょうが、さて、メールの返事を書くのに、いったいどれほどの時間がかかるというのでしょう?

ましてや、先方もあなたのことが好きなのであれば、メールの返事は必ず書くし、どんなに仕事が忙しくても、万障繰り合わせ、食事の時間もつくるでしょう。

つまり、返事がないということは、相手の気持ちは「No」である確率がとても高いといえるのです。

ビジネスの世界では、その場で「No」と答えるかわりに、「検討しておきます」という言葉をよく使います。この、きわめて日本的な否定の方法は、恋愛でもよく使われます。

たとえば、「また、こちらから連絡するよ」と言われたとしたら、それは「きみからはアプローチしてこないでね」という相手からのメッセージなのです。

また、「そうだね、いつか行けたらいいね」という未来形にも同じようなメッセージが含まれています。あなたは、「いつかじゃなくて、来週以降にね」と言ってしまうかもしれませんが‥‥。

どうも、私たち日本人は優しすぎるのか、その場で「No」と返すことによって相手を傷つけたくないと考え、結論を先送りにし、そして、うやむやにしようとするようです。

似たような例では、「私がこんなにラブラブ・ビームを送っているのに、彼はなんて鈍感なんでしょう!」というご相談をいただくこともあります。

たしかに、恋愛にウブで鈍感な男性というのも、若干、存在はしているのですが、このような場合、鈍感なのは、恋をしているあなたのほうであることが圧倒的に多いのです。

彼は、あなたの好意とラブラブ・ビームを知らん顔してごまかそうと必死なのですが、鈍感なあなたはそのことにまったく気づいていません。

この種の“返事なき返事”は日本人の得意とするところです。

「はっきりは言わないけれど、態度や雰囲気でわかるよね?」という、いわばテレパシーを使ったコミュニケーションといってもよいのかもしれません。

日本人というのは、それぐらい「No」を言うのが苦手らしいのです。

そして、そんな相手に、「もう、いい加減にして。いつまで先延ばしにするの。はっきりしてよ!」などと言おうものなら、ものすごく嫌われることがあったとしても、好意をもってもらえる可能性はまったくないでしょう。

ところが、おもしろいもので、相手が「No」と言うのを躊躇していることを、あなたが察してあげられたとしたら、状況が変わってくることもあるのです。

たとえば、彼が「No」という前に、「じゃあ、またいつか、機会があったらね」とあなたが言ったとします。すると、あなたに対する彼の好感度は、がぜん、上がることでしょう。

なぜなら、「No」と言うことへの彼の負い目を察してあげて、上手に彼の肩をもちつつ、「私のほうから去っていきましょう」と言ってあげているからです。それにより、「思っていたより、いい娘かもな」と彼は感じたりするわけです。

それは、相手を優先してあげるゆとりがあなたの中にあるということでもあります。そんなときは意外と、代打逆転満塁サヨナラホームランが出ることもあるのです。

では、次回の恋愛心理学もお楽しみに!!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。