「何をしてもムダ」から抜け出すために
パートナーシップにおけるデッドゾーンでは、徒労感・無意味感でいっぱいになってしまいます。「もう何をしても無駄」のように感じるので、これ以上パートナーのために変化しようとは思えないのですが、これこそがデッドゾーンの罠なんです。ここを抜けて次に進むためのポイントをご紹介いたします。
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カウンセリングサービスの近藤あきとしです。
今日の心理学講座はデッドゾーンについてお届けします。
■パートナーシップは成長する
私たちの心は【依存⇒自立⇒相互依存】というプロセスを通して成長します。
これはパートナーシップにおいても同様で、2人が心理的なステージを移っていくことで関係性が成長していくのです。
最初はただ一緒にいられれば楽しくて、目と目が合っただけで笑顔になれるロマンスの時期からスタート。
次第に相手との違いを受け入れられずに腹が立って、顔を見れば文句を言いたくなり、口を開くとケンカが始まってしまう時代が来てしまいます。
しかしケンカが繰り返される時代が終わると一転、今度はお互いに干渉することも少なくなり、仲が良いように見えて、表面的には平和が訪れるのですが・・・
じつは水面下では、当人たちも気づかないようなところで相手を下に見ていたり、パートナーの欲求をそれとなく無視したり、静かに距離をとってみたりと、冷え切った雰囲気が漂っています。
この時期には2人の関係を続けることが難しくなり、別居や離婚、セックスレスなどの問題が多く表面化してきます。
■デッドゾーンの罠とは
このような心理的なステージを、自立の最終段階「デッドゾーン」と呼びます。文字通り「関係性の死」に向かっていることを示しています。
この状況では、本当に別れを選択する人もいれば、世間体や経済的なこと様々な理由で「別れられないけれど、パートナーに期待するのはもう止めよう」そう思って関係を継続する人もいます。
いわゆる「仮面夫婦」や「家庭内別居」など、同居してはいても会話は事務連絡のみ、といった役割だけで続く関係は後者の典型的なケースと言えます。
もちろん一度や二度の関わりで生じた「期待外れ」や「不満」でここまでの状態になるのでなく、
何度もやり直そうとチャレンジをして、どうにか相手の心にアプローチできないかと努力を積み重ねた末に、どこかで諦めたという時期があります。
そうして徐々に徒労感・無意味感・虚無感を抱えていって、最後にはもう何も感じられない無感覚の状態に心が陥っていくのです。
こうなると「もう何もしたくない」「努力しても無駄」と感じますから、「ここから変化を起こそう」とは思えないのが普通です。
しかし、じつはこの「変化したいと思えない」ことがデッドゾーンの罠なんですね。
■罠を抜ける鍵は感情のリスクに飛び込むこと
デッドゾーンを越えるには「『それだけは絶対にやりたくない』ことをする」必要があると言われます。
なぜなら、2人の関係が行き止まりで立ち往生しているのであれば、目の前の壁を越えてその先に行くには、今までとは全く違う関わり方が求められているからです。
だとすれば「今までやったことのないやり方」の中に次のステージへ行くための鍵があるということです。
「今さら相手のために変化なんてしたくない」がデッドゾーンの罠であるなら、ここから抜け出すためには、もう一度パートナーに向き合うことが必要なんですね。
例えば、あなたがつい相手の「面倒を見てあげる」「援助する」ことばかりしてきたのであれば、今度は「面倒を見てもらう」「援助してもらえる」ように相手にお願いすること。あるいは「援助の手を差し伸べない」ことが、再び愛しあうための道を開く突破口になります。
この通り今までの「やり方」を手放して、新しい「やり方」を受け入れることがデッドゾーンを越える鍵なのですが、変化と言うのはリスクも孕むものですから、感情的には抵抗がでてくるのが当たり前で「そんなの嫌」「無理です」と言いたくもなります。
しかし、ここで勇気を振り絞ってリスクに飛び込むことができると、新しいステージでは「面倒を見てもらう・援助される」ことも、「面倒を見る・援助する」ことも、どちらの立場にも自由に行き来ができて、どちらの喜びも感じられるあなたになれるのです。
そんなご褒美を受けとった新しいあなたをパートナーにプレゼントできるとしたら、感情的なリスクに飛び込むだけの価値はありそうです。
■再生するパートナーシップ
デッドゾーンは「関係性の死」と言いましたが、本当は「死=終り」に向かっているのではなく、まったく新しい関係性に生まれ変わる「再生」のために辿るプロセスのことなのです。
関係性が長くなれば何度も繰り返し訪れるのですが、自分の心とパートナーの心と、より深く向き合っていく勇気を持てた分だけ早く抜け出すことができるようになります。
そして危機を乗り越えていく度に2人の絆は強くなり、より成熟した関係性を築くことができるでしょう。
いずれまた2人に危機が訪れても、終りに向かう不安よりも「今度は私たちはどう向き合ったら良いんだろう?」という意欲を強く持てるようになります。
デッドゾーンを抜けた先には、そんな自由さと強い絆を感じられる関係性が待っているのです。
(完)