「怒り」を「意味のあるもの」として捉えていくこと
怒りを整理する4つ目のステップは「この出来事に意味と学びを探す」こと。
自分が怒ってしまった時。あるいは、誰かが怒っている時。それをネガティブなことと捉えるのではなく、何か意味があるのではないかと考えられると、怒りに関連する悩みは大きなプラス材料になります。
この出来事は学び、成長のチャンスかもしれません。また、怒りを別の有意義なことに使えば、大きなエネルギーとしても使えます。
怒りを悪いものとして捉えるのではなく、意味あるものと考えていくことで、怒りは良いエネルギーに変換されていきます。
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怒りの整理術と題して、怒りの心理の解説とその扱い方についてお伝えしていく連載です。
◎怒りを整理する4つのステップ
怒りの整理術は以下の手順で進めていきます。
ステップ1:怒りを否定せず受け入れてあげる
ステップ2:怒りで隠れている本当の気持ちを探す
ステップ3:怒っている相手を理解する
ステップ4:この出来事に意味と学びを探す
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怒りの整理術、4つ目のステップについても、前回と同じく、具体的な例として「いつも怒りっぽい上司が、ある時、理不尽なことであなたに怒り、謝りもしないで出ていってしまった。そのことであなたの怒りが止まらない」というお話から解説していきましょう。
◇怒りに意味を見出す
上司に対する怒り。
そこに何の意味があるのでしょうか。
まずは「怒りは自己攻撃」という視点を思い出してみてください
(「ステップ2:怒りで隠れている本当の気持ちを探す」参照ください)。
怒っている時は自分を責めている時です。
その元になっている気持ちは、自分に価値がないと思っていること。
しかし、本当に自分を責めなければいけないほど、自分は悪いことをしているでしょうか。
もし、この怒りの源が自分を責めていて、それが自己価値の低さからきているとしたら、自己価値を取り戻すきっかけにすることができます。
自分のいいところを探す。自分のがんばってきたことを見つけなおす。
自分を責めなくていい、自分の価値を感じられるようになるために、自分を振り返るチャンスに使うことができます。
次に、怒るのではなく理解していくことで新たな人間関係を作っていくことができる、ことに使うこともできます。
前回の記事「ステップ3:怒っている相手を理解する」では、上司にも仕方がない理由があって怒っているのかもしれない、と理解していくやり方をお伝えしました。
腹が立つ上司だ!と怒るだけでなく、理解していくことで、嫌悪・反発・喧嘩・競争等とは違う、分かり合える関係性を目指していけます。
怒っている上司に対して、あなた怒るのではなくて受け止めて、理解しようとすると、上司が何に困っているのか、部下として何かできることはないか、という視点を持てるようになっていきます。
争うのではなく、手伝う、コミュニケーションを取る、この視点でやるべきことをやる。
そんな風に仕事に取り組むと、仕事に対しての気持ちは楽になり、前向きになっていきます。
また、上司からしたら、あなたが敵意や嫌悪を抱いていないと感じていきます。
そのことで、怒りという表現をする必要がなくなったり、上司から今までとは違う声かけをされたりする可能性が広がります。
これはパートナーシップでも同じこと。上司をパートナーに、仕事を二人の関係性に置き換えて考えてみてください。
このように進んでいけば、怒り争う関係性から、一緒にやっていける関係性に変えていくことができるのです。
こんな風に変わっていった時、自分が学び、成長していることに気がつけます。
怒りに意味をみて、学び、成長に使っていくこともできるのです。
◇怒りのエネルギーを有意義なことに使う
私たちは怒りをネガティブなものと捉えがちです。
それは、怒りによって、自分のコントロールができなくなって、誰かを傷つけたり、
また、怒りによって、周りの人を不快にしたり、迷惑をかけたりしてしまうと思っています。
怒りが悪い使われ方をした場合には、そうしたよくないことが起こるわけですが、怒りという感情を大きなエネルギーとして捉えた場合、このエネルギーを有意義なことに使う方向に向けることができたら、情熱などのエネルギー源として使うことができます。
「怒りのあまり、誰かにひどいことを言ってしまいそうだ」
ではなくて、
「怒りのあまり、道に出てゴミを拾ってしまう」
という使い方にできるはず。
腹が立ったら、それを有意義なことに使ってみるチャレンジをしてみてください。
怒りを糧に素晴らしい活動や結果を残している方はたくさんいます。
大きなことをしようと思う必要はありません。
まずはすぐにできること、ゴミを拾う、部屋の片付けをする、食器を洗う、そんなところから始めてみましょう。
健康のためにジョギングに出かけてもいい。
勉強や仕事に打ち込んでもいいわけです。
こうしたことが習慣化されると、怒りは有意義なことに使えるエネルギー源として変換していくことができます。
怒りが出てきたら、何かいいことに使えないか、役に立つことに使えないか。
そんな発想を持ってみてください。
そして、行動に移してみましょう。
行動している時、行動の後に、怒りはどんな風に変化しているでしょうか。
体感してみてください。
しかしながら、今回のやり方を使う場合は「怒りを抑え込まない」ことを注意しながら行ってください。
この連載でお伝えしてきたように、怒りは抑え込むものではありません。
無理やり、このことには意味がある、学びだ、成長だ、と考えてしまうと、怒りを抑え込んでしまうことになります。
ステップ1:怒りを否定せず受け入れてあげる
ステップ2:怒りで隠れている本当の気持ちを探す
ステップ3:怒っている相手を理解する
こうした視点で怒りを整理しながら、この出来事に意味を見出そうと思ってみてください。
怒りは扱うのが難しい感情ですが、こんな風に整理していくこともできます。
大切なのは一人でやろうとせず、信頼できる友人などに協力してもらいながら、このステップを進めていくこと。
そのことで怒りという難しいことも整理しやすくなります。
今回の連載では、怒りの整理術としてこの4つのステップを紹介してきました。
4つのステップは順番にやらなければならないものではありません。
その時々によって、使えるステップは変わってきます。
その時、自分に一番しっくりくる、うまくいきそうなステップを使ってください。
怒りの整理術を使いこなせるようになると、仕事、パートナーシップ、人間関係など、誰かとの関係性が円滑になるだけでなく、自分が成長し、人生を豊かにしていくことができます。
是非、お試しください。
(完)