パートナーがすぐに「バカにされた」と思いやすく、他人に腹を立てては激しい怒りをぶつけるそばにいるのはしんどいものです。
自分も加害者になったように感じますし、公共の場であれば人の目も気になり恥ずかしく思います。
このように「バカにされた」と思いやすい人は、自己愛が大きく傷ついていて、しかも、自分が本当に承認してほしい人には怖すぎてなかなか近づけないので、抑圧された「(もっと)愛してほしい」思いが、店員など、本来サービスしてくれてもいい後腐れのない人の、ちょっと「愛のない」つれない態度に刺激されて噴き出します。自己愛憤怒は、その激しさに閉口しますが、「愛がほしい」という「助け」を求める悲鳴のようなもので、誰にも認めてもらえない、わかってもらえない不安と寂しさを訴えているのです。
親密感が一番の癒しになりますので、許し上手になって、繰り返しパートナーの不安と寂しさに寄り添ってみてください。パートナーが「態度を変えよう」と思ってくれるまでがしんどいので、あなたの愛情を見守り応援してくれる人がいるといいですね。
◎リクエストを頂きました◎
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人からすぐにバカにされたと感じやすいのはどうしたらよくなるでしょうか。夫は、すぐに他人に腹を立てます。
例えば、空港でWi-Fiルーターを受け取りに行ったのにカウンターの場所が移動していて、その時のスタッフの対応が気に入らないと、「自分をバカにした!」と恨み殺さんばかりに怒ります。
「愛想は悪かったかもしれないけれど、あなたをばかにしてはいないと思うよ」と私がなだめても、どうにもなりません。
私は、スタッフの対応が悪くてムッとするまではわかりますが、夫の、強烈な、恨みのような感情が理解できません。そのようなときに夫のそばにいるのは苦痛です。
.逆に、感じのいい対応をしてもらうと、神様かとばかりに大げさに褒めちぎります。そのギャップにもうんざりです。どうしたらよいか、ヒントをいただければ幸いです。よろしくお願いします。
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リクエストをありがとうございます。
パートナーが、お店などで突然怒り出すと、それが自分に向けられたものでなくても困りますね。しかも言い分が、「自分をバカにしている!」のような、必ずしもそうとも思えないものだと、どう反応したものか迷いますし、一緒にいることが恥ずかしいと感じることもあります。
あまりにも繰り返すとうんざりして、パートナーのことを好きでいられなくなりそうです。
そんな怒りっぽいパートナーをどう理解して、愛したらいいのでしょう。
ご一緒に考えてみましょうね。
まず、このご主人(A夫さんとします)が生きている世界がどんなものか想像してみましょう。
他人からちょっとでもつれない対応をされると、自分は「バカにされた」と脳内で意味づけられるとしたら、毎日、ハートはいったいどれだけ傷つくことでしょう。
それだけ「バカにされる」ことに警戒心があるということは、自分は「バカにされる」存在である、と誰よりも「自分が」思っている、ということになります。
常に、見下されることを心配しながら生きているとしたら、それは何とも、怖い、悲しい、寂しい世界ですね。気が休まるときがありません。そんな怖い世界の住人であればこそ、逆に、自分が安心できるような優しさに出会うと、その人はまるで「神さま」か「天使」のように感じてしまいます。
A夫さんが見ている世界は、大勢の自分を脅かす「悪魔」と数人の「天使」のどちらかしかいないところなのかもしれません。
「怒り」は、「わかってほしい」「助けてほしい」「愛してほしい」という助けを求める声だ、と言います。
特に、この「自分をバカにした!」と恨むような激しい怒りは、「自己愛憤怒」と呼ばれ、自己愛が弱い人の「(もっと)愛してほしい!」という悲痛な心の叫びなのです。
自分は「愛されない」「大切にされない」という思い込みがあるからこそ、「他意はないけれど愛もない」言動に接すると、「愛されない」怖れや悲しみ、寂しさに襲われそうで怖くて、「攻撃は最大の防御なり」とばかりに相手を罵倒して、「自分はダメだから愛されない」という状況を避けようとします。
相手を罵倒していますが、本当に言いたいのは、「(愛のない態度は)痛いよ~!悲しいよ~!寂しいよ~!怖いよ~!」なのです。残念ながら、人を攻撃しているので、結果的には、その人を余計に遠ざけてしまいます。
自己愛憤怒は、反射的に強い怒りの感情が噴き上がるので、ご本人も、なかなかコントロールできません。それが「怒る」のにふさわしい状況か考える間もなく他人を罵倒し、引っ込みがつかなくなることが多いのではないでしょうか。
この「怒り」が、身内ではなく、お店の人などアカの他人に向かうようであれば、「本当に怒りたい(愛してほしいと言いたい)相手にそう言えない」のです。
例えば、本当は、お母さんにもっと自分を認めてほしいのだけれど、それは無理だと思い込んでいると、それはあまりに悲しすぎるので、ココロは「お母さんに承認してほしい」という気持ちそのものを「なかったこと」にして抑え込もうとします。
でも、「認めてほしいのに承認してもらえないのではないか」という悲しみや不安はなくなりませんから、「(怒ったとしても後腐れのない)アカの他人」のつれない態度に、過剰に反応してしまいます。
もともとが「愛されない」怖れであり、「痛み」なので、A夫さんが「バカにされた」と思いやすい思い込みの世界から出てくるための鍵も「愛される」ことにあります。
では、「バカにされている」「愛されない」と思い込んでいる人に、どうしたら「愛」を感じてもらえるでしょうか?
1)「バカにされている」と思い込んで臆病になっているから、自分の「正しさ」にしがみつこうとします。「正しさ」をあからさまに否定しないこと。いきなり鎧を剥ぎ取られたような怖さを感じます。
2)「正しさ」の一端を認めつつ(この例でいけば、「カウンターの変更のご案内なかったね~」「対応が悪かったね~」など)、怒りたくなる気持ち(本当は「怖くて不安」)に「腹立たしいね~」と寄り添います。
パートナーや家族ならば、背中に手を当てるなどのスキンシップで温かさを感じてもらうのもいいですね。
3)日頃、機嫌がいいときに、頻繁に、具体的に、彼のどういうところが素晴らしいと思っているかを伝えるようにします。こういう方は、繊細で、優しく、ストイックに努力する人が多いので、承認できるところはたくさんおありです。
4)根底に「不安感」があるので、「そばにいる」ことが安心感につながります。
5)「許し」上手になりましょう。「不安だったのね」「怖かったのね」「寂しかったのね」と理解して、すぐに水に流します。
自己愛憤怒を向けられたり、そばにいると「恨まれるほどの加害者」にされる感覚になり、嫌な気持ちになります。強い口調は、そうでも言わなければわかってもらえないという怖れの裏返しです。あなたがそれほど悪いわけではありません。
6)1~5までがある程度できるようになると、あなたの存在は彼にとってとても大きなものになります。あなたが、「怒ると怖いし、傷つくからいやだ」と、「怒り」の感情であなたも傷つくことを、「言っている内容が正しい、正しくないではない」としたうえで伝えてみましょう。
本人も、まんざら自覚がないわけでもないので、あなたが見捨てないとわかると、態度を変えようと努力してくれます。
自分のことではなくても、恨みごとを聞くのは疲れるものです。パートナーを愛そうとしても、めげそうになることはあります。そんなときは、カウンセラーに応援させてくださいね。
(完)