心の理論とは、他者の心の状態などを推測する心の機能のこと
心の理論とは、他者の心の状態などを推測する心の機能のことを言い、4歳~7歳ぐらいで身につけます。
心の理論は、他人をおもんばかるのに必要な機能ですが、自らの心の中にある様々原因で妨害されてその機能が働かなくなることがあります。
今回は、首相夫人の言動を例に、どうしてそのようなことが生じるかのお話をします。
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心理学の理論に「こころの理論」というものがあります。
心の理論の簡単な課題の例を挙げてみます。
あなたはAさんとBさんの行動を観察しているとします。
AさんとBさんは、後で食べるおやつを、一緒に家の中の緑の戸棚にしまいました。
そして二人とも外出しました。
しばらく経って、Aさんが外から戻ってきます。Aさんは先ほど緑の戸棚にしまったおやつを赤の棚に移します。そして用事を思い出してまた外出します。
それから少しして、今度は、Bさんが外から戻って来ました。
Bさんは、先ほどAさんと一緒にしまったおやつを食べようと思ったとします。
さて、Bさんは緑の戸棚を開けるでしょうか、赤い戸棚を開けるでしょうか。
子供にこの課題を与えると、4歳ぐらいまではを赤い戸棚を開けると答えます。
自分が見ているので、Bさんも同じように冷蔵庫におやつが移ったことを知っていると思うのです。
一方、子供の年齢が4歳を過ぎてくると、徐々に緑の戸棚を開けるという答えが増えてきます。そして通常、7歳ぐらいになるとほぼ全員が緑の戸棚を開けると答えます。
これは、Bさんがおやつをうつされたことを知らないので、おやつは緑の戸棚にあると思っているという、Bさんの心を推測することができるからです。
心の理論とは、他者の心の状態などを推測する心の機能のことを言い、この例では、おおよそ7歳ぐらいになると、私たちは心の理論を持っているということになります。
先に挙げた例のような単純な課題では、私は当事者ではなく観察者なので何の影響も受けずに、ある年齢になると備わる心の理論を使うことができます。
しかし、さらに複雑な課題になったり、自分が当事者になったりすると、様々な妨害を受けて人の心をおもんばかることができなくなってしまいます。
そして、問題を生じさせたり、自らが問題を抱えこんだりしてしまいます。
その妨害の多くは、自らの心の中に源があります。
こうあるべきだという強い観念やルールがあったり、何らかの罪悪感があって状況や周りを見れなくなってついつい自分を見てしまったり、自分の価値を受け取っていなかったり、自分が経験したことで判断してしまったりなどが自らの心の中にある妨害の源になります。
さて、あくまでも報道にもとづいてのことですが、最近世間を騒がしている首相夫人の行動を考えてみると、自分が与える他人への影響について、あまりにも過小評価し過ぎているのではないか、と思われます。
自分の発言や行動が、人の心にどのような影響を与えるかという自身の影響力を認識しておられないわけですね。
自分の行動や発言がそんたくされ、しんしゃくされる可能性のあることは周りから見れば明らかなのですが、ご本人にはそんな意識はないように感じられます。
「私なんかがこんな行動をしても影響はないでしょ」とか「私なんかがこんな発言をしても問題にならないでしょ」と元々(つい最近も?)思っておられるように感じます。
このような心の動きから推察すると、首相夫人が感じておられる自己価値はとても低いのではないかと思います。
一般的に考えると、良家に生まれ、首相夫人にまでなる人が自己価値が低いなんてと思われるかもしれませんが、彼女の過去の様々な行動を見ると、「私は私でいいのですか?」と問いかけるような行動を多く取られているように思います。
「私は私でいいのですか?」という問いかけは、自己の価値への問いかけそのものですね。
もし自分の価値が十分にあると認識しているならば、このような問いかけは生まれませんし、影響力もかなりあると自覚した行動をとることになります。
人の心をおもんばかることがとても難しいことですが、自分自身の価値を受け取ることや罪悪感を手放すことで、人を見る行動や状況を見る行動ができるようになります。
首相夫人のことを批判するのではなく、他山の石として自分の成長に繋げれられればいいですね。
(完)