疑いの壁を越えて

こんにちは、平です。

数年前のお盆明けに1週間ちょっとの夏休みをとり、家族でイタリア旅行に行ってまいりました。

ガイドブックなどには、「イタリアはスリやひったくりが多い国。落とし物などしてしまったときも、なにも帰ってこないのがあたりまえ」というようなことが書いてあります。

そんな国へ、なくしものや落としもののチャンピオンであるこの私が行くわけですから、たいそう不安になるわけです。

「人を見たら、泥棒と思え」とは日本のことわざですが、まさにそのような疑いのまなざしとなり、それはそれは人相の悪い顔で観光していたりするわけです。

そして、私が今回、イタリアで経験したのは、ジャケットをレストランに忘れてくること2回、タクシーを降りた際、クレジットカードが入った小銭入れを落とすこと1回。

しかし、翌日、レストランを訪ねてみると、ジャケットは2回ともきちんと保管されていましたし、財布は近くでサングラスを売っていた黒人の露天商に拾われていました。あとで私が探しにいったとき、彼は「ヘイ、セニョール!」と私に声をかけ、財布を掲げて見せてくれて、無事、クレジットカードともども私の手もとに返ってきたのです。

「ガイドブックと違うじゃん」

もちろん、怪しい人やアブナイかんじの人も、若干はいたのですが、大多数の人びとが、とても好意的でやさしかったわけです。

ピサの斜塔で有名なピサに行ったときは、タクシーの運転手さんから、「駅前にはジプシーのスリが多いからね。とくに切符売場で財布を出すときには、まわりをよく見ないといけないよ。われわれイタリア人だって、すられちゃうことがあるんだからね」というレクチャーを受けたりして、イタリアを発つころには、イメージが一新されていたような状況でした。

心理的に見ると、“疑い”という自己概念をつくるいちばんの原因は、罪悪感だといわれています。

私の場合に置き換えて説明すると、「財布をすられるのではないか?」「ひったくられるのではないか?」とハラハラしているわけですが、なぜ、そうした災難が自分に起こるということを信頼しているかというと、それは、心のどこかに「だって、私は罪深い人間だから、バチが当たって当然だ」という思いがあるからといえるようです。

頭の中では、「ガイドブックにそう書いてあったから」とか、「日本と違って、治安がそれほどよくないから‥‥」などと思っているのですが、前述のような思いがあるので、「きっと、だれかが私にバチを当てにくる」と考え、恐れや不安が強大化していくのです。

たとえば、あなたは3億円の宝くじが当たったと思ってくださいね。

きょうは、その宝くじを持って、電車に乗り、みずほ銀行の本店まで行かなければなりません。

あなたは、いつものように、電車の中でうたた寝できるでしょうか?

たぶん、「この車両には、必ず、私の当たりくじを狙ったスリや泥棒がいる!」とでもいうがごとく、あなたは身構え、恐怖で顔をひきつらせながら、カバンを押さえ込んでいることでしょう。

しかしながら、万が一、スリや泥棒さんがほんとうにその車両にいたとしたら、あなたのその態度は、「あいつを狙おう」と彼らが思うにふさわしいものであるはずです。当のあなたは気づいていないわけですが‥‥。

どうやら、私たちは宝くじに当たることも、どうも、「悪いことをして、申しわけない」と思い、恐がっているようなのです。

男女関係も同じです。

あなたがどれだけ、あなたのパートナーを信頼できるかということが、パートナーからのあなたへの信頼にもつながってくるようですよ。

あなたが、一度、パートナーを疑いはじめると、それはもう、きりがない迷宮に入りこんだようになることもよくあります。

うまくいっているカップルほど、この信頼関係がうまく機能していくようです。

「でも、そんなに信頼しきっていて、万が一、浮気をされたら‥‥」と思う人もいるかもしれません。

ここで、理解していただきたいのは、どれだけあなたが監視していたとしても、浮気する人はするということです。

仮に法律がなくなったとしても、多くの人は犯罪を犯すことはないでしょう。それに対して、犯罪を犯す人というのは、どんなに厳格な法律があったとしても、犯すときは犯してしてしまうものです。

あなたがパートナーを疑っているとき、あなたがいちばん疑っているのは、じつはパートナーではありません。

そうではなく、「自分には、誠実なパートナーなどやってくるはずはない」と自分を疑い、自分を責めているといえそうです。

それはなにより、「私に最高のパートナーが与えられる」ということを疑っているということなのかもしれません。

 

では、次回の恋愛心理学もお楽しみに!!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。