母の影響

相談者名
なつ
母の言葉に左右されてしまう自分が嫌いで仕方ありません。
昔から母親に人と比べられることが多く、身内が皆努力家で優秀だったこともあり、何をやっても「出来の悪い子」というポジションでした。
30間近になり、資格取得のために仕事を辞めて専門学校に通い始めました。模試で何度か良い点数を取ることができ、講師の方からもできると褒めていただけたのですが、その言葉もなんとなく信頼できず、家で母親に「私が馬鹿だから賢く生んであげれなくてごめんね」と言われては自分のふがいなさに泣いていました。
結局、一度試験に失敗し、やはり自分は馬鹿なんだと思って就職活動に励んだのですが、仕事が見つかりませんでした。そこで、以前やっていた派遣の仕事が大好きだったこともあり、その仕事に就こうとしたところ、母に「あれだけ勉強して派遣にしかなれないの?」と言われ、完全に自分を見失ってしまい、しばらくうつになっていました。
今は講師の方や、友人の勧めでまた勉強を続けているのですが、またうつになるかもしれないという恐怖もあって、試験に失敗することが恐ろしく、かといって自分に自信が持てるわけではなく、試験の日が近づくにつれてどんどん気が重くなっています。
さらに悪いことに、私はパッと見、自信に溢れていて、前向きに見えるらしいため、受験仲間からあれこれ相談を持ちかけられ、人のことばかり励ましていて、自分は何やっているんだという気持でいっぱいになってしまいました。
今も母からは「馬鹿でごめんね」と言われては落ち込み、身内と比べられては落ち込み……という日々が続いています。母に悪気が無いのはわかっているので、何も出来ないし、何かきつく言うと、「やっぱりお母さんが悪いのね」と一気に落ち込むので、何も言い返すことも出来ず、笑って聞いていることしか出来ません。
母との関係はこのままでいいんでしょうか?自信というのはどうやって持つものなんでしょうか?
カウンセラー
三島桃子
なつさん、はじめまして。今回担当させていただく三島桃子と申します。どうぞよろ
しくお願いいたします。

なつさんは今、資格試験を控えて勉強中なのですね。試験前はただでさえ不安を感じ
るものですが、お母さんとの関係やこれまでのいきさつもありますから、とても重い
気持ちになっているのではないかと思います。

お母さんとの関係、このままではなつさんにとってしんどいですよね。なつさんの気
持ちがラクになって元気が出てくるようにしていくために、何ができるかということ
を考えていきたいと思います。

まず、なつさんとお母さんの間には「癒着」があり、「供依存の関係」になっている
のではないかな、と思います。

心理学用語としての「癒着」というのは、本来別々の人間である二人が、心理的に
くっつきすぎている状態のことをいいます。母親と子どもの間では比較的よく起こり
ます。そして「癒着」があると、自然に「供依存の関係」になってしまいます。

「供依存」とは、お互いがお互いに寄りかかっている(依存している)状態のことで
す。一般的な母子間の供依存の例をあげますね。

母親は子供に過干渉になって「ああしなさい、こうしなさい」と口出ししたり、批判
するようなことを言ったり、「ちゃんとできるの?」などとやたらと心配したりしま
す。そうなってしまうのは、母親の側にいろいろな事情があります。例えば、我が子
に関わること以外に生きがいがないとか、自分もそうやって育てられたのでそうすべ
きだと思っていたり、事情は様々です。

また、子どもに必要以上に関わることで、「私は役に立っている」とか「私は良い母
親だ」と感じることを求めている部分があります。心の底では「私は何の役にも立た
ない人間だ」などと感じていて、でもそれを感じたくないので、子どもの存在を利用
している訳です。子どもに寄りかかって自分を支えている=子どもに依存している、
という状態です。

(ただ、母親自身は自分のそういう心理には気付いていないのが普通です。むしろ、
我が子のためを思ってあげている、という感覚です。)

また、子どもの側も、そういう母親に対して「うるさい」「しんどい」などと思いな
がらも、母親なしでやっていく自信も持てず、母親の言動に簡単に影響を受けてしま
います。そして、「お母さんがああ言ったから」と母親の意見で自分の行動を決めて
しまったりします。これは、うまくいかなかった時にお母さんのせいにできる、とい
う面があり、自分で自分の行動の責任を取ることから逃げているとも言えます。お母
さんの存在に甘えて依存しているわけです。

これが供依存、互いに依存している、という状態です。

さて、なつさんとお母さんの供依存の中身はどんなものでしょうか。もう少し詳しく
伺ってみないとはっきりしたことはわからないのですが、考えられることは、お母さ
ん自身が、「努力家で優秀」な身内ばかりの中で「自分は馬鹿だ」と感じていて、自
信がない状態だったのではないか、ということです。

そして、「馬鹿が私一人」ではつらいので、「あなたも私に似て馬鹿なのよ」と、な
つさんを自分と同じ立ち位置に引きこもうとしてきたのかもしれません。ただ、こう
いうことは無意識にやってしまうことで、なつさんが言うとおり、お母さんに悪気は
ないのだと思います。人間、状況次第では誰でもこういうことをやってしまうもので
す。お母さんが悪い人だということではないですよ。

また、なつさんの側も、感受性の強い幼い時期にお母さんのつらさや悲しみに共鳴し
(母子間ではよく起こることです)、「お母さんがかわいそうだ、何とか助けてあげ
たい、私がお母さんと同じ場所にいてあげることでお母さんが安心するなら、わたし
そうする」と、自らお母さんのニーズ(欲求)に応えた面もあるのだと思います。も
ちろんこれも無意識下で起こることで、特に幼い子どもにはよくあることです。

お母さんのニーズと、お母さんを助けたいというなつさんのニーズが一致した結果、
今の状況があるのではないかと思います。意外かもしれませんが、なつさん自身が
「私は馬鹿、できが悪い」ということを「選んだ」ということが考えられるわけで
す。

だとすると、お母さんに「私が馬鹿だから賢く生んであげれなくてごめんね」と言わ
れたり、身内と比べられたりする状況は、なつさん自身が望んだものを手に入れてい
る状況だという見方もできるのです。お母さんを悲しませないために、と幼い頃に望
んだものを、です。

ですから、今の状況を変えるためには、「なつさんが望んだこと=お母さんを助ける
ためなら私は馬鹿でいいという思い」を手放す必要があります。

手放すために理解してほしいことは、なつさんは十分お母さんを助けたということで
す。こういった幼い子どものやり方で親を助けることは、思春期までやればもう十分
なのです。思春期以降は、自分が一人の人間として成熟していくための選択をして
いっていいのです。

なつさんは、実は身内のみなさんと同じく、「努力家で優秀」タイプなのかもしれま
せんよ。といっても、お母さんが馬鹿というのではなく、お母さんはタイプが違うだ
けなのだと思います。馬鹿な人間も、出来の悪い人間もこの世にはいません。いろん
な人間がいることに対して、時に私たちは「馬鹿だ」とか「できが悪い」とかついつ
い判断してしまうだけのことです。

目指している資格に対しては何か思いがあるんですよね?そのご自分の思いを信じて
ください。また、資格試験のことでうまくいかないことがあったとしても、以前され
ていた派遣のお仕事は大好きだったんですよね?何かの仕事を「大好き」と言えるこ
とって素晴らしいと思いますよ!誰が何と言おうと、そのお仕事をしたかったらやっ
ていいのです。

なつさんが「私は馬鹿でいい、できが悪い子でいい」という思いを手放すと、供依存
関係は解消されますから、お母さんは今ほど「馬鹿でごめんね」などということを言
わなくなると思いますよ。また、もし言ったとしても、なつさんが今のように強く影
響を受けてしまうことはなくなります。

なつさんがこれからどう生きていきたいかを本当に「望む」ことができたら、その望
みはかないますよ!

今回書かせていただいたことは、心の中のかなり深い部分のお話ですので、よくわか
らないところや疑問などありましたら、初回無料の電話カウンセリングをご利用して
みてくださいね。

なつさんのこと、応援しています!
ご相談ありがとうございました。

三島桃子

この記事を書いたカウンセラー

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