昨今、年下上司の存在が珍しいことでもなくなってきているようです。前回の記事では「年上部下へのクレーム対応」と題しましたが、今回は年上部下から不満の言葉を受けたときの対応について考えていきたいと思います。
職場における不満の言葉というのはポジティブに向き合うと業務改善への一環として切り替えられることもあります。職場の業務改善はそこで働く人たち全員にとって有益になることでもあり、ひいては会社全体の利益にもつながっていきます。そういった意味では現場の不満を吸いあげて業務改善に反映していくことはマネジメントの役割としては重要になると思います。
ところが、年上部下からの不満となると、時にそれは部下の劣等感から引き起こされる言葉であることがあります。
●職場で感じる劣等感
中途採用で働く人が多い職場となると、それぞれの年齢や経験がバラバラになることがほとんどです。そうでなくとも、人によって仕事の得意・不得意は大なり小なりあることでしょう。本来であれば比べることのできない能力や技術、知識の量を人と比べてしまうことは誰にでもあるのです。特に年上部下の場合、仕事上の経験値はあるにも関わらず年下上司のもとで働いている、という構図ができ劣等感を抱きやすいようです。人によっては自慢話をして自らの劣等感を隠したり、上司への不満や欠点を言いふらして自分より劣っていることを示したり、直接上司を攻撃して相手に劣等感を感じさせたりすることもあります。
●年下上司が感じる優越感
一方で、年下上司は仕事上の経験値がある年上部下をさしおいて上司として就任しているという構図から優越感を感じやすいものです。実際、経験値以外の仕事の能力や適性を買われて上司として認められているわけですから、自分が他の人よりも勝っていると思うこともあるでしょう。この優越感からついつい横柄な態度をとってしまったり、他者への丁寧な応対に気遣えなくなってしまったりすることがあるかもしれません。このような態度をとることで他者との間にはっきりとした優劣をつけ、自らの立場を誇示するのです。その裏側には、「上司なのに頼れない、上司なのにそんなこともできない、上司なのに・・・」と周りから言われないように自分を大きくみせようとする心理がはたらいています。実はこれ、優越感の裏側で感じている劣等感でもあるわけなのです。
●優越感VS劣等感を超える
優越感を感じる年下上司がいると年上部下はより劣等感を抱くようになります。すると両者の争いは過熱する一方になってしまいます。優越感VS劣等感の土俵をどちらかが降りない限り永遠に争いは続いてしまいます。ここでポイントとなるのは争いをやめ本来の目的を思い出すことです。本来の目的とは会社の利益や貢献だったり部署やチームに課せられた役割や任務だったりするわけです。職場は個人の争いをする場所ではなく、個々の能力や技術、知識を総じて全員が一つの目標に向かって仕事を遂行する場所ですよね。無駄に争って個人のパフォーマンスを落とすよりも、最大限に自分の能力を発揮して全体のパフォーマンス向上へ力を注ぐ方が満足いく結果が得られるのは目に見えたことではないでしょうか。
●劣等感を刺激せず受け入れる
先に気づいた方が争いという土俵から降りたとしても相手はまた別の競争相手を見つけていつまでも争い続けているかもしれません。相手は変化せず職場への不満をつらつらと述べていたとしても、あなたにはその土俵へ後戻りせず前を向いて進んでいく力が試されます。いちいち劣等感を刺激するような言動は避けることが必要です。相手にも自分にも劣等感を感じさせない・感じないためには、あなた自身がもつ劣等感を解消していくことが解決の近道です。自分自身の劣等感を受け入れられたときに初めて相手の劣等感も受け入れることができます。すると、しなやかでぶれない軸をもった上司は信頼され、知らぬ間に味方がつくようになります。もっと上級者となると、不満をいう人をみても「もうしょうがない人たちだねぇ」と余裕をもって受け止めることができるようになります。ここまできたらもう怖いものはなくなるでしょう。
年齢に関係なく相手を尊重する気持ちをもって接することが職場の対人関係のみならず、ありとあらゆる人間関係において大切になることかもしれませんね。