欠点の存在以上に、欠点の扱い方が問題をつくる
みなさんは「欠点って魅力のひとつなんだよ」という言葉、聞いたことないでしょうか。
どんな人にも欠点がありますが、しかしついつい嫌ってしまうことって多くないでしょうか。自分が欠点を嫌うと「人もきっと同じように嫌う」という投影が生じ、なかなか愛される要素だとは思えなくなっていくものなんですね。
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今回の心理学講座は「魅力と欠点」について。
みなさんは「欠点って魅力のひとつなんだよ」という言葉、聞いたことないでしょうか。この心理学講座の読者のみなさんはら、一度は読んだことがあることかもしれませんね。
どんな人にも欠点があります。
ただ、みなさんは普段、自分の欠点をどのように見て、どのように扱っていますか。
かつて、私の師匠は「どんな人間にもプラスの面とマイナスの面がある」「いろんな自分があっていい」「人の愛情とは人の弱さに向かうものだ」と話してくれたことを思い出します。
しかし、かつての私はなかなかそう思えなかったんですね。むしろ欠点とは人から遠ざけるもの、隠すもの、修正すべきものとしか考えておらず、まさか愛されるとも思っていませんでしたし、欠点を忌み嫌っていました。
「自分がもっと〇〇だったら」「自分の欠点がなくなればいいのに(傷つかないのに)」と考えていて、まさか人に愛されるポイントになるとは気づいていなかったのです。まぁ欠点があっても傷つくときは傷つくんですけどね。
カウンセリングの現場でも「私のこの性格が嫌いなんです、すぐに傷つくし落ち込むし」というお話を伺うこともあれば、「私、〇〇がコンプレックスで恋愛に積極的になれないんです」というお話を伺います。
これはどこか自分の中で受け入れがたい要素があって、それを自分で隠したり、嫌うようになっているという状態です。
また、よくよくお話を聞いていくと、実は一般的には魅力や価値だと思えるものをコンプレックスとして扱っている場合もあります。
例えば、高学歴の方が、他人からお高く止まってると思われがちだと感じている場合や、超仕事ができる女性が「なんだかスキがない」と言われて傷ついている場合がそれにあたりますね。ある方は、自分の職業を異性に告げると目の色が変わる(それだけ立派なお仕事なのですが)ので、懸命に努力して就いた仕事だけれど、人に話さないようにしているようでした。
学歴も、仕事ができることも素晴らしいことなのですが、さまざまな経験の中で「自分が傷ついてしまう理由」になってしまうこともあるようです。
そのうち、自分にとっての魅力や才能ですら欠点のように扱ってしまうこともあるのかもしれません。
こうなると、もはや自分の欠点は、欠点なのか、良いものなのか、わからなくなってしまいますよね。
◎「欠点」に対して私たちが取る態度こそ、「欠点」という判断をつくる
私たちが誰でも持つ欠点ですが、どうしても「否定的」になってしまうことが多いのではないでしょうか。いわば、そんな自分を嫌ってしまうということですね。
しかし、心の動きをよく見ていくと、実は「欠点」そのものよりも、それを「自らが嫌い、否定的に扱っている態度・姿勢」が問題を作っていることが多いのです。
「欠点」って、どこか自分と周りの人とを比較することで「劣っている」と感じていたり、「他の人はできるのに自分にはできない」ことが対象になることが多いんですね。
どこか、人より劣っている、自分はできない、と思うことで、自分が不完全で、何かしら欠落した人間のように感じるようになるものです。
たとえば、先に書いた高学歴の方の例ならば、高学歴であることは紛れもなく努力された証だと思うのですが、高学歴であることが理由のように感じて、周囲の人との関係が円滑にならなかったり、他人から少し警戒されてしまうことで傷ついてしまい、「私は今のままですんなり受け容れてもらえない人間」と感じてしまうので、その高学歴の部分をいい風に感じられなくなっている、ということなんですね。
なにより、自分自身が他の人より劣っている欠落した人間だとしたら、これからどんな未来が待っていると想像するでしょう。
「人から嫌われる」「相手にされない」「バカにされる」「はれものに触るように警戒される」「幸せになれない」・・・いろんなネガティブな想像がうまれそうですよね。
だからこそ、自分の欠点を嫌いになりますし、直そうとしたり、隠そうとしたりしたくなります。
こういった欠点を嫌う体験は僕たちの幼少期にもあって、たとえば「○○ちゃんはよくできるのに、なんであんたはできないの」と、お友達と比較されながら怒られたことってないでしょうか。
もちろん、お友達だけでなく、兄弟、いとこ、親の過去(お父さん・お母さんの小さい頃はこうじゃなかった)と比較対象はいろいろなんですけどね。
すると、「今の自分のままではダメなんだ」「ダメなところを直さないと愛されないし受け容れてもらえない」と思いこんでしまうこともあるようです。
これが、「欠点があると人から嫌われる、受け容れてもらえない、愛してもらえない」という思い込みを作ることが少なくないんです。そして今も「欠点のある私は愛されない」と感じるようになるんですよね。
つまり「この世界で自分の欠点を最も嫌っているのは自分」という状態になるわけです。
ただ、この「誰よりも自分の欠点を嫌っている」状態をそのままにしておくと、それによる「投影」の影響で、「私と関わる人の多くは、私の欠点を嫌うに違いない」と感じるようになり、対人関係や恋愛などで問題を作りやすくなる要素になるので、なんとかしておきたいところですよね。
ではこの欠点と欠点を嫌う意識は、どのようにみつめ、扱うことで、手放せるようになるのでしょうか。
次回から、この欠点の扱い方についてお伝えしていこうと思います。
>>>『魅力と欠点の心理(2) 〜完璧主義にご用心〜』へ続く