「親離れ」「子離れ」は、私たちが大人として社会で生きてくためには、とても大切なものです。
子供が頼りなくて、親から自立できないのだと思われることが多いのですが、子供が自立しない理由の中には、「親のことが心配だから」というののもあるのです。
無意識のうちにやってしまっていることなのですが、子供が親のことを心配し過ぎると、子供が自立しないということが起こってしまうことがあるのです。
***
「子供が自立してくれない」というお話をよくお伺いします。
また、「親が離れてくれない」という子供側からのお話しもよくお伺いします。
親側からも、子供側からもお伺いするお話しですので、子供の自立というのは、両者にとって大切なことではないかと思います。
今回の心理学講座は、そんな「子離れ」「親離れ」に関わる心理について書かせていただいております。
第1回目は、親のことが心配で離れられない心理についてです。
親が子供を心配するのではなく、子供側が親のことが心配で自立できないということなのですが、「そんなことあるの?」と思われるかもしれませんね。
親はしっかりしているし、世間的にも成功しているとしても、こういう事例は少なくありません。
親が「うちの子、いつまでたっても自立してくれなくて~」と、口では言っているのだけれど、なぜか嫌そうではない感じを受けることってないですか?
「本当に困ってるんですよ」と言いつつ、本気で困っているような感じがないとか、実際困っているようなのだけれど、だからといって、子供を自立させようと必死になっている感じもないとか・・・
一概には言えませんが、こういった場合、「子供に自立されると、親が困る理由」があったりします。
これは、親子関係だけでなく、私たちみんな、少なからずやってしまうものなのですが、本当の問題から目をそらすために、別の問題を持ってきているという状態。
子供がいつまでたっても自立してくれないというのは、親としては、経済的にも困るでしょうし、子供の将来を考えても困ります。
ですが、もしも心の中に、目をそらせたい問題が別にあるとしたら、子供が自立してしまうと、「子供が自立してくれなくて困る」という問題が消えてなくなってしまい、目をそらせたい問題を、見ることになってしまうのです。
例えば、親側の夫婦間の問題というのも、結構多い事例としてあります。
夫婦仲がうまくいっていないなどの問題があるけれど、それを見てしまったら、自分が変化するなり、相手と話し合うなり、何らかの行動が必要になってきます。
もしかしたら、このまま見て見ぬふりをしておけば、何十年も一緒に暮らしていくことが可能かもしれません。
でも、見てしまったが最後、離婚や関係性の再構築について、向き合わなくてはいけなくなる。
もし、そのような状態があるのだとしたら、親の側が意識的ではないですが、子供が自立しないように、あれこれと世話を焼いているかもしれません。
子供側も意識はしていないかもしれませんが、世話を焼かせてあげている。
子供側の心理としては、「私が(僕が)自立してしまって、親を必要としなくなったら、父と母は、きっとケンカを始めてしまうだろう」という感じです。
親のことが心配なのです。
またこんな例もありますね。
お父さんは、社会であまり認められていない。
お母さんは、社会とほとんど接点がない。
このような状態があるとします。
お父さんは、社会であまり認められていないので、その分家に帰ると、家族に権威を振りかざして、少々偉そうに言っている。
ここで、子供が自立して社会で活躍してしまうと、お父さんは子供に偉そうに言えなくなってしまいます。
「お父さんの立場がなくなってしまう・・・」と子供が心配する。
お母さんは、社会とほとんど接点がないので、子供を通してしか人と関われない。
ここで、子供が自立して社会と接点を持ち、親から離れてしまうと、お母さんは孤立してしまう。
「お母さんは、誰とも関わらなくなってしまう・・・」と子供が心配する。
もちろん、親の側も子どもの側も、意識してやっているわけではありません。
ですが、意外と子供側が親を心配して、親離れしてあげていないというのは、少なくないのです。
>>>『親離れ、子離れの心理(2)~癒着し過ぎて離れられない心理~』へ続く