気持ちが離れてしまいました

相談者名
若紫
夫婦関係のことでご相談です。
主人に対する気持ちが醒めてしまったのですが、自分でもどうしたいのか分からずにおります。
主人は50才、私は43才です。
きっかけは、主人の借金です。
自営業者としてスタートした20年ほど前より、失敗した事業の精算から、その後のフリーランスとしての運転資金などなど、借金や自転車操業を重ねてきました。
はじめの10年ほどは親や兄弟が、その後は私が救済してしまっています。
これまで、住宅ローンなども含めると、累計2,000万円は私が肩代わりしています。
本人は、自分でどうにかできると思って消費者金融やカードローンなどから借り、やはりどうしようもなくなり、借金が露見し、周りが助けてしまう、というパターンを繰り返しています。
8年前に消費者金融をすべて私が精算し、親戚に借りたお金、住宅ローンなどもすべて私が負担し、もうこれっきり借金はしない、経済的に自立する、という約束をしました。
その後もフリーランスの仕事を続け、細々とではありますが、なんとかやっていると思っていました。
しかし、今年の初め頃、カードローンを借りていること、また、私が預けていた多少のお金も使い込んでしまっていることが分かりました。
本人を問い詰めてそれらを認めさせ、本人は自分でどうにかすると言ったものの、結局は私が返済するのと同じことになるので、一気に私が返済してしまいました。
相当腹が立っていたという理由もあります。
彼の言い分は、フリーランスの仕事が先細ってしまい、運転資金が厳しかった。
新しい機材(カメラマンです)の導入を私が止めたので、相談先がなく、どうしようもなくて借金した、とのこと。
言えずに辛かった。
悪かった。
とも。
結婚17年ですが、これまでは色々あったものの、お互いがお互いを大事に思い、楽しく、暖かく暮らしていました。
子供はいません。
しかし、今回のことで私が受けたショックは大きく、彼から離れていく気持ちをとめることができません。
ただ、ここで私が彼を見捨ててしまったら、彼は経済的に破綻します。
それが分かっていて見捨てることはできません。
幸い、私は仕事もあり、二人で暮らせる収入は十分にあります。
彼にこの気持ちを告白すべきなのか。
なかなか切り出せません。
また、気持ちが離れたから離婚したいという考えにはまだ至っていません。
どうしたいのか、どうしたらいいのか。
答えは出ないままです。
カウンセラー
池尾昌紀
若紫さん、こんにちは。
池尾昌紀と申します。ご相談ありがとうございます。

繰り返されるご主人の借金。
何度も何度も、借りた、返したのやり取りを続けてこられ心が休まるこ
とがなかった
のではないでしょうか。
本当に大変だったと思います。
ご主人は20年前から借金や事業の自転車操業を繰り返してこられたと
いうこと
ですから、結婚してからずっとその状態の中に身をおいてこられたのだ
と推測
されます。
結婚して17年、その長い間、よくぞがんばってこられたとまず、その
ことを
感じました。

でも、これまでなんとかやってこれた、そんな時にまた新たにご主人の
借金が
発覚されたとのこと、いくら、これまでがんばってきた若紫さんとはい
え、もう
これ以上続けて行けないと思われるのも無理からぬことと思いました。

けれど、それでもご主人とのこれからを迷われておられるのは何故なの
でしょう。
若紫さんが書いておられるように、経済的にご主人が破綻するからとい
う理由だけ
なのでしょうか。

それを考えていくのに、はじめに
ご主人がどのように思っておられるのか、それを見ていきましょう。

借金を重ねるという行為をする人は、一見、お金にだらしがないルーズ
な人と
思われますが、そうした人は、「自分に価値がない」ように感じ
だから、「自分は幸せになる資格がない」と思って
自らに罰を与えるように、苦しい選択をしてしまうことがあります。
その行動は人によって様々ですが、例えば、借金を重ねる、報われない
恋をする、
浮気をするといったことがあげられます。
どれも、行動は違いますが、その心の底にあるのは、
「自分には幸せになる価値がない」という無価値観なのです。

もし、ご主人がそう思っておられると仮定したら、
若紫さんは何か思い当たる節がありますか?

結婚して17年。その17年前のことを思い出してみてください。
若紫さんは、どうしてご主人と結婚されたのでしょうか。

ご結婚された当時、すでにご主人は事業に失敗され、失敗した事業の精
算をされて
おられたのだと思われますが、どうして、そんな状態のご主人と結婚を
決意された
のでしょう。

当時のその思いがなくなってしまったから、悩んでいるんだ、と思われ
るかもしれ
ませんが、あえて、その理由を紙に書き出して、具体的に目に見える形
にしてみて
ください。
その原点を振り返った時、頭でわかっていると思っていたことでも、改
めて気がつく
若紫さん自身の思いが見えてくると思うのです。

若紫さんは、とてもがんばり屋さんだとお見受けいたしました。
夫婦二人が暮らして行けるのに充分と書かれたように、また、これだけ
の額の
借金の肩代わりができるくらいに、収入を得られておられることから、
それに見合うだけのお仕事をされ、活躍されておられるのだと思ったの
です。
また、なにより、これまで、どんなに大変な状態でもご主人を見捨てず
支えてこられた。
これは並大抵のことではありません。
愛情もさることながら、ご結婚前から、身を削ってでもがんばるタイプ
の方なのでは
ないでしょうか。
そういう方は、自分が真に大切に思う人が困っている時には、
「よし、私の力で助けてあげよう」と、持ち前のがんばりを威力を発揮
することが
あります。

若紫さんがご結婚を決意された理由のひとつは、
僕が推測するに、
若紫さんがご主人を助けてあげたい、そして共に幸せになりたいと
思われたからではないでしょうか。

もし、そうだとしたら、ここで考えていただきたいことがあります。
がんばり屋そうしたタイプの方は、心のどこかで、「自分には価値がな
いのだから、
がんばらないと認めてもらえない」と思っていることがあります。
だから、「誰かを助け」ることで自分の価値を高めようと思いますが、
その思いは、実は、「誰か私を助けて」という気持ちの裏返しなことが
あるのです。

若紫さんのご主人は、そんながんばり屋なあなたに安らぎを与えてくれる
存在ではなかったでしょうか。
結婚の理由のひとつには、きっとご主人には、借金があっても、事業に
失敗しても、
それをカバーしてありあまる「やさしさ」「安らぎ」という魅力があっ
たから
ではないでしょうか。

周囲から見れば、よくできた奥さんと、どうしようもない旦那、奥さん
がいるから
あの夫婦は成り立っているんだと思われているかもしれません。
けれど、本当にそうなんでしょうか。

僕には、心の底では「自分に価値がない」とお互いに思っている、とて
も似ている
ご夫婦のように感じます。そこには、恐らく、お互いに、生い立ちに関
わる理由が
あるのだと思いますが、
それを補いあえると思ったからこそ、ご結婚されたのではないでしょう
か。

最近の借金を一気に返済してしまったことについて、「腹が立ってい
た」と
書かれておられますが、それは、ご主人を救えなかったという
「自分への怒り」です。

そうでないなら、どうして、こんなご主人を見捨てて去って行かないの
でしょう。
周りの友人から言われませんか?。なぜいつまでもあんな人と一緒な
の、と。

若紫さんは、最近のご主人のいいわけを、ご自分でこう書いておられま
す。
「相談先がなく、どうしようもなくて借金した、とのこと。言えずに辛
かった。」

相談先がなく
言えずに辛かった

この言葉が、知らず知らずのうちに、若紫さんの心に刺さっているのだと
僕は感じます。
若紫さんは、ご主人を責めながら、自分自身を責めているのです。

相談してもらえなかった悲しみ。
苦しめたのは私だという悲しみ。

ご主人もまた、借金という不器用なSOSしか出せず、
愛する者を守れなかったという罪の意識に苛まれておられます。

でも、若紫さんにとっては、ご主人の「やさしさ」や「安らぎ」や
そして、存在そのものが自分を守ってくれることだったのではないで
しょうか。

もう一度、結婚した時の理由を書いた紙を読み直してみましょう。
今、お二人は、その原点に帰る時だと思います。
そして、そのことを、お互いに語り合ってください。
この原点のコミュニケーションを取る事が、現状を打開するカギだと僕
は思います。

若紫さんは、生まれながらにして、人を救うマリア様のよな深い慈愛を
もっておられます。
また、ご主人は、人にやさしさと安らぎを与えられる人です。
そんな二人が織りなす生活は、今の暮らしではありません。
僕は、必ず、お二人が本来あるべき夫婦になれると信じています。

機会があれば、また場を改めてお話しできたらと思います。
ご協力できたら幸いです。

ありがとうございました。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

名古屋を軸に東京・大阪・福岡でカウンセリング・講座講師を担当。男女関係の修復を中心に、仕事、自己価値UP等幅広いジャンルを扱う。 「親しみやすさ・安心感」と「心理分析の鋭さ・問題解決の提案力」を兼ね備えると評され、年間300件以上、10年以上で5千件超のカウンセリング実績持つ実践派。