こんにちは 平です。
彼女はとてもかわいらしい女性です。
学生時代からよくモテた彼女でしたが、社会人になって初めてできた彼は10歳年上の自営業者でした。
彼女は地方から東京に出てきたばかり、しかも、社会人になったばかりでしたから、生活は毎月、ギリギリでした。
そんな彼女を、おしゃれなレストラン、優雅なホテルなど、それまで行ったこともないようなところにその彼は連れていってくれました。
それはまるで、新しい文化や人生の楽しみを教えてもらっているようで、そんな足長じさんのような彼を彼女はどんどん好きになっていったのです。
そして、28歳になった頃に彼からプロポーズされたのですが、なぜか、そのときには彼女の心はすっかり冷めていました。
田舎者で世間知らずだった彼女ですが、この彼に素晴らしい生活を体験させてもらっているうちに、すっかりそれに慣れてしまっていました。
どんなに素敵なところに連れていってもらっても、新しい刺激がなにもなくなっていたのです。
それに従い、「素晴らしい体験をさせてくれる彼」として見ていた彼の評価もだんだんと落ちていきました。
「彼自身はそんなにカッコいいわけじゃないし、大した男というわけでもないし‥‥」、と。
そして、「こんな素敵な場所では、もっとカッコよくてセクシーな男性と一緒に過ごしたい」などと思うようになっていたのです。
そうして、彼女はその年上の彼とは別れました。
別れてしばらく、彼女は何人かの男性に声をかけられたものの、華やかな暮らしを知ってしまったためか、心が動くことはありませんでした。
が、その彼女が久しぶりにときめきを感じる男性に出会いました。その彼は、貧乏な美大生でした。
彼女はかつて年上の彼にしてもらったように、この美大生にさまざまな体験をさせてあげるようになりました。
そして、そのたびに、彼がビックリしたり、喜んだりするさまを見て、昔の自分を見守るかのようにうれしい気持ちで見ている自分を感じていました。
しかし、「いずれ、彼もこの生活に慣れてしまったら、あのときの私がしたのと同じように、私のことを見かぎるかもしれない」と心のどこかで感じていました。
この思いは、あの年上の彼に対する罪悪感からくるものです。
彼女は、別れた彼から恨まれているのではないかとずっと感じていたのです。
そんな彼女に、私はこう提案しました。「元彼にもう一度、連絡をとってみて、感謝を伝える必要があるんじゃないでしょうかね?」。
すると、彼女は勇気をもって元彼に連絡をとり、きちんと伝えられていなかった感謝をあらためて伝えました。
あらためて話してみてわかったのが、元彼は「つきあい始めた当初から、いずれ自分は捨てられるだろうと思っていた」ということでした。
そして、実際にそうなってしまったけれども、「こんなにかわいい彼女とたくさんの素敵な体験をすることができ、人生の時間を有意義に過ごすことができた」と彼女に言ってくれたのです。
彼女が思っていた恨みなど、彼は感じていなかったんですね。元彼のおかげで、彼女はずっともっていた罪悪感を手放すことができました。
そして、今度はずっと聞くことのできなかった“恐れ”について、彼女は美大生の彼に聞いてみることにしました。
すると、彼は彼で、彼女によくしてもらうばかりで、自分はなに一つできず、これでは自分が見かぎられてしまうという不安をもっているということがわかりました。
また、自分の絵の才能にも限界を感じているとのことで、アートの道を求めるのはやめ、美術の教員という安定した道に行こうと考えていると彼は言いました。
そして、生活が安定したら、彼女にプロポーズしたいと思っている、と。
私たちは、自分がしてしまったことに罪悪感をもっていると、自分も同じように扱われるだろうと考え、怯えがちです。
その思いは、心のどこかに「自分は罰せられるのにふさわしい」という考えがあるときに湧いてきがちです。
そんな思いに苛まれるときは、「ほんとうのことを聞いてみる」ことが大切です。
が、そうするという選択が、私たちにはなかなかできないのです。
では、来週の『恋愛心理学』もお楽しみに!!