これからどう付き合えばいいでしょうか

相談者名
リラ
はじめまして、いつもお世話になりましてありがとうございます。
日々考えが詰まった時などにここに来て事例集を読ませていただいている者です。
私には子供が二人いるのですが、友人は、現在不妊治療中です。
時折、メールで近況報告がある度、そのメールにどう返信していいのか考え込んでしまうことがあります。
主に治療や現在の彼女の体の状態のことが詳しく綴られていて、最後はポジティブな感情で締めくくられているのですが、それに対して励ましたり、自分の感情のまま文章にするのが恐いのです。
と言うのも、結婚当初の彼女からの相談メール(不妊のことではなく、夫婦間の相談でした)に、励ますつもりで返信をした時、
『あなたとは違う(あなたに私の気持ちはわからない)』
と言われてしまったことがあるからです。
それまでは彼女が大好きで、彼女の力になりたいと心から思っていたし、私も彼女に助けられていたので、たったひとことですが、かなりショックを受けました。
友達として、お互い話を聞いてもらったり、聞くことは当たり前ですが、
子供が出来ない辛さを聞きながら、自分の心からの言葉を伝えたとしても、また
「あなたとは違う」
と、責められてしまうのではないかという恐れと、環境が違う自分が話を聞き続ける事は、正直違うんじゃないか・と思い始めています。
当たり障りのない返信をする自分が嫌だと思いつつ、これから彼女とどう付き合えばいいのかよくわからなくなっています。
なにか、ヒントを教えていただければ嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
カウンセラー
大谷常緑
リラさん、こんにちは。
ご相談を担当させていただく大谷です。
よろしくお願いします。そうですね、よかれと思ってした事が逆に相手を傷つけてしまった経験は、とて
も辛いですね。
失敗感からご自身を責めたり、「どうして?」と接し方がわからなくなってしま
ったり、相手とコミュニケーションを取る事自体が憂鬱になってしまったりしま
すね。

では、先ずは人間がなぜ傷つくのかというところから少しお話ししたいと思いま
す。

例えば、太っている事を気にしている人がいたとします。
「太っている自分は駄目だ」とか「ダイエットしないともてないぞ」なんて考え
ていたとします。これって、どこかで太っている自分を攻撃している状態ですね。
そんな人に「太っているね」と言ったとしたら、その人はどうなるでしょうか?
「太ってなんかいないわよ!」と怒り出すかも知れません。あるいは顔で笑って
「殺してやる~」なんて思うかも知れません。
自分自身が自己攻撃している部分を人からも言われると、余計に苦しくなるわけ
です。
まぁ、自分の心にWパンチを受けるようなものです。
そんな痛い感情には耐えられないので、その痛みを緩和するために、そう言った
相手に攻撃の力を向けるわけです。
誰かを攻撃しているときには、自分の痛みを感じないで済むからです。

一方、太っていてもその事を全然気にしていない人や、太っている事をポジティ
ブに捉えている人に「太っているね」と言ったとしましょう。
その人はどんな反応を示すでしょうか?
「そう、少し太り気味なの。包容力をかんじるでしょ?」とか「そうそう、昔か
らちょっとおデブなの」なんて別に気にはしない明るい答えが返ってきますね。
別に傷つかないのです。

このように、傷つくというのは、自分が自分の責めているところを人に触れられ
たときに、自己攻撃で傷つくのです。
よく「人に傷つけられた」などという表現をしますが、極論を言えば、実は自分
で自分を傷つけているだけ、勝手に傷ついているだけなのです。

そしてもう一つ厄介な問題が、「投影」です。
「投影」とは、「物事の全ては自分の心を映し出して見る」という事です。
例えば、AさんとBさんが同じ秋の青空を見ていたとしましょう。
Aさんは「澄んだ綺麗な青空だなぁ」と感じたとします。
しかしBさんは「何か寂しそうな青空だなぁ」と感じたとします。
同じ物を見ても、こういう感じ方の違いってよくありますよね。
これは、AさんはAさんの気持ちが青空に投影されていて、BさんはBさんの気
持ちが同じ青空に投影されているからなのです。
Aさんは、ひょっとしたら、何か楽しい気分だったのかも知れませんし、Bさん
は何か嫌な事があったのかも知れません。

これと同様に同じ言葉であっても、人のその時の気分で受け取り方や感じ方が違
うのですね。
例えば、自分はとても頑張っていると思っている人に、応援するつもりで「頑張
ってね」と言ったとすると、「これ以上どう頑張ればいいんだ!」と感じるかも
しれません。
しかし、もう少し頑張ろうと思っている人に同じく「頑張ってね」と言ったとし
ても「応援してくれてありがとう」と感謝の言葉が返ってくるかも知れませんね。

相手のその時の気持ちの持ち方によって、言葉は何とでも受け取れるのです。

人間誰でもそうなのですが、特に問題を抱えたときには自分をたくさん責めてし
まいます。
以前、リラさんが励ますつもりで伝えられた言葉をご友人が違う解釈をされたの
かも知れませんね。

さて、ではどうすれば相手を傷つけないようにコミュニケーションをとる事がで
きるのでしょうか?

100%そうする事は、先に書きましたように相手の感じ方の問題があって不可
能だと思います。
相手の心のどこに地雷があるのかは分からないのです。

ただ、相手を傷つけにくいコミュニケーションの仕方というのはあります。
それは、相手を全部受け入れてあげる事です。そして、一緒に感じてあげる事で
す。
お友達は問題を抱えておられるのですから、ご自分の様々な部分を責めておられ
ると思います。例え表面では逆の事を言っていたとしても、苦しいときには「自
分は駄目だ」「自分は悪い」と必ず自分を責めています。自分で自分を認められ
ていない状態なのですね。
だから、誰かがその部分を認めてあげると、心が緩んでいきます。お友達が楽に
なっていかれます。

そして、一番重要な事は、お友達がたとえ傷ついたとしても、リラさんがご自分
を責めない事です。失敗したと思わない事です。
先ほども書きましたが、相手の感じ方次第のところも大いにありますから、お友
達が傷つくかどうかは、お友達の問題がとても大きいのです。
そしてそこでリラさんが傷ついてお友達から遠ざかってしまうと、お友達は「私
が悪い」とまた自分を責め始めてしまいますね。
これは、リラさんがお友達に与えたいものではないですよね。

リラさんがお友達を思いやる気持ちこそ、とても大切なものだと思います。
傷つけてしまった自分を見るのではなく、自分を責めるのではなく、そんな状況
の中でもお友達の事が見てあげられるといいですね。
そんなリラさんの気持ちは、きっとお友達に通じていると思いますよ。
昔、リラさんから傷つけられたと思っている出来事があったお友達から、今でも
頼られている事に自信を持ってくださいね。

最後に、環境が違うリラさんが話を聞き続ける事についてですが、これは間違っ
ていません。
環境はいくら違っても、感情のレベルで見ると、理解できる事もたくさんあるの
ですから。

回答がお役に立てると幸甚です。
ありがとうございました。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。