ある晩、急にパンが食べたくなったものの、ちょっと遅い時間だったので、どこかまだ空いているお店はないかなと思って調べたところ、家から少し離れたところにあるパン屋さんが開いていることがわかりました。
閉店間際の時間だったので、「まだ営業していたらいいな」と思ってお店についたところ、店先で袋を渡されました。
袋の中には5種類ぐらいのパンが入っていて、緊急事態宣言中ということで、余ったパンを無料で配布されているとのことでした。
「いいのかな〜」という想いと、でもやっぱり嬉しい気持ちでその日はありがたくいただいて帰りました。
そして、その道すがら思ったことは、「今度絶対に、このお店で買おう」ということです。
そのお店はそんなに近くはないのですが、その日以来、何度か買いに行っています。
これは何が起こっているのかというと、お店の厚意に対して、私も好意を返したくなるという返報性の法則が働いたのです。
返報性の法則とは、私たちが相手から何かしてもらったり、相手から受けた好意などに対して、お返しをしたくなる心理法則をいいます。
この返報性の法則は、対人関係全般に効果がありますが、仕事上の人間関係をより良くするためにも有効です。
例えば、職場で、「好意的に思われていない」とか、「認められない」「信頼されていない」、「評価されない」という不安や不満があったとします。
そんな時に、相手にあなたがほしいと思っている好意や、承認や信頼、評価する気持ちを相手に対して持ち、少しでも表現していくと、相手も、あなたに対する好意や、承認、信頼、評価する気持ちをもつ確率がぐっとあがります。
返報性の法則が働くからです。
ただ、相手が上司や先輩だったりすると、「認めたり、信頼するのは相手の役割なんだから、なんで自分がそんなことしないといけないんだ」と思うかもしれません。
確かに、立場や役割的にはそうかもしれませんが、心理学の考え方からすると「自分がほしいものは、先に相手に与える」です。
というのも、例えば「信頼」を例にすると、相手は、あなたから信頼を与えられるまで、「信頼される」ということがどれぐらい大切なのか気づいていないかもしれないからです。
また、実は、相手もあなたからの信頼がなくて、不満に思っていて、「信頼してくれないんだから、こちらだって信頼できない」と思っているのかもしれません。
あなたが相手を信頼することが難しいなら、相手にとっても信頼するということがなかなか難しいことだと理解できるかもしれません。
もちろん、あなたが欲しいものを相手が必ず返してくれるわけではありません。
ただ、あなたの側から欲しいものを相手に与えないかぎり、状況があなたが望む方向に変わることは難しいことが多いのです。
また、あなたが好意をもてばもつほど、相手から自分が嫌われているとは感じないものですし、あなたが信頼すればするほど、相手からも信頼されていると感じることができます。
もし、自分から与えることに抵抗感があるなら、そこにはあなたの対人関係をより良くするためのヒントが隠れているかもしれません。
立場上、難しいこともあるかもしれませんが、まずはあなたから欲しいものを相手に与えて、よりよい人間関係を築いてみませんか?