カウンセリングでも多く寄せられる悩みの一つでもあるのですが、親子関係や恋人同士など、近い関係で相手のことを嫌いではないのに、「重い」と感じてしまうことがあります。
相手のことを「重い」と感じてしまう原因は、一つではないでしょうし、その問題を様々な角度から見ていくことができます。
どの切り口で問題を捉えていったとしても、意欲さえあれば、問題を解決していくことはできます。
今回の心理学講座では、「関係性が重い」という一つの問題を、4つの角度から解説させていただきます。
人との関係性で癒着の状態になると、お互いが息苦しくなり重いと感じてしまうことが少なくありません。
小さな子供と母親は、癒着していて当然の状態ですが、子供が成長しても同じ状態ですと、様々な問題が出てきます。
親子関係だけでなく、恋人同士の関係性でも癒着の状態になってしまい、相手と自分の境界線がわからなくなってしまうこともあります。
大切な人との関係性で、癒着状態になっていないかを、ふりかえってみるといいかもしれませんね。
母親が子供に関わりすぎてしまい、子供がうっとおしく感じるとか、彼が彼女と常に一緒に居たがるので、彼女が彼のことをうっとおしく感じてしまうなどのように、誰かとの関係がうまくいかないということはよく起こるようです。
実際にカウンセリングでも、ご相談が多いジャンルのひとつになります。
今回の心理学講座では、このような問題を、違った角度からシリーズで解説していこうと思います。
今回は、「癒着」という目線でこの問題を解説していきます。
癒着というのは、自分以外の誰かとの境界線がよくわからなくなってしまい、相手の問題なのに、自分のことのように感じてしまうような関係性です。
逆の言い方をすると、相手の好みは自分の好みになるという感じでしょうか。
子供が誰かとケンカしてしまったときに、子供が謝るのではなく、親が代わりに謝りに行ったりしてしまいますし、癒着状態ですと、一心同体という気持ちが大きくなりますから、子供に好きな人ができたのに、母親に教えてくれなかったりすると、ものすごく怒ったりもします。(例え子供が成人していてもです)
恋人同士だとすると、常に一緒に居たいというのは、恋愛初期のラブラブなときですとあたりまえかもしれませんが、お付き合いしてしばらくたっても、自分と同じように相手が感じてくれないと悲しくなってしまったり、彼が彼女にスケジュールを教えずに会社の飲み会になんて出かけてしまうと、ものすごく怒ったりします。
感覚的には、私と彼のスケジュールは同じだと思い込んでいるようなものです。
自分と相手の境目がなくなっているのが癒着の特徴です。
ですから、子供がケンカして謝らなくてはいけない事態になったとすると、まるで母親自身が悪いことをしてしまったと感じてしまうのです。
彼が彼女にスケジュールを教えなかっただけで、まるで彼女のスケジュールを狂わされたように感じてしまうのです。
境目がなくなっているので、相手のことと自分のことの区別が感情的につけられないのです。
もちろん頭ではわかっています。
相手と自分は、別々の人間であるということは。
でも、心の中で一心同体になってしまっているのが癒着なのです。
ですから、相手の言動にもいちいち何かを言いたくなります。
悪気はありませんが、相手を一人の人間として認められていないのです。
これでは、干渉されている側は、息苦しくなってしまいます。
干渉されている側の人としては、自分を自由にしてほしいということを説明したり、相手との物理的距離をとってみるなどの方法が必要かもしれません。(干渉している側は、なかなか認めてはくれませんけどね)
干渉している側。
もし相手に癒着しているなと思ったならば、「自分の問題に目を向ける」ということをするといいですね。
癒着しているときは、相手のことばかりです。
相手の問題ではなく、自分自身に何か取り組むべき問題や課題はないかな?と、自分自身のことに目を向けて、そのことにチャレンジしていく必要があります。
母親の場合ですと、子供に癒着して過干渉になってしまっているのは、夫との問題を見て見ぬふりをしているからかもしれませんし、何らかの不安から目をそらせているからかもしれません。
恋人同士の場合ですと、彼や彼女に癒着してしまうのは、本当は自分自身の親子問題に蓋をしているからかもしれませんし、仕事への不安や怖れから目をそらせているからかもしれません。
自分自身の本質的な問題や悩みから目を背ける手段に癒着を使っていることが、少なくありません。
誰かとの境界線があまりないなと感じたら、癒着解消に向けてすすめるといいですね。