「好き」という素直な気持ちを取り戻したい
恋愛がしたいなと思って素敵な人と出会ったのに、なぜか恋愛感情としての「好き」が感じられない。「私って好きになりにくいのかな?」そう感じると余計に焦ってしまいそうです。でもそこにはちゃんと理由があるんです。異性の親との関係を見直すことで、あなたの「好き」を取り戻しましょう。
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こんにちは。
カウンセリングサービスの近藤あきとしです。今日の心理学講座は私が担当いたします。
■好きになりにくいのはなぜ?
長い間恋愛をしていなかったり、今までパートナーができたことがないという方から、「好きになりにくいんです」「恋愛感情としての好きが感じられないんです」というご相談を伺うことがあります。
そういう人からは、好意をもって近づいてくれた人がいたのに気づけなくて、少し時間が経ってから「もしかして…」と気づいた。あるいは、何度かデートをしてから告白されたのに警戒心が先に立ってしまい「まだあなたのことを良く知らないのでごめんなさい」と反射的に断ってしまった。なんてお話も良く聞きます。
恋愛経験が少なくて、どうやってパートナーシップを進めて良いのか分からないという場合ももちろんあるとは思いますが、問題なのは意識では「恋愛したい」と思っているのに、心が「好き」のモードになっていないということです。
「人を好きになりにくい」のには、いくつか理由はあるのですが、今日はカウンセリングの中でも最も扱うことの多い、異性の親との関係について解説したいと思います。
■お母さんとの競争「エレクトラコンプレックス」
私たちは子供時代にどれだけ叱られても、親のことが大好きだったはずですよね。女の子はお父さん、男の子はお母さんが最初の恋人でした(そうは思いたくない人もいるかもしれませんが)。
すると女性の場合、お父さんをめぐってお母さんと自分のどちらが愛されるか、という競争をするんです。これを心理学では「エレクトラコンプレックス」と呼んでいます。なお、男性の場合は「エディプスコンプレックス」と言います。
この競争に勝つと、要はお父さんの愛を独り占めできた場合は「エディプスの勝者」となりますが、残念ながら負けてしまうと「エディプスの敗者」となってしまいます。
お母さんが嫉妬するくらい、お父さんが私を愛してくれた。そう自覚できている人は勝者です。逆にお父さんにあまり愛されなかった気がしたり、両親がとても仲が良くラブラブ過ぎてその間に入れなかったとしたら、これは敗者になります。
ただ今回のテーマに当てはまるのはちょっと変則で、「勝者なんだけど敗者」と言われるパターンなんです。
■お父さんから離れていったのは自分の方だった
小さい頃にお父さんの愛を勝ち取った「勝者」の女の子がいたとしましょう。お父さんは娘にデレデレで、2人は性格や嗜好もよく似ていて傍から見ても相思相愛でした。
ただ、子供は親の感情にとても敏感なので、お母さんの嫉妬や不安を繊細に感じてしまうことがあります。言うまでもなくお父さんのパートナーはお母さんですし、その子は娘として父親に愛されているだけなんですけれど。
その女の子は、私がお父さんを奪ってお母さんを孤独にさせてしまったと感じてしまうのです。特にお母さんが不安が強い性格だったり、ちょっと依存的なところのある人だと、なおさらこの傾向は強くなるようです。
お母さんを一人にさせてしまったことに罪悪感を感じた分だけ、女の子はお父さんから距離を取ろうとします。そしてお母さんに近づいて味方になろうとすることが良くあります。「勝者」だったのに自ら身を引いて「敗者」になったのです。
この時、お父さんから距離をとるのに大好きなままでは離れられないので、「もう好きじゃない」と思い込もうとします。すると、こんな心理が生まれます。
【最初の恋人であるお父さんを好きになってはいけない】=【恋人にしたいくらいの男性でも好きになってはいけない】
大好きな人を好きだと感じるのは自然なことですよね。でもそんな当たり前の感情すら抑圧してきたとすれば、嬉しい・楽しい・可笑しいなどの、他の感情も感じにくくなってしまうことは想像できると思います。
そんな人には、もしかしたら思い切り泣くこともできず、ただ我慢することしかできかった歴史があったのかもしれません。だとしたら自分が素直に「好きだ」と感じることもなかなか許せなくなってしまっても無理はないんですね。
■もう一度、愛を受け取り直すところから
「人を好きになれない」お悩みを聞いていると、実は今回のようなケースがとても多いことに気づかされます。
と言っても、記憶があるかないかくらい過去の話ですし、なかなかピンとくるものでもないと思います。それくらい潜在意識の深い部分がテーマの話ですからね。まずは頭で理屈を分かっておくだけで十分だと思います。
なおカウンセリングではどう扱うかと言うと、お父さんとの関係を見つめ直しながら、イメージワークでお父さんとのつながりをもう一度感じることを通して、愛されていた証しを見つけていきます。
抵抗を感じることも多いですが、向き合った分だけ前に進むことができますから、気がついたときには「好きな人ができていた」なんてことが多いんですよ。
(完)