自分への悪口を聞いてしまった時

相談者名
メンメン
よろしくお願いします。

こちらのサイトを拝見して、人の発言や態度、顔色
が気になったりそれで傷ついたりするのは投影の影響が
強いということは解ったんですが、
実際に自分への悪口やネガティブな発言を聞いてしまった
時の心の対処法はどうのようにすればよいのでしょうか。

学生の時、クラスの数人から嫌われて
ヒソヒソ声で馬鹿にされた様な態度や
キツイ態度をとられたりした経験があるせいで人の話し声に
敏感になっているのか、元々耳がいいのか、
相手が聞こえてないと思う距離の自分に対しての会話も
聞こえてしまうことがよくあるんです。

面と向かって言われてるわけでは無いので聞こえないふり
をするんですが、
そのことで言い返したり怒ったりしたら、
人間関係がこじれたり自分が悪者にされるんじゃって不安があったり、
人間誰しも相手を恨んだり
憎んだり本当に嫌っていなくても愚痴や悪口やそれに
近い批判を言ってしまうことがあるのは解るし、
他人の感情を強制はできないことも解ってるけど、

やっぱり自分へのネガティブな発言をコソコソされてるのが
聞こえてしまったら傷ついたり怒りが出てくるんです。

自分と疎遠な感じの人ならそんなに悩まないんですが(腹は立ちますが)
それが一緒に遊んだりする仲が良い人だったりすると
自分のことを本当はどう思ってるんだろうって考えたり、
でも内容的に酷い暴言って訳ではないし、
もっと良いこともいっぱいしてくれたし、
って思い悩んだりでしんどいです。

こういう時って今まで良い事や優しくしてくれたこともあると
良い面だけ見て聞こえないふりをすればいいんでしょうか?

それとも自分の投影せいだと思って悩まないことがいいんでしょうか?

自分への悪口(や悪口とは言えない些細な発言、でも傷ついてしまう発言)
を聞いてしまった時、どうすればいいんでしょうか?

いい心の対処法があればお願いします。

カウンセラー
池尾昌紀
メンメンさん、こんにちは。
池尾昌紀と申します。
ご相談ありがとうございます。

メンメンさんのご相談内容を読ませていただき、本当によく心理学のことを理解されておられる方だなあ、と感じました。
最初に、すでにご存知とは思いますが、あらためて「投影」について書かせていただきますね。

「人の発言や態度、顔色 が気になったりそれで傷ついたりするのは投影の影響が 強い」と書いてくださっているように、投影という物の見方を使うと、自分の感情の動きや、自分の人間関係のパターンなどをよく知ることができ、人間関係を良くすることに役立つアプローチとして使う事ができます。

投影とは、自分の心のにある感じ方やもの見方を、外側のものや人に映し出すことをいいます。

例えば、犬を見て「かわいい」と感じる人、逆に「怖い」と感じる人、その反応は人それぞれです。その元になっている心理は、小さい頃の経験等にその大元があり、「かわいい」と感じるのは犬とたくさん遊んで親しみをもった体験があるから、「怖い」と感じるのは犬に噛まれた体験があるから、といったように、説明されたりします。

人は、誰もが同じものを見ても、同じ感じ方をするとは限りません。
この犬が優しい性格なのか、攻撃的な性格なのかは関係なく、見る人の心にとって、犬がどのような存在だったか、によって、犬の感じ方が変わってしまうわけです。

厄介なのは、自分ではどのように投影しているのか、自分ではわかりにくい、というところにあります。無意識に投影をしてしまうので、本人は投影していることに気がつかないことが多いのですね。ですから、実際に投影をしているケースでも、問題は自分のものの見方にあるのではなく、外に問題があると感じてしまいます。
人によって得意なタイプ、苦手なタイプというのが違うのはこうした「投影」の作用で起こってくる場合があります。

メンメンさんが書いてくださった、人の言動が気になるのは投影の影響については、こうしたことを指すと思いますが、言われる側の立場での見方をしてくださっていますよね。
では、悪口を言う立場の人はどうなのでしょう。

投影の考え方をすれば、悪口を言う人にもあてはめてみることができます。
誰かのことを悪く言う、という場合、例えばその人に直してほしい何かがある、といったこともあるでしょうが、
ここでは、投影を使ってその心理を考えてみましょう。

例えば、普段は友達にやさしく接しられるのに、弱音をはかれたり、愚痴を言われたりすると、いつも嫌な顔をしてしまう自分がいたとしましょう。
投影とは、「自分の心のにある感じ方やもの見方を、外側のものや人に映し出す」という物の見方ですから、弱音をはいている友人に反応してしまういうことは、実は、自分の心の中に「弱音をはきたいという気持ち」があるからで、その気持ちを感じるのが嫌だ、認めたくないという気持ちがあるから、嫌だ、と思ってしまうと説明することができます。

相手の中に見えるものは、自分が感じている事。
つまり、結局は、悪口や嫌な顔をするなどの態度をしている側も、自分の心の中に同じものを持っていてそれを相手に映し出しているわけです。
それが悪口などの攻撃的な態度にでるということは、弱さなら、同じ弱さを自分の中に持っているのに、それを感じるのが嫌で攻撃してしまう。

メンメンさんのご友人がどのような悪口や自分へのネガティブな発言をされたのかはわかりませんが、このように、悪口等を言われ、いわば攻撃されように感じる時には、自分と同じ弱さや強さを、その人も持っていてそれを感じることが嫌なんだな、と思ってみる。
つまり、「私のことじゃなくて、あの人自身の弱さなんだ」と考えてみると、楽になれるかもしれません。

人は誰でも、誰かのことを嫌いたいと思っているわけではありません。
むしろ、誰かを嫌っている時には、そんな嫌っている自分を責めていることも多いのです。
このように、相手を嫌っているのではなくて、過去のだれかを投影しているだけかもしれない、という思いは、相手そのものへの批判を小さくし、自分を責める必要がなくなり、より相手への嫌悪感を減らすことに役立ちます。

そうは言っても、理屈でわかっていても、腹が立ったり、落ち込んでどうしようもない時はありますよね。

今度は、悪口を言われて、それがとても気になる時の心理をみてみましょう。
心の奥底に「自分は悪く言われて当然」というような自己嫌悪があり、それを感じるから苦しくなる時があります。
こうした人は、普段感じていなくても、何かあるごとに、自己嫌悪から、自分を攻撃してしまっていることが多いのですが、悪口のような自分への攻撃はそれを証明することになるので、「やっぱり私は悪かったんだ」と自己攻撃の格好の材料にしてしまいます。

けれども、こうした自己嫌悪や自己否定感、そしてそこからくる自己攻撃は、ある意味、誰にでもあって当たり前の感じです。
また、心の奥底にあるものが原因であることが多いですから、それをなくしていくのは誰にだって難しいことなんですね。
ですから、一度にやってしまうことは無理なので、すこしずつやっていこう、と思ってみることが大切です。

こうした、自己嫌悪や自己攻撃を解消していく有効な方法のひとつは「許し」であると言われます。
攻撃してきた相手を許す、だけでなく、自分自身を許してあげる。
けれど、その「許す」ことがまた、難しいので困ってしまうわけです。

ですから、最初は、おまじないを使ってしまいましょう。
簡単に許せないのだし、すこしずつやっていけばいいのだから、いきなり根本的なアプローチでいいわけです。
単に、許すことを言葉に出してみる。一種のおまじないみたいに思って、理屈抜きに唱えてみましょう。

例えば、悪口を言っていた友人に対して
「○○さんを私は許します」
と心の中で唱えてみます。
それを繰り返し唱えていると、憤りが消えていったりします。
これを繰り返していると、自分が悪いのではないかという自己嫌悪が出てくる時があります。
あるいは、最初から自己嫌悪、自己攻撃している場合もあるでしょう。
そんな時には
「私を許します」
と同じように繰り返し唱えてみます。

おまじないという表現をしましたが、心は実のところ、とても素直なものだと言われますので、繰り返し言葉にすることで、心の中にしみていく感じで、効果が出てくることも多いのです。
一度お試しください。

さて、冒頭に書かせていただきましたように、メンメンさんは、「投影」をはじめ、本当によく心理学のことを理解されておられます。
是非、次に、投影の元を癒すことにチャレンジされてはいかがでしょうか。

投影は、その感じ方の元になっているものがあります。多くの場合、親との関係と言われています。
例えば、厳しい父親に育ったために、厳しい感じをうける年配の男性が苦手、といった場合は、投影の元になっている父親との関係を改善することができれば、今後、父親を思わせるタイプの人とかかわった時に、嫌悪の感情を感じることがなくなります。

メンメンさんも書いてくださっているとおり、心理学では、「自分が変われば、周りの人も変わる」といいますが、それはこの投影という視点から見ているためです。周りの人を変えるのは難しいことですが、自分を変えることは自分の努力ですることができます。
困難と思われる人間関係も、今の自分が作り出している人間関係のルーツを見直すことで、大きく変えていく事ができるのです。

メンメンさんの「人の言動が気になる」という投影の元が両親との関係にあるのかどうかはわかりませんが、是非、この機会に、この大元に取り組んでみてはいかがでしょう。
ひとりでやるのは大変です。友人や信頼出来る方、カウンセラーを使ってもらっても結構です。
この話題を誰かに話ながら、整理していくことは、自分の心に大きな変化をもたらすきっかけになるかもしれません。

そして、メンメンさん。
この「人の言動が気になる」ということは、今は問題としてあなたを苦しめているかもしれませんが、実は、あなたのもっている才能とも言えるのではないでしょうか。
人の気持ちを察知するアンテナが敏感だからこそ、それが苦しい。
だとしたら、それだけ人の気持ちがわかる人なのです。
人の気持ちがわかる、というのは、今の社会で働く上では欠かす事のできない才能です。
自分が今より楽になっていけば、きっとこの才能が役に立ちます。
そして、その才能は、誰かの役に立つことに使うことができると思うのです。

是非、こうしたご自身の持つ素晴らしい力についても、思いをはせてみてください。

ご相談、ありがとうございました。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

名古屋を軸に東京・大阪・福岡でカウンセリング・講座講師を担当。男女関係の修復を中心に、仕事、自己価値UP等幅広いジャンルを扱う。 「親しみやすさ・安心感」と「心理分析の鋭さ・問題解決の提案力」を兼ね備えると評され、年間300件以上、10年以上で5千件超のカウンセリング実績持つ実践派。