凛とした私になるには

相談者名
みけ
初めまして.いつもこちらの相談一覧を拝見している大学生です.今回ご相談させて頂くことは鬱な内容になりますが,それでもよろしければお付き合いお願い申し上げます.

素朴な疑問.どうして亡くなった方の言葉というものは一年経っても忘れられないのでしょうか.それは私にとって.人格や思いを否定されたような内容なのに、それでもどうして忘れないのでしょうか.忘れられないその言葉に表された人こそが,私自身だからなのでしょうか.それとも,何か別の理由が隠されているのでしょうか.

すみません.最初から変な話をして…実は去年母が他界しまして,それからずっと上記のことで悩んでいます.最近では急に虚無感に襲われて悔しいような,許せないような,哀しいような…とにかく変な気持ちになります.たまに消えてしまいたくなります.次また誰か大切な人が亡くなったら,私は耐えられるのか…今はまだ情緒不安定です.

母の言葉は私の行動や思考に影響しています.母の言うように,私の悪い点を見た友人は私を腹黒くて冷たい人間だと思うのではないかと卑屈に捉えてしまいます.別に人を騙したい訳でもないのに,騙しているような気持ちです.自己犠牲するタイプの子にも引け目を感じます.私が自己中心的でずるい人だからかもしれません.人の優しさや温かさに触れると泣きそうになります.人を思いやれるようになりたい.優しくなりたい.
もともと,自分の良い点は自分で判断してはいけないと小さい頃から思っていました.昔はもう少し自信があったのに今はもうありません.思えば私は昔から褒めてくれる時の人の笑顔が好きでした.それが転じていつしか承認欲求となり,人からよく見られたくて「いい子」であり続けようとしていたのかも….私は,人に,母に認めてほしいという気持ちが強いのです.

母は普通に優しかったです.家族が好きです.友人にも恵まれました.だからこそ,私はこの鬱々とした感情や自己嫌悪と和解して前に進みたいです.人を受けいれ,認められるようになりたい.そして,自分を受け入れられるくらい柔軟で飾らない,凛とした女性になりたいです.そのためにはどこから改善するのがよろしいのでしょうか.

客観的に書けているか不安ですが,よろしければ助言をお願い申し上げます.
それでは,長文乱文ながらここまで読んで下さりありがとうございました.

カウンセラー
大塚亘
みけさん、はじめまして。

今回担当させていただきます、大塚亘と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。

みけさんの文章を拝見して、私は、次のような感想を持ちました。

大学生という若さなのに、冷静に自己分析されていて、ご自身をとても客観的に把握
されている、そして、周りへのやさしさや配慮も素晴らしい

ということです。若いからというのはあまり意味がないかもしれませんが、少なくとも
私大塚が昔大学生だったときと比べると、私は何も考えていない能天気な人間で、未成熟
でしたので、みけさんの素晴らしさや、大人としての成熟さが分かるのです。

さて、みけさんは、亡くなられたお母さんの言葉に影響されていらっしゃる、そして、

>それは私にとって、人格や思いを否定されたような内容なのに、

と書いてくださいましたので、なにかネガティブな言葉を、お母さんは言われたようですね。

子供にとって、親は絶対的な存在です。特に、10歳ぐらいまでの時代は、家と学校が自分の
ほぼ全世界で、とても狭い世界に生きているので、親の言葉や態度は、子供に非常に
大きな影響を及ぼします。

我々人間は、生まれたばかりの時は、みな純粋無垢の存在ですが、育児をしてくれる親の
影響を受けて成長していきます。

ここで想像してほしいのですが、親が子供を虐待する家があったと思ってくださいね。
そして、2歳や3歳ぐらいの、まだ何もできない、物心もついていないようなときに、
泣き止まないという理由で、いつも子供に手を挙げて罵倒していたお母さんがいたとします。

そのお母さんは、「うるさい!」、「黙れ!」、「いい加減にしろ!」などど暴言を言って
いたとします。子供はもちろんかわいそうですが、みけさんは既に大人なので、ちょっと
大人の視点で、子供ではなく、「お母さんの心理」を想像してみてください。お母さんが
子供を虐待しているとき、お母さんはどんな気持ちなのでしょうか。

虐待をして心の底から楽しい!という人は、まずいないと思います。これは理解
できますよね。そうすると、虐待しているお母さんは、お母さん自身が不満や不安、
怒りや悲しみなど、ネガティブな心理状態であったはずです。

例えば、夫婦の仲がとても良くて、経済的にも裕福な家庭に子供ができたとします。そして、
お母さんはいつも幸せを感じていたとしたら、「今日は虐待しよう!」と思うでしょうか。
思うわけないですよね。

つまり、虐待をするお母さんの中には、不満や不安などネガティブな感情があり、そして、
想像してほしいのですが、このお母さんに「自信」はあるでしょうか。もちろんないですよね。

例えば、子供がまだ小さいのに、夫が浮気を繰り返していて、しかも、生活費をほとんど
家に入れてくれなかったとしましょう。お母さんの心の中に、夫に対する不満や怒りが
溜まり続けます。

そして、大きく溜まってしまった怒りが原因で、ついに八つ当たりで子供を殴ってしまったと
します。このとき、お母さんは子育てに「自信」がつくでしょうか。もちろん逆で、
八つ当たりをするたびに自信がなくなっていき、そして、八つ当たりをしてしまう
自分自身を嫌い、自己否定してしまいます。

さて、上記は少し極端な例ですが、子供を否定する親というのは、実は、裏を返すと、
多かれ少なかれ、

親が自分自身を否定している、親が自己嫌悪している

のです。そして、みけさんは虐待はされなかったかもしれませんが、この構図は、
みけさんと、みけさんのお母さんとの関係にも、当てはまるのではないでしょうか。

客観的に、みけさんのお母さんに、母親として、妻として、大人として、自信があったか
どうか想像してみてください。

もちろん、人間には自信のある人と自信のない人の2種類しかいないわけではありません。
自信のなさの程度の問題もありますし、この分野は自信があるけど、この分野は自信がない
など様々なわけですが、私は、みけさんのお母さんにも自信のない部分が必ずあったと
思いますが、いかがでしょうか。

>忘れられないその言葉に表された人こそが、私自身だからなのでしょうか

これは違います。親が自己否定していると、それを子供に言いたくなるのです。しかも、
親のプライド、メンツがありますので、素直に「お母さんは自信がないの」などと子供に
言うことができません。

逆に、「もっとしっかりしなさいよ!」などど子供を否定する言動をすることで、お母さん
自身の自己否定を表現してしまうことが多いのです。その心理は、虐待するお母さんの
たとえ話しでご理解いただけるでしょうか。

>それとも、何か別の理由が隠されているのでしょうか.

お母さんが、自分自身を否定していた部分があったことは間違いないと私は思います。
子供は、当たり前ですが、親を親としてみますので、親に成熟していない部分があることや、
親の中の自己否定に気が付かないことが多いのです。

>最近では急に虚無感に襲われて悔しいような、許せないような、哀しいような…とにかく
変な気持ちになります。たまに消えてしまいたくなります

これだけネガティブな感情を感じられているということは、みけさんに対するお母さんの
否定的な言動は一回や二回などではなく、とてもたくさん、しかも長期間あったのでは
ないでしょうか。

>私は、人に、母に認めてほしいという気持ちが強いのです

お母さんに認められなかった程度が強ければ強いほど、お母さんに認められたいと
思うのは、人間としてとても自然なことだと思います。

これだけたくさん否定され続け、しかもその原因がお母さんの自己否定にあるのに、
みけさんは、

>母は普通に優しかったです。家族が好きです.

と書いてくださっています。「消えたいくらい」つらい感情を抱えながらも、それでもまだ
お母さんを否定せず、愛そうとしてくださっています。

みけさんは、どこまで愛情深い方なのでしょうか。大きな心の器を持ち、成熟した大人の
精神を持っていないと、この状況でお母さんを愛することはできないと思いますよ。

どうですか?みけさんの偉大さがご理解いただけるでしょうか。冒頭に、私は、みけさんは
素晴らしい、大人として成熟されていると書きました。その理由をご理解いただけたで
しょうか。

>私の悪い点を見た友人は私を腹黒くて冷たい人間だと思うのではないかと卑屈に捉えてしまいます

お友達に、「みけさんは、腹黒くて冷たい人間だね」と言われたことがありますか?
多分ないと思います。それは、腹黒くて冷たい人間ではないからです。

>自分を受け入れられるくらい柔軟で飾らない、凛とした女性になりたいです。そのためには
どこから改善するのがよろしいのでしょうか

改善する必要はないと私は思いますよ。なぜなら、今まで述べてきた通り、既にみけさんは
大人で成熟した精神を持ち、自分を客観視できる冷静さを持ち、周りへの気遣いや配慮に
優れているからです。どこも変える必要はないと思いませんか?

問題があるとするならば、お母さんの自己否定が原因の、みけさんへの否定的な言葉を
みけさんは素直に受け取ってしまい、みけさんが、自分自身が良くないものであるという
誤解をされていることです。これは完全な誤解であり、もともとみけさんは素晴らしい方
だったのです。

既に素晴らしいので、改善する必要はないと私は思いますが、カウンセリングなどで今までに
溜めてきたネガティブな感情を吐き出し、徐々に誤解を解いていけば、自然と、

>人を受けいれ、認められるようになりたい、そして、自分を受け入れられるくらい柔軟で
飾らない凛とした女性になりたい

という、みけさんの願いが叶うと思いますよ。

読んでくださり、ありがとうございました。

大塚亘

この記事を書いたカウンセラー