母とのこと

相談者名
yuna
こんにちは。いつも、こちらのサイトで学んでいます。

私の親は、とても仲が悪かったです。
父は遊んでばかりで家庭を省みない人でした。
母は、父をいつも悪く罵っていました。

母は、私への過干渉が酷かったです。
あなたは駄目ね、といった私を批判する言葉も多かったです。
私は子供の頃からずっと、いつも母の顔を伺って
いつ、母が自分の気に召さないと怒りだすか、ビクビクしていました。
私は伸び伸びした、子供らしい子供時代を送れなかった事に
母の事は好きだけれど、同時に母を恨む気持ちも持ってしまいます。

また、母が私にぴったりくっ付いてきていたからなのか
どうしたら、ちょうど良い距離を保って
友達と長く・楽しい付き合いが出来るのか分かりません。

恋愛についても、過去に何度か彼氏が出来たし
付き合わなくても、私に興味を持ってくれる人は何人もいました。
でも、子供時代、父の存在がいつもなかったからなのか
彼氏がいる状況が変な感じがしてしまいます。
彼氏がいない状況が、「普通」な感じがしてしまいます。

相手の男の人が私に気があるなと感じたり自分が好きな男の人の前に出ると
(とにかく相手を異性として意識すると)
上手く話が出来なくなってしまいます。

私は、難しかった母との関係を精算したいです。
だから、母を理解し、母を許したいのですが、自分だけでは難しいです。
友達と良い関係を築きたいです。
自分を見せられる彼氏を作って、恋愛を楽しみたいです。

アドバイスをお願いします。

カウンセラー
池尾昌紀
yunaさん、こんにちは。
池尾昌紀と申します。
ご相談ありがとうございます。

yunaさんは、ご自身のことがよくわかっておられる方なのだな、と文章を拝見して感じました。

親子が心理的にぴったりくっついていることを「癒着」といいますが、yunaさんとお母さんとは、この「癒着」という状態になっているようです。
ぴったりくっついているので、自分のことなのか、他人のことなのか、その境界線がわからなくなってしまうのですね。
そして、そのことにyunaさんも気づいておられ、だからこそ、「母との関係を精算したい」と思われるのではないでしょうか。

親子で起こる「癒着」というのは、元は夫婦の間にできた距離から作られる事があります。
例えば、お父さんとお母さんの夫婦仲が悪かったとか、仕事等が忙しすぎて、どちらかが家にいる時間がないとか、そうなると夫婦の間に心理的な距離ができやすくなります。
本当は好きなのに嫌いになってしまったような感覚とか、単純に相手がいないと寂しいという思いは、夫婦の間に距離ができたような感覚ができます。
そうすると、その隙間を何かで埋めようとする心理がはたらき、それが自分の子どもだったりするわけです。

「癒着」は、自分のことと他人のこと、その境界線がわからなくなってくると書きましたが、この状況では、親は子どもをまるで自分の分身のように感じていくことがあります。
そうなると、あらゆることに口をだしてくる過干渉の状態になるわけです。

ところが、子どもにしてみれば、それはとても辛いものになることがあります。
親がどんどん自分に近づいてきて、しがみついているような状況になると、「うっとおしい」と思ってしまうものですよね。
一人でいるときでも、常に、親がそばにいて何か言ってくるような気がする。
心がそれに縛られて自由じゃない感じがするわけです。
ところが、親のことを嫌っているわけでない、むしろ愛しているために、大好きだけど大嫌い、といった矛盾した心が生まれて、それに苦しんだりします。

また、子どもにとっては、親の辛さや苦しみを、まるで自分のことのように感じて背負ってしまうこともあります。
実際のカウンセリングの現場では、わたしは特に傷ついた経験も辛かった経験もないのに、いつも息苦しかった。それはなぜでしょう?。というお話を伺う事がありますが、自分ではなく、親がとても傷ついたり、苦労していたりすると、それをそのまま自分が体験したかのように、引き受けてしまうこともあるのですね。
ですから、「自分の苦しみではないという視点を持ってみてはどうですか?」と提案させていただくこともあります。

では、どうして、そんな風に子どもは背負ってしまうのでしょう。
それは、親を愛しているからです。
寂しそうな親の姿をみたら、自分がなんとかしなければ、と思います。
親を助けたいという思いが、そうした状況を作るのですね。
そこには、親の苦しみは私の苦しみ、という心理がはたらいています。

これって、どこかで聞いた話ではありませんか?
そう、最初にご説明させていただいた、親が子どもに持っていたものです。
「癒着」というのは、実は、親子がお互いに「自分と相手の境界線がなくなっている」状態であることが多いように思います。

相手との境界線がわからなくなっている状況が長く続くと、今度は、他人との人間関係を作る時に、どんな距離感で接していいのかわからなくなることがあります。
近くても遠くても違和感があるのは、適正な人間関係の距離のモデルがいないからなんですね。
けれど、「癒着」の状態が変わっていけば、人との距離がわかったり、関わり方が変わってきます。

ではどうしたらこの「癒着」の状態を変えていけるのでしょうか。

1.あせらないでじっくり取り組む
このことに取り組み解決するには時間がかかる、と思ってください。
辛い状況というのは、今すぐにでも解決したいと当然、思います。
その思いが大きいほど、焦りも大きくなり、結果が早く欲しいと思います。

けれど、今まで長い間この状態だったものを、急に変えるのは難しいことです。
ですから、すぐには変わらないかもしれないけれど、少しずつ積み重ねていくことで
少しずつ変わっていくものだ、と自分に言ってあげてください。
それだけでも、随分、楽になります。

2.今までの辛かった自分を振り返ってあげる
次に今までの苦しかった思いを感じたり話したりしてみてください。

こうした親子の問題というのは、中々人には話せないものです。
そうすると、自然に心の中に、いろんな思いがたまっていきます。

まず、今までの親子関係を振り返って、苦しかった、辛かった思いを
紙に書いてみます。
それを書き出すうちに、いろんな感情が出てくるかもしれません。
それを感じてみましょう。

ただ、一人でやっていくには、この作業はとても辛いことがあります。
そんな時には、信頼できる友達に、聞いてもらう時間をとってもらうとか
あるいは、カウンセリングサービスの初回無料電話相談などをご利用いただき、
誰かに聞いてもらうということをしてみてください。

今までの自分の辛かった思いを誰かに聞いてもらうだけで、かなり楽になっていきます。

3.今までのうれしかったことを振り返ってみる
次のアプローチは、今までの親子関係を振り返って、うれしかったこと、楽しかった事を、同じように感じてみます。
紙に書いてみたり、誰かに聞いてもらいましょう。

そこでも、いろんな感情が出てくるかもしれません。
それを感じてみましょう。
紙に書いた場合には、辛かったことと、うれしかったことを比較してもいいかもしれません。

そうすることで、恨みつらみだけでなく、親からの愛を思い出すきっかけにつながることもあります。

4.どんな理由があったのかについて思いをめぐらせてみる
その次は、親はどうしてあんなことを私にしてきたのだろうか、と考えてみます。
そこには、その家庭ならではの、理由があるはずです。
あなたが大変だった時、親はどんな状況だったのでしょう。
夫婦の関係、家庭の経済状況、祖父祖母など他に住んでいた人はいなかったか、その時の関係は?
仕事の大変さはどうだったのか、など、我が家を取り巻く状況を思い出してみてください。

「我が家ならではの理由はなんだったのだろう?」という視点が大切です。
子を愛していない親はいません。

特に母親は、自分のお腹を痛めて子どもを出産します。
その子どもを愛していないはずはありません。
けれども、もし、愛されなかったのならば、きっと、何か理由があるはずなのです。

5.自分の人生の主人公は自分である
そして、最後に、「親の人生は親の人生」「わたしの人生はわたしの人生」という言葉を
自らに唱える、ということを提案させていただきたいと思います。

先ほど、子を愛していない親はいないと書かせていただきました。
逆に、親を愛していない子どもはいません。

親を愛しているが故に、親が苦しんでいる様子に苦しみ、それを何とか取り除いてあげたいと思うのです。

けれども、親が苦しんでいるのを何とかしたいというのは、全く別の見方をすれば、
親の人生を尊重していないとも言えると思うのです。

どんなに苦しんでいても、辛かったとしても、親の人生すべてが辛かったと言い切っていいのでしょうか。
それは、本人にしかわからないことです。たとえ子どもであったとしても、他の誰にもわからないことだと思うのです。
辛いと決めるのではなく、それはその人に決めてもらえたらいいことなんだ、と思ってみましょう。

これは、心を切り離すということではありません。
親への愛情を自分が感じて、これからも感じ続けることを思いながら、
なおかつ、親の人生を尊重して、見守ろう、と思ってみていただきたいのです。

それが思えた時、はじめて「あなた自身が、あなたの人生に向き合おう」と思えます。
あなたの人生はあなたにしかわからないのです。
ということは、あなたの人生はあなたが決められるとも言えます。
それが、あなたの人生をあなた自身が尊重してあげる、ことにつながると思うのです。

この問題は、辛さ、苦しみ、悲しみを伴うものですが、その大元は、愛しているが故に起こります。

今回、yunaさんがご相談くださったことは、自分の人間関係をなんとかしたいという思いはもちろんですが、
実は、お母さんのためにやろうとしている思いが、心の奥底にあるように思います。

「母を理解し、許したい」という思い。

人は誰かのことを憎みたいと思っているわけではありません。
にも関わらず、誰かへの怒りや痛みを抱えたままでいると、心がいつも嫌な気持ちを持ったままになってしまい、息苦しく、とても苦しくなってしまいます。

お母さんを恨みたくない。その思いが今回のご相談につながっていると僕は思います。
とてもとても優しい心の持ち主だと思うのです。

でも、お母さんのために、という思いがあるのであれば、尚のこと、自分を大切にしてあげて欲しいのです。
「許し」は、批判している相手のためではなく、自分のために、自分の人生が良い方向に向かうためにおこなうものです。

それは、心の痛みから本当の意味で解放されるためにあるのです。

けれど、「許し」は簡単にできることではありません。
よかったら、カウンセリングサービスのカウンセラーにお手伝いさせていただけたらと思います。

僕も、そんな優しい心を持った、yunaさんの癒しのお手伝いがさせていただけたら、これほどうれしいことはありません。

ご相談ありがとうございました。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

名古屋を軸に東京・大阪・福岡でカウンセリング・講座講師を担当。男女関係の修復を中心に、仕事、自己価値UP等幅広いジャンルを扱う。 「親しみやすさ・安心感」と「心理分析の鋭さ・問題解決の提案力」を兼ね備えると評され、年間300件以上、10年以上で5千件超のカウンセリング実績持つ実践派。