傷だらけのヒーラー症候群
こんにちは 平です。
先週は、つい浮気をしてしまう女性の話を書きましたが、今週は繰り返し浮気してしまう男性の話をしてみたいと思います。
心理学的に見た人間のタイプの一つに、“傷だらけのヒーラー症候群”と呼ばれるものがあります。
このタイプの人の多くは、「自分が助けることができなかっただれか」がいたという幼児体験をもっています。
そして、そのときの心の痛みをなんとか埋めるために、補償行為として人を助ける仕事に就いたりする人は少なくありません。
小さいころ、おかあさんが病弱で、そのおかあさんを「僕が助ける」と、お医者さんを目指すというようなケースもその一つですね。
ご相談におみえになった彼の場合、小さいころ、助けたかったのはおとうさんの妹、彼にとってはおばさんにあたる女性でした。
おばさんは彼の家族と同居していたのですが、ひきこもり気味でずっと家から出ないような暮らしをしていたとのことです。
両親は共働きだったので、彼はこのおばさんとはなかよしで、よく面倒をみてもらいました。
おばさんにとっても甥っ子である彼は大切な存在で、まるで自分の子どもであるかのようにかわいがってくれたようです。
ただ、仕事もせず、パートナーもおらず、おばさんはただ遠慮しながら、兄の家族の世話になっていました。
それを感じていた彼は、子ども心にも、そのおばさんの淋しさをなんとか満たしてあげたいといつも思っていたわけです。
やがて彼は成長し、結婚して幸せな家庭を築きました。
が、あるとき、転勤した先に、おばさんを思い出すような女性がいたのです。
彼女は未婚で、どちらかというとサエない女性で、職場の人はあまり彼女に話しかけたり、なかよくしようとしたりすることがありませんでした。
一人での夕食は淋しかろうと彼はその女性を食事に誘い、そうしているうちに深い関係になってしまったのです。
そして、その後、彼のそのパターンは次から次へと発揮され、浮気を繰り返すこととなりました。
彼曰く、「だって、ほうってはおけないじゃないか‥‥」。
それはまるで、捨てられた子犬や子猫を家に連れて帰る少年のようなかんじでもありました。
そんな彼に、私は聞きました。
「しばらくおつきあいをして、その女性の淋しい心を満たしてあげると、もっと傷ついた女性が目につくようになったりしませんか?」
「そうなんですよ」
もっと傷ついた女性を見ると、彼はこうなるわけです。
「きみは半年ほど僕に愛してもらったけど、あの女性はだれにも愛してもらったことがないんだよ。きみより不幸なんだ。だから、僕は彼女のもとに行く。ゴメンね」、と。
つまり、彼のこれまでを振り返ってみれば、「女性を淋しさから救い出したい」と思っていたにもかかわらず、女性とつきあってはふるということを繰り返し、その女性は傷ついたり、男性不信を強化したりしていたわけです。
彼は女性を助けるどころか、“傷つける人”となっていたわけです。
その彼の心の奥を探ってみると、「自分はどの女性も救えず、結果的にいつも女性を傷つけてしまう毒のような存在だ」という自己概念があることがわかりました。
そのまた深層心理を探っていくと、子ども時代のこんな思い出が出てきました。
夕方になると、おかあさんが「ごめんね、遅くなって。淋しい思いをさせたわね」と帰ってきます。
すると、彼は楽しく遊んでもらっていたおばさんから離れ、おかあさんのもとに帰っていかなければなりません。
彼は、そのときのおばさんの淋しそうな表情や、おかあさんに遠慮している姿をいつも見ていました。
そして、おかあさんといるときはおばさんのことばかりを考え、おかあさんにウソをついているような気持ちになりました。
一方、おばさんと一緒にいるときは、おかあさんに申しわけないような思いをもっていたのです。
そんな話をしていく中で、彼はその感情が、浮気をしているときに妻と愛人との狭間で感じているものとまったく一緒だということに気づきました。
彼は心のどこかで、おばさんは一生結婚することがないだろうと思っていました。
実際はそんなことはなく、おばさんが結婚を決めたときは、ものすごく傷ついたことを思い出したのです。
このご相談のあと、彼はものすごく久しぶりでおばさんと会いました。
そして、その家族を祝福することで、心の中にあった長年のわだかまりが溶けたかのような気持ちになることができました。
それによって、ネガティブな浮気のワナからも解放されていくことができたのです。
では、来週の『恋愛心理学』もお楽しみに!!