てるさん、こんにちは。 池尾昌紀と申します。ご相談ありがとうございます。浮気の原因は、我々が「不足原則」と呼んでいる心理が働いていると言われます。 「不足原則」とは、足りないと思っていることを他の何かで補おうとする心理のことをいいます。 例えば、夫が仕事で忙しく余裕がなく、妻にいつも冷たい態度を取っている家庭があったとしましょう。 妻は夫から「温かさ」や「やさしさ」を感じられませんから、この部分が足らない、与えてほしいと思います。 いつも寂しいと思っていますから、この寂しさを埋めようと思ってしまうのですね。 そんな時、相談相手になってくれていた学生時代の友人の男性が、親身になって話を聞き、いつも温かくやさしい態度で接していてくれたとしたら。この男性と会っている時は寂しくない。欲しかったものを埋めてもらえると感じます。そのうち、ついついこの男性に気持ちが傾いてしまい、浮気をしてしまう、ということになります。 ここでのポイントは、「この男性にやさしくして欲しいのではなく、本当は夫からやさしくしてほしい」というところです。 しかたなく他の人で思いを埋めようとしてしまったわけですね。 続けて、浮気をしてしまった後の心理をこの女性の例でみてみましょう。 実際に浮気に至ってしまうと、「私はなんてことをしてしまったんだ」と後悔し、夫への罪の意識から自分を責めることになります。 罪悪感と呼ばれる苦しみですね。これは、先に書いたように「本当は浮気をしたくてしたわけではない」ために、より大きくなります。 夫のことを嫌いで相手の男性を好き!とはっきりわかっていれば罪の意識で苦しむ必要はないですからね。 そんなに苦しいならその時点で浮気をやめたらいいわけです。 ところがこの罪悪感という代物はとてもやっかいで、激しく自分を攻撃すると同時に、自分を正当化させようともするんですね。 簡単に言えば、「元はと言えば、あなたが冷たくしたからじゃない!。私は悪くない!」と逆キレする感じです。 はたから見ていると明らかに無茶な理屈です。 実は、これは、あまりの苦しみに、それを感じたくなくて自分を守るためにやっている感情であるともいえます。 これは、真面目で家庭を大切にして浮気をするなんて考えられないという誠実な方ほど、大きくなる傾向にあるようです。 誠実であるほど罪の意識を受け止められないからなんですね。 けれど、そんな態度を取れば、元々は浮気をした自分が悪いのはわかりきっていますから、自己嫌悪になって自分を責めます。 ところが、この強い罪悪感は、繰り返しやってくると強いが故に、その感覚が麻痺してしまうんですね。 するとまた自分を正当化して、浮気したってしかたないじゃないか、と浮気を繰り返すことになってしまうことがあります。 こんな態度では、浮気をされた側には反省しているとはとても思えません。 たとえ、謝られ、もう二度としない言われたとしても、本当にそう思っているの?と言われた側としては信じられなくなるのはそのせいなのです。 確かに、外でみている分には明らかに態度が悪い場合でも、本人の心の中では、どうしてこんなことになってしまったんだろうと、やっている本人が愕然とし、重ねた罪をもう償いようがないと感じ、自分でもどうすればいいのかわからなくなってしまう。自分を責め続ける苦しさに打ちひしがれているのです。 まずは、「こんな態度の相手も心の中では苦しんでいるのかもしれない」という視点を持ってみることが、浮気という夫婦の問題を解決していく第一歩になります。 その気持ちは「私にもどこか悪いところがあったのかもしれない」という思いにつながり、気がついたことがあれば、その部分を変えていこうとも思えます。すぐにはできなくても、少しづつでも。 そうは言っても、浮気をされた悲しみは簡単には消えませんよね。 何しろ、された本人だけでなく、周囲の人からしても、社会的にみても、悪いのは浮気をした側なんです。 浮気をした人は悪くないのか、と言われたら、やっぱり悪いのです。 浮気をされたらそのことで本当に悲しみ苦しんでいるのです。 けれども、ここからが大切なところになります。 それは、「正しい」ことと「幸せ」なことは同じではない、ということです。 浮気をしたことを責める気持ちは「正しい」ことです。 でも、それを続けていても「幸せ」にはなれません。 相手を責める言葉は、相手を追い込んでしまいます。ただでさえ相手は自分自身を責めているのですから追い打ちをかけてしまうことになるわけです。相手も悪いことはわかっているのだから。 何か不安材料があると、つい相手を責めたくなります。それは当然のことです。 その上で、こんな気持ちになった時には、こう自分に尋ねてあげて欲しいのです。 「正しいことだけど、幸せになれる言葉なのかな」と。 それだけでも、相手を責める気持ちが楽になります。 なぜなら、あなた自身も本当は彼を責めたいと思っているわけではないからなのです。 そうですよね、てるさん。 あなたは誰よりも自分自身を責めておられるのだと思います。 ご相談に書いてくださっていた「私も初めての子育てに必死で夫に対して冷たかったかもと」という思い。 わずかにこの言葉だけですが、そのことだけでなく、何度も何度も繰り返し思われたはずです。 「あの時の、あの態度、あの言葉、あのふるまい。どの私が彼をこんな風にさせたのか」と。 ここで思い出してほしいのです。 もしかしたら、彼も同じように自分を責めていたのかもしれないということを。 てるさん。 ご相談をいただいた文章の中で、僕が強く心ひかれるところがありました。 それは、「夫も私も離婚する気はありません。」という一文です。 あえて、あえてこう言わせていただきたいと思います。 あなたは本当にそう思っていますか?、と。 彼は関係ないのです。まずは、てるさん、あなた自身が本当にそう思っているかということが大切なのです。 そして、それは「彼のことを本当に愛しているのか」ということでもあります。 あなたは、彼のことを本当に愛していますか? そして、どんなことがあってもこの愛を貫きたいと思っていますか。 たとえ彼がどう思っていようと、私は彼を愛している。彼と一緒にこの先の一生を生きていきたい、そう思っていますか。 その思いが、この問題を解決する最大の力になります。 浮気の問題はとても苦しく、すぐに解決するものではありません。 けれど、必ず解決していく道はあります。 パートナーとの問題は、自分の心の中にある問題を映し出してくれる鏡である、という言葉もあります。 この問題を通じて、自分の中にある問題を解決し、そのことで、相手との問題を解決していく。 絶対に修復不可能だと思われる状態の夫婦が、それを乗り越えた時に、つきあいだしてから一番二人の絆を強く持ち、幸せな家庭を築けたという話は、実際のカウンセリングの中でたくさんの事例があります。 それには時間も忍耐も必要になりますが、 その時に最も力になるのが、この彼への愛なのです。 その時はじめて、わかるのです。 浮気の問題があったから、本当に相手のことを愛せるようになったんだな、と。 僕もその一人です。 だからこそ、同じ悩みで苦しむ人を少しでも楽にできるお手伝いがしたいとカウンセラーになることができました。 苦しんでいるのはあなただけではありません。 そして、あなたは一人で苦しまなくてもいいのです。 今は思えなくてもいいのです。でも、決してあきらめなくてもいい、幸せになる道はある。そのことだけは覚えておいてください。 てるさんの幸せを心から祈っています。 ありがとうございました。 |