淋しさの果てに

弱い男性には魅力を感じられなくなった女性の話

こんにちは 平です。

さて、ご相談におみえになった彼女は、かなりの美人といえる女性でした。

バツ2だという彼女は、非常に競争しやすいタイプでした。

男性とはどうしても競争関係となり、そして、優秀な彼女はいつも勝ってしまうのです。

そうすると、弱い男性には魅力を感じられなくなり、一方のご主人は劣等感ばかりを感じるように‥‥。

そして、ケンカが絶えなくなり、別れたというのが1回目の結婚でした。

2回目の結婚相手のご主人は、彼女曰く、タフでありながら性格は温厚な男性でした。

この人ならと思って結婚しましたが、やはりさまざまな場面で競争が起きてしまいました。

そして、そのたびに彼女が勝ち、不満の募ったご主人は年下の女性との浮気に走り‥。

で、「性格のかわいらしい彼女と結婚したい」と、彼女にもっともダメージを与えるセリフを残し、去っていってしまったのです。

彼女は美しく、女性らしい見た目の人なのですが、性格はまさにアスリートといえます。

心理学でいうところの“タイガー・タイプ”の女性で、男性との間ではケンカが前戯になるようなタイプであるわけです。

見た目とは裏腹に性格は“オッサン”で、ワインでも飲んでいると女らしいのでしょうが、「家では焼酎です」などという言動も少なくありません。

彼女のご家族について聞いてみると、おばあちゃんの代から母子家庭だということがわかりました。

おばあちゃんは未婚で妊娠し、母一人子一人の家庭で、女手一つでお母さんを育てました。

おかあさんは「自分は幸せな家庭を築きたい」と願い、19歳のときにおとうさんと結婚。

しかし、そのおとうさんがあまり働かない男性だったために離婚し、やはり母一人子一人の家庭となったのです。

そんな環境で育った彼女にとっては、家に男性がいないのはいわば当たり前のことでした。

そして、おばあさんもおかあさんも、彼女と同じように美しい女性でしたが、内面はとても男性的であったようなのです。

彼女曰く、「うちの家系は、宝塚の男役」。

代々、「男には負けん」を合言葉にキャリアを積んできたわけです。

伝統的に男性は競争相手であり、勝たなければならない相手だったのですね。

それは、「男に負けるなんて、考えるだけでもおぞましい」というほど根深いものだったのです。

彼女は自分より弱い男性には興味がないのですが、自分が男性に負けるなんてプライドが許さないということから、結局、いつも、競争をして自分が勝てる男性としか恋をしてこなかったようでした。

そんな彼女に聞いてみました。

「では、男性との競争に負けてしまうと、あなたはどうなってしまうんでしょう?」

「そんなこと、考えたこともありませんし、考えられません」

そう答える彼女に、私はこう言いました。

「たぶん、あなたは負けてしまうと、その彼に恋をしてしまうんですよ。そして、その彼の子どもを産みたいと、きっと思うのでしょう。けれども、あなたは子どもはもちたくないと、心のどこかで思っていませんか?」

それを聞いた彼女は、大泣きしてしまいました。

おばあちゃんの代もおかあさんの代も母子家庭で、自分もまたそうなるのではないかと彼女は思っていたようでした。

自分の子どももまた、私と同じような淋しい生き方をするぐらいなら、生まないほうがよいという思いがあったようなのです。

そして、子ども時代に感じていた淋しさいまだに癒し切れていない彼女は、相手への期待があるときほど、攻撃してしまうという傾向があったのです。

「ほんとうにあなたは私を愛してるの?」というように。

でも、パートナーがもし、心から愛してくれていたとしたら‥‥。

そうしたら、彼女が長年にわたって抱えてきた孤独や淋しい世界は崩壊してしまいます。

彼女がいちばん恐かったのは、なじんできた自分の世界が壊れることだったのです。

では、来週の『恋愛心理学』もお楽しみに!!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。