「母の嫉妬にどう対処すればいい?」
というテーマでリクエストをいただきました。
母親からの嫉妬は、子供だった自分が大人としての自分を確立していくための通過儀礼のようなもの。
母子癒着という言葉があるように心理的に近すぎてお互いに見えなくなっていたものを見出すために避けては通れない試練ですが、これは親子関係に限らず、恋愛や男女関係においても良く起こります。
今回は、癒着の問題を乗り越えて、お互いを尊重し合える関係を築くためのアドバイス、そして今の悩みの原因についてお届けします。
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◎リクエストを頂きました◎
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母の嫉妬にどう対処すればいい?嫉妬しやすい母に、今思うと子供のころから嫉妬されていました。以下の3つの点でアドバイスをいただけるとありがたいです。
1)嫉妬から来る意地悪な言動を避ける方法は、近寄らない以外にありますか。以前の嫉妬のテーマの際には「理解してあげるといい」とあったかと思いますが、母は十分幸せな要素を持っているのにすべてに不平不満を言っている感じで、同情できません。
2)私の喜びを母に分かちあってもらえない。私が楽しそうにしているのを見ると非難めいたことを言うので、電話でも「元気だよ」以外に何もいうことがありません。寂しさ、孤独を感じます。
3)母親からの愛が幸せの根本だと何度も言われています。嫉妬してくる母でも、どうにかすれば母の愛を感じることができるのでしょうか。
よろしくお願いします。
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リクエストをありがとうございます。
今回、担当させていただく熊谷佐知恵です。どうぞ、よろしくお願いします。
関係性の中で起こる嫉妬を乗り越えるといった課題は、心理的に近すぎてお互いに見えなくなっていたものを見出すために避けては通れない、親子間で起こりやすい試練です。また、このような感覚は、恋愛や男女関係でもよく見られます。
ここで感じる寂しさや孤独は、「相手からは自分の気持ちがまるで理解されていない」と否定的な意味を感じる一方で、相手との癒着による苦しさから切り離しを望むもう一方の内なる思いが同時に引き起こしているものとも言えそうです。
「嫉妬を受けて困っている」
特に親子関係で感じる場合は、このような経験をしているのは自分だけのように思えるかもしれませんが、わたしにも同じような経験があります。
覚えておいて欲しいのは、あなたは一人ぼっちではないということ。
あなたと同じような立場を経験した人たちが、他にもたくさんいるのです。
●信頼できる友達やネットワークを持ちましょう
身近な友達や家族とは共有できない話題でも、私たちのようなカウンセラーを見つけたり、何らかのコミュニティに参加することは、あなたが精神的な成長を果たす上で大きな助けになります。
「誰にも理解してもらえない」ような気持ちになって本当に心細くて苦しいときは、いつでも助けを求められると知っておいてくださいね。
では、具体的にどうすればいいかを考える前に、まず起きていることが何なのか確認しましょう。
●期待~される側と抱く側とで感じるふたつの葛藤
たとえば、今回のケースでは、同情することを母に期待されていると感じていますが、それは自分にはできないとも感じているわけですよね。
期待に応えられないという思いがあるとき、それは罪悪感になります。
嫉妬されていると感じる部分は、嫌悪感になるかもしれません。
いずれにしても、とても嫌な感情なので、できるだけ感じなくて済むように離れたくなることは自然なことなんです。
一方、相手に対して期待しているわたし自身はどうでしょう?
「優しく受け止めてもらいたい」「わたしの喜びを同じように喜んで欲しい」と共感を求める気持ちは、自分側の期待でありニーズです。
もしかしたら、長い間「そうしてくれないのは、わたしが愛されていないからだ」と思ってきたのかもしれません。
それが離れたいと思う一方で、これまでに満たされなかった思いとしての執着となっているようです。
ここでの課題は、相手に変わってもらうことを期待しているだけでは成果が出ないということではないでしょうか。
●それは、本当に相手の問題なの?
「嫉妬しやすい○○」こんな風に相手に問題があると思ってしまっていると、それを理由に自分の正直な思いを表現することにためらいが出てきてしまうかもしれませんね。
たとえば、相手が「病気だから」「他の何かで問題や悩みを抱えていることを知っているから」といった場合も同じようなことが言えるかもしれません。
なるべく相手の感情(今回の場合は嫉妬心)を刺激しないように気を使われてきたのだと思うのです。
こうした優しさから始まった遠慮が、気がついたら、相手の感情のお世話役を引き受ける代わりに、自分の思いを正直に表すチャンスを見過ごしてきたともいえるのではないでしょうか。
●許しと許可と次へのステップ
では次に、自分が取り組めるところについてお話してみたいと思います。
「心配しなくても大丈夫!」ということをまずは自分に教えてあげましょう。
だって実際、心配したような「何かを失うようなこと」は起こらないから。
ここでの何かは、「大切な誰か」がそれに当たるのではないかと思います。
その人が十分幸せな要素を持っていることをあなたは知っているのでしょう?
その人が自分で気づいていないだけで、本当にそうなのだと思うのです。
「あの人は自分ではまだ気づいていないけど、私から見たら、十分幸せな要素を持っている」そう思える自分を信頼してみましょう。
そして次に、もっと自由でいることを自分に許可してみて欲しいんです。
それと同じくらい、あの人があの人のままでいることを許してあげましょう!
自分が自由で幸せで楽にいられることを自分に許してあげるのと同じくらい、あの人が自分のペースで自分の課題や問題に気づいていくことを許してみましょう。
今までは罪悪感になっていて、してはいけないことのように感じていたかもしれないけど、あの人の感情の面倒をみたり、背負っていた役割はもう私にはしんどい。
まずはそのことを認め、そこから自由になることを自分に許可してあげましょう。
罪悪感を自分とあの人への愛に変えて、そこから解き放してあげましょう。
同情ではなく、愛と信頼を送りましょう。
もしかしたら、これまでは、あの人の感情を引き受けることで、あの人にとっての「特別な存在」というポジションを得ていたのかもしれません。そして、その役割を手放すことで、大切なあの人を失ってしまうのではないかと怖れていたかもしれません。
もし、あなたにとって大切なあの人が、自分以外の誰かに頼ったり、仲良く楽しそうにしていたら、あなたは安心できるでしょうか?よかったね!と喜んであげられるでしょうか?きっと落ち着かない気分になりますよね。
誰かからの嫉妬がテーマにあるとき、もしかしたら逆の立場になったとき、あなた自身が嫉妬を覚えるかもしれません。
でも、ここではまず、重く苦しい今の執着のある状況を認めることが、新しい関係に生まれ変わる大切なイニシエーションになるのだと思ってみてくださいね。
少し勇気を出して、これまでのあの人から期待されていると思ってきたことから自由になってみてください。
●自分を知ってもらう努力は大切
その上で、チャンスがあれば、自分をちゃんと知ってもらうために表現すること。
愛を感じられないのは、前述の過程での遠慮から、本当の自分を隠してしまったからなんだと思うのです。
あなたが上手に本音を隠しているうちは、相手には気づいてもらえないかもしれません。
だって、隠しているのですから(笑)
「あなた(お母さん)はそう言うけど、私から見たらこんな風に見えるよ、感じるよ」
「こうしてもらえたら嬉しいんだけどな」
ぜひ、こんな風に自分の正直を表してみることにチャレンジしてみてください。
時には波風立ったりすることもあるかもしれませんが、摩擦を怖れずに分かり合おうとすることにチャレンジしてみてください。
本音を伝えるにはエネルギーが要りますが、不安なときには、ぜひ私たちカウンセラーを頼ってみてくださいね。
(完)