音信不通の母親

相談者名
はな
40歳代女性です。
離れて暮らす70歳代の母親との関係に悩んでいます。

私は昨年夏、縁あって結婚しました。
仕事は相手が遠方に住んでいることもあり、結婚と同時に辞めました。
結婚話が具体化し始めた一昨年夏に、
紹介がてら相手の方と2人で帰省し、軽い食事をしました。
2時間ほど3人で世間話をして別れました。
ところが自宅に戻り、一度電話した後、
前触れも無く全く音信が途絶えてしまったのです。
何度電話しても留守電のままで応対しませんし、
メッセージを入れても返事が返って来ることはありません。

最後の電話では彼に対する印象は悪くないようでしたが、
少なくとも仕事を辞めることについては強く反対されましたので、
私の決意と彼が真面目で誠実な人であることなどを
2回手紙にしたためて送りましたがこれにも返信はありませんでした。

本当に気に入らないことは何なのか
第三者を介して考えを聞かせてもらおうにも、
一番親しくしていた実の妹(私の叔母)にさえ、
全く連絡をよこさないため、困ってしまいました。

こうなると直接の話し合いしかないと考え、
昨年の4月には事前に期日を伝えた上で自宅を訪ねましたが、
当日はその日を狙ったかのように一人旅に出ており、会うのすら拒否されてしまいました。
私もさすがにこの一件で対話はあきらめ、
その後の入籍や引越しは葉書で事務的な報告を済ませています。

実は私は父親を早くに亡くし、母一人子一人で育ちました。
思い返せば幼い頃よりきつい性格の母親とは合わず、ストレス続きの日々でした。
母親には腹を割った相談などした覚えはありません。
私自身は男性にも興味が持てず、結婚願望もありませんでしたので、
親しくお付き合いしている男性を紹介するのは今回初めてだったのです。

母親のことはしばらくこのまま放っておくしかないでしょうが、
彼女はいったい何を思っているのでしょうか。
専門家のお立場でアドバイスをいただけたら幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

尚母親は介護付きケアマンションに住んでいるため、
経済面、健康面での当面の心配はありません。

カウンセラー
大門昌代
はなさん、はじめまして。
今回担当させていただきます大門と申します。
どうぞよろしくお願いします。

お母様は、介護付きケアマンションにお住まいということですので、健康面などの心配がないのが、何よりです。
でも、連絡が取れなくなったのは、複雑な心境でしょうね。

会うことも拒否されているようですし、手紙にも返信がないということですから、「今は誰とも話したくない」と言うのが、お母様のお気持ちでしょう。
お母様が、いったい何を考え、何を思っているかは、お母様に聞くまでわかりませんが、一般的なお話しを交えつつ、カウンセラーという立場から、はなさんのお力になれればと思っております。

「いったい何が気にらなかったのだろう?」と、はなさんは思っておられるようですが、もしかしたら、気に入らないことがあったから連絡を絶っているわけではないかもしれませんね。

お母様に誰かがインタビューすることができたとしたら、「仕事を辞めることが気に入らない」とか「彼のここが気に入らない」とか、何か言われるかもしれませんが、本当のところは、そうではないような気がします。

もちろん、お母様に直接お話しを聞けるわけではないので、正確なことはわかりません。
ですので、一般的なお話しを交えつつ、はなさんのお気持ちが少しでも楽になるお手伝いができればと思っております。

人が、誰かと距離をとり、孤独を選択するとき、私たちは「引き籠り」と表現したりするのですが、これは怒りの表現方法のひとつだと考えることがあります。
怒りを表現する方法は色々あるのですが、一番わかりやすのが、「攻撃」ですよね。
「あなたが悪い!」と直接、誰かを攻撃するやり方です。
次に、何も言わないのだけど、「あなたのせいで、私の機嫌が悪いのよ」というのを、態度で表わす方法。
そして、お母様がとっておられる引き籠りというのも、怒りの表現方法のひとつとなります。
何かに怒っていて、そんな怒りの塊りになっている自分が、誰かと接すると、きっと相手を壊してしまう。
そう思うと、引き籠りになってしまいます。

また、引き籠ることによって、「私は怒っている」と言うことを、わかってもらおうともしているのです。

では、何にお母様は怒っているのでしょうか?
それは、彼のことや仕事のことではないと思います。
もし、そうなのであれば、直接的に文句を言うという形の攻撃をするのではないでしょうか。
でも、今回は「引き籠り」です。
と言うことは、今までのお母様からは、想像もつかないようなことで、怒っておられるのではないかと思うのです。
大半は、「私の気持ちをわかってくれない」と言うことで、人は怒ります。
その気持ちと言うのは、決してお母様が口にしてこなかった気持ちかもしれませんね。

はなさんの、お父様であるご主人を早くに亡くされて、お母様は頑張ってこられたことでしょう。
「きつい性格」とはなさんがお母様のことを表現して下さっていますが、それは見方を変えれば、弱音を吐きたくても、誰が助けてくれるわけでもないし、吐けなかったからかもしれませんね。
もしかしたら、お母様は今とても心細くなっておられるのかもしれませんよ。
でも、今まで言ってこなかっただけに、今更言えないのかもしれません。

まして、娘にきつく接してきたわけですから、その娘に対して「寂しい」「心細い」なんて、口が裂けても言えないのでしょう。
また、そんな風に思っている自分を誰にも見られたくないのかもしれません。
だから、音信不通という手段をとってしまっているのかもしれませんね。

それに、弱音を吐けない自立タイプの人は、そういう弱音を吐くと、誰かに迷惑がかかると思っていることも多いのです。

怒っているけど、そのわかって欲しい気持ちを口にしないという、とてもかわいくない方法かもしれませんが、そんなお母様を理解してあげようとされるのも、これから旦那様と家庭を築かれていく、はなさんの新しい挑戦になるのかもしれないなと思います。

寂しがっている、心細がっているのだとしても、はなさんの結婚に反対であると言うわけではないと思いますよ。
女で一つで育ててきたはなさんが、新しい家庭を築いていかれることを、きっとお母様も応援したい気持ちもあるはずです。
ただちょっと、恥ずかしかったり、どう心を落ちつければいいのかが、わからないのかもしれません。

返事はないかもしれませんが、時々は、手紙などで近況を報告されるといいかもしれませんね。
そして、トラブルはあったかもしれませんが、そんな中でも、はなさんがお母様に感謝できることがあれば、それも手紙に書いてあげるといいでしょうね。
「理解してくれている」「認めてくれている」と言うことが、お母様に伝われば、少しずつ怒りは収まってくるでしょう。

激しい怒りには、セット商品のように、悲しみがあります。
お母様が、表現してこなったであろう悲しみを、理解してあげると、お母様の気持ちも、少しは落ち着かれるかもしれませんね。

このたびは、ご相談いただき、ありがとうございました。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

恋愛や結婚、浮気や離婚など男女関係、対人関係やビジネス関係、家族関係や子育て、子供の反抗期、子離れ、親離れ問題など幅広いジャンルを得意とし、お客様からの支持が厚い。 女性ならではの視点と優しさ、母としての厳しさと懐の深さのあるカウンセリングが好評である。PHP研究所より3冊出版。