母と祖母

 

相談者名
なばな
私は母との関係がうまくいかず、小さい頃から30年近く悩んできました。
母は父ともうまくいかず、祖母(母の実母)ともうまくいかず、子供(娘3人)と仕事に没頭しています。
パワフルで何とか前向きな人ではありますが、いつも何かに追われていて必死で、幸せそうに見えません。父との夫婦関係が結婚当初から満たされないままであるところから、仕事で社会的に認められたい欲求も強く、子供達とも完全に癒着していますが、本人は気づいていないようです。
私はそんな母に幸せになってもらいたいのと、それで自分も幸せになりたいことから、私にできることは何だろうといつも考えていますが、難しいです。
母が極端な性格になってしまったのには、祖父母の影響があると思います。祖父が亡くなった11年前から同居を始めた祖母とは、ひどく不自然な関係で、それが今の家族全体の雰囲気に強く影響を与えてしまっています。家族全体が不幸せな雰囲気です。

祖母は大変神経質な人で潔癖症、非常に内向的で異様に人の目を気にして生きています。趣味もないので、一日中ひたすら黙って座っています。母は一人っ子の義務として祖母の面倒は見ますが、仕事に忙しいので非生産的な話に付き合う時間はないのに…とこぼし、祖母は他に友人を作るでもなくただ寂しがります。性格や気質も全く合わないので、常に衝突します。私は二人の言い分をそれぞれ聞いて、どちらも相手を大事に思い仲良くやっていきたいだけなのに、固定観念とか意地とか恐れとか満たされない何かの欲求とか、そういうものが邪魔して意思疎通がなってないだけのように思えます。けれど祖母はともかく母が私の意見に耳を貸すことは決してありません。私も母との関係がこじれるの怖さに、祖母とのことについてはあまり出過ぎないようにしてしまいます。

二人は表面上は気持ち悪いほど仲良くしていますが、不自然過ぎる空気が流れ、他の皆も笑顔がこわばり、ストレスフルな家になっています。
二人はお互いがお互いをストレスに思い過ぎて、本当に追い詰められています。祖母はそれで何回か倒れているし、母も狂ったように叫んだりしています。何をどうすればよいのか、困っています。母も祖母ももかわいそうだし不幸だと思うからです。
私にできることが話を聞いてあげる以外に何かあれば、アドバイスをお願いいたします。

カウンセラー
池尾昌紀
なばなさん、ご相談ありがとうございます。
池尾昌紀と申します。よろしくお願いいたします。早速ですが、結論から先に申し上げさせていただきたいと思います。
なばなさんが「話を聞いてあげること以外に」やるべきこと
それは、「あなた自身に目を向け、まず自分が幸せになる」ということです。

順番にお話させていただきますね。
まず、なばなさんのお母さんとの関係についてお話させてください。
人が形成する人間関係のルーツは親との関係にある、と言われます。
ということは、おばあさんとお母さんとの関係は、そのまま、お母さんとなばなさんとの関係を現していることになります。
なばなさんは、お母さんとおばあさんとの関係について
「どちらも相手を大事に思い仲良くやっていきたいだけなのに、固定観念とか意地とか恐れとか満たされない何かの欲求とか、そういうものが邪魔して意思疎通がなってないだけのように思えます。」と書いてくださっています。
この気持ちは、そっくり、あなたとお母さんとの関係を現す言葉になっているのではないでしょうか。
だから、なばなさんご自身が、こんなに苦しんでおられるのですよね。

ということは、なばなさんとお母さんとの間にある「固定観念とか意地とか恐れとか満たされない何かの欲求」がどんなものであり、それを取り除くことができれば、お二人は意思疎通できるようになる、と考えることができます。
それはなんだと思われますか?
そこに焦点をあてて、自分の心の中をみていく作業をされることがスタートであるように思います。
まずは、お母さんとおばあさんとの間に見える様々なことを、もしかして、自分と母とも同じなんじゃないか、という物の見方をしてみてください。
似ている部分はそのまま、逆に正反対な部分があれば、本当は似ていることが逆に現れているだけではないか、と整理してみます。
このことは、なばなさんがお母さんに対して憤りや怒りを覚えたとき、お母さんがどうしてそんなことを言ったり行動に移したりするのか、その気持ちをわかってあげることにとても役立ちます。
私にあんなことを言うのは、おばあさんがお母さんに言ったり行動したりした時に、お母さんが感じるだろう思いと同じではないかと推測できるからです。
なばなさんが書いてくださっているように、おばあさんもお母さんのことを「大事に思い仲良くやっていきたい」と考えておられます。
同じように、お母さんもなばなさんにそう思っています。

この「どちらも相手を大事に思い仲良くやっていきたい」と書いてくださった思いが、なばなさんとその家族を救う鍵にであると僕は思います。
この思いに基づいて考えた時、おばあさんが一番うれしいこと、幸せに感じることは何だと思われますか?
それは、お母さんが幸せであることである、ということです。大事に思っている人が不幸な時、その思いが強ければ強いほど、自分が苦しみます。
ということは、おばあさんがこんなに寂しい思いをしている背景には、お母さんが幸せでないという思い、もっと言えば、自分のせいでお母さんが苦しんでいるのだという罪悪感があるのかもしれません。
もしそうだとしたら、お母さんはどうでしょう。
お母さんがなばなさんに同じことを感じているとしたら。
なばなさんは、それを想像してみた時、どんな感じがするでしょうか。

なばなさんはご相談の冒頭で「30年近く」お母さんとの関係で悩んでこられたと書かれておられますよね。
極端な言い方になってしまいますが、本当に嫌だったら親子とはいえ、家を出てしまうという選択だってあるはずなのです。
けれども、30年近く経った今でも、今回こうしてご相談をくださるほど、お母さんのことを心配しておられます。
文字通り「どちらも相手を大事に思い仲良くやっていきたい」という思いが、お母さんへの愛情がそうさせていると思うのです。
そうであるならば、お母さんに、そしておばあさんにあなたがしてあげられる最大の贈り物は、お母さんとおばあさんが一番喜ぶことをしてあげることだと思いませんか?
そうです。
それは、お母さんでもおばあさんでもなく、あなたがまず幸せになることなんです。

なばなさんがご自分の幸せに向き合えないのは、実は、このお母さん達を強く愛する気持ちがあるからとも言えます。
お母さんもおばあさんも、幸せな状態ではありませんよね。そして、実のところ、とてもいろんなことを我慢しています。
そしてもちろん、なばなさんもとてもたくさんの我慢をしています。
そんな二人を差し置いて、なばなさんだけが我慢するのをやめたり、幸せになったりするのは申し訳ないと、心の底では感じておられるのではないでしょうか。
そうではないのです。逆なのです。

なばなさんは、今まで本当にがんばってこられたのではありませんか?
お母さんとのこと、おばあさんとのこと、そしてお父さんのこと。
家族が幸せになることを願って、争いが起これば心を痛め悲しみ、その調整に奔走し、それに疲れ、その繰り返しだったのではないでしょうか。
それは家族を助けたい、家族を愛するゆえの行動でした。
けれども、それでは家族は救えないのです。
家族を愛しているなら、まず自分自身に目を向けましょう。自分の幸せに目を向け、自分の心の中の傷を癒し、幸せになっていく道を選びましょう。
その道は簡単にやってくるものではないかもしれませんが、必ずやってきます。
様々な苦しみや問題を乗り越えて幸せになられた方を、私たちは本当にたくさん知っています。
あなただって必ずその道を歩むことができます。どうか、そのことを覚えておいていただきたいのです。

具体的には、自分が楽しいと思うことをどんどんやっていく、ということをご提案したいと思います。
素敵な服を買いにいく、おしゃれして出かける。
美味しいものを食べに行く。映画やコンサートを見る。
マッサージにいってリラックスする、エステやネイルに行く。
どんなことでもいいのです。
自分が楽しいと思うことに積極的に取り組むことは、自分をいたわることになり、幸せを感じたりキャッチしたりするアンテナを伸ばしてくことになります。
心理学にはこんな言葉があります。
「感情を感じた分だけ、幸せはやってくる」
どきどきワクワクすることに取り組み、感激する感動することを習慣づけることで、幸せはその分だけやってきます。

親子はどんなことがあっても愛で結ばれています。
その愛する思いゆえに、かえって自分達を苦しめていることがあります。
けれど、家族を救っていくのは、結局はこの愛の力なのです。

どうか、ご自身の、そして家族が持っている愛の力を信じて、ご自身の幸せの道を歩んでいってください。
なばなさんの幸せを心から祈っています。
ありがとございました。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

名古屋を軸に東京・大阪・福岡でカウンセリング・講座講師を担当。男女関係の修復を中心に、仕事、自己価値UP等幅広いジャンルを扱う。 「親しみやすさ・安心感」と「心理分析の鋭さ・問題解決の提案力」を兼ね備えると評され、年間300件以上、10年以上で5千件超のカウンセリング実績持つ実践派。