| みさとさん、はじめまして。今回担当させていただく三島桃子と申します。どうぞよ ろしくお願いいたします。
 みさとさんは高校1年生なんですね。今回は勇気を出して相談してくださったのではないかと思います。ありがとうございます。みさとさんの力になれるように私もがん
 ばりますね!
 みさとさんは >私は人との間に壁を作ってしまいます。親友と呼べて>いた子にも私から壁を作ってしまい今は、一緒にいても
 >すごく気まずい雰囲気になってしまうのです。なので、
 >今はとうてい親友とも呼べなくなってしまいました。
 >その子だけでなく中学校のときの友達でもそうです。
 >いつも一緒にいましたが、心を開く時は開くのですが、
 >それも稀です。だから今では私だけ連絡をとっておらず
 >すごく寂しいです。
 と書いてくださっていますね。高校1年生と言えば、思春期の真っただ中。段々親と距離を取り、親以外の人との結びつきを育てていって、やがて社会に出ていくための
 準備の時期です。そういう時期に友だちとうまくいかなかったら、本能的に「ヤバ
 い」という焦りも出てくるのが自然ですし、とても寂しかったり、悲しかったりする
 と思います。
 実は、私も中学生、高校生の頃、みさとさんと同じように人との間に壁を作ってしまうような状態でした。でも、私はそのことに自分で気付いていなくて、「何かおかし
 いぞ」と気になり始めたのは、24歳ぐらいになってからでした。
 みさとさんは、15~16歳の時点で気付いているわけですから、私から見ると、おっ、すごいな、と感じます。気付いている、ということはとても大切なことなんで
 す。自分の状態に気付くことができれば、もう半分ぐらい課題を乗り越えたようなも
 のですから、自信を持ってくださいね。
 でも同時に、気付いている分、気持ちはつらくなると思います。そして、自分のことを責めてしまうのではないでしょうか?「こんな私だからいけないんだ」とか。でも
 ね、人とうまく話せなかったり、心を開くことができないとしても、別にそれは悪い
 ことではないんです。人というものは、いろんな事情の中で、誰でもそんな状態に
 なってしまうことはあるんですよ。
 みさとさんの場合は、どんな事情があって人との間に壁を作ってしまうのでしょうね。その辺りを考えていきたいと思います。
 >壁を作ってしまう理由に人とうまく話せないことが>あると思います。
 >私と話していても楽しいのかな?
 >何話せばいいんだろう?
 >と思ってしまうのです。
 と、みさとさんは自分で書いてくださっています。的を得た分析だと思いますので、もう一歩分析を進めてみましょうか。
 壁を作ってしまうのはなぜ?↓
 人とうまく話せないから
 では、うまく話せないのはなぜ?↓
 「私と話していても楽しいのかな?」と思う
 さて、なぜ、「私と話していても楽しいのかな?」と思ってしまうんでしょう?このあたりがキーポイントになりそうです。
 「私と話していても楽しいのかな?」という不安な気持ち。この気持ちの裏には、「私なんかと話したって楽しくないんじゃないの?」という思
 いが隠れていそうです。
 「私なんか」という気持ち。これは、「無価値感」という心理です。自分には価値がない、と感じる気持ちです。「私にはいいところないし」「私なんかダメだし」「こ
 んな私が好かれるわけない」こんな感覚です。
 「私には価値がない」という気持ちを持つようになる場合、家族関係に理由がある場合がとても多いです。お父さんやお母さんとの関係の中で、いつの間にか「自分はダ
 メなんだ」と思い込んでしまうんですね。
 お父さんやお母さんが仕事で忙しかったり、何か悩みやしんどいことがあって、気持ちに余裕がない場合、ついつい子どもへの言葉がきつくなったり、あまりかまってあ
 げなかったりしてしまいます。そのことを子どもは、「自分は愛されていないみたい
 だ、きっと私はいい子じゃないんだ、価値のない子なんだ」と思い込んでしまうわけ
 です。
 これって誤解なんですよね。家庭によって事情はいろいろですが、大人の都合の中で、子どもが傷ついてしまうんですね。ただ、大人も人間、完璧ではないのです。や
 り方が下手だったかもしれないですが、一生懸命やっていたのです。
 もしかしたら、みさとさんもこんな感じの誤解を子どものころにしてしまったのではないでしょうか?記憶にはないかもしれませんが。
 何にしろ、「私には価値がない」というのは誤解なので、自分の中でこの誤解が解けていくようになっていったらいいですね。そのための方法を提案したいと思います。
 まずは、「欠点があってもいいんだ」と自分に言い聞かせてみてください。人間は誰でも欠点があります。みさとさんも、みさとさんのお父さんやお母さん、同級生や学
 校の先生、みんな欠点があります。でも、いいところもあります。みんな完璧な人間
 ではないけれど、足りないところを補いあって生きています。欠点があっていいので
 す。
 そして、「無価値感のある私でもいいんだ」「うまく話せない私でもいいんだ」ということも自分に言ってあげてくださいね。まず、今の状態の自分にOKを出してあげ
 ると、不思議なことに心が軽くなって、無価値感が小さくなっていきます。
 それから、同時に自分のいいところ探しもしてみてください。初めは思いつかないかもしれないですが、あきらめずに時々考えてみてください。
 私がメールの文面から感じるみさとさんのいいところは、まっすぐなところ、一生懸命自分と向かい合っているところ、知的な感じ、などです。がんばり屋さんなんだろ
 うなと思います。優しい、可愛らしい女の子の印象も受けますね。
 自分のいいところを見つけることができるようになったら、それはとてもとても大きな一歩です。心を開くこともできるようになっていくでしょう。
 それから、「何を話したらいいのかわからない」ということについて。 これについては、みさとさんが自分のいいところを見つけられるようになってきたら、多分少しずつ自然におしゃべりできるようになっていくと思います。といって
 も、今現在毎日学校に通う中でしんどい面もあると思いますので、応急処置を書いて
 おきますね。
 ポイントは、他愛もないこと、ちょっとしたことを話のネタにする、ということです。しょうもないこと、でいいんです。例えば、寝坊した、とか、宿題が難しかっ
 た、忘れ物をした、昨日は食べ過ぎた、などなど。そう、実はちょっとした失敗なん
 かが、いいネタになります。何か失敗したら、「ラッキー、ネタができた!」と思っ
 てください。そして、よかったらそれを話してみてください。案外話がはずむと思い
 ますよ。
 私が高一のころ抱えていた無価値感はものすごいもので(自分では気付いていませんでしたが)、もうとにかく自分なんかサイテーのサイテー、救いようがない、という
 感覚でした。まあ私にもそれなりに、そう思い込んでしまうような事情というのが
 あったんですね。
 でも、そんな私が、今は「私ってけっこういいヤツだよね~」なんて思っています。欠点もたくさんあるんですよ。でも、私は私、これでOK!って、思えます。以前の
 感じ方と比べると信じられないくらいです。そして、自分にOKを出せるようになっ
 た度合いだけ、心も開けるようになったし、人とのつながりができていきました。
 みさとさん、ちゃんと幸せになれますよ!私も遠くから見守っていますからね! 最後にオマケです。 私が大人になってから、ひとつとても後悔していることがあります。それは、思春期にあまり本、特に小説を読まなかったことです。私たちの心の悩みに対するヒント
 が、いろんな小説に書かれています。もっと小説を読んでいたら、私はもっと早く自
 分の無価値感と向き合うことができただろうなと思うのです。
 小説と言っても、夏目漱石とか芥川とかでなくていいですよ(笑)。今はみさとさんぐらいの年代の人向けの、読みやすく内容も深い小説がたくさんあり
 ます。オススメを一冊挙げておきますね。この本はどこの図書館にもあるはずです。
 みさとさんの通う高校の図書室にもあるのではないかと思います。
 『カラフル』 森 絵都(もり えと)著  理論社(文庫版も文春文庫から出ています)
 読んだ時、高校生の頃にこんな本に出会いたかったなあと思いました。心に響くものがあるのではないかと思います。
 オマケをもう一つ!ひとりでがんばり過ぎないようにできたらいいですね。スクールカウンセラー、保健
 室の先生、図書室の先生など、身近な大人に、みさとさんの悩みを話してみてくださ
 い。
 話した人がたまたま、みさとさんの思いをあまり理解してくれないということもあるかもしれませんが、一人だけであきらめてしまわないでくださいね。必ずわかってく
 れる大人はいますよ。
 長くなってしまってすみせんでした。この辺りで失礼しますね。 三島桃子 |