あなたの親は、あなたをどんな風に愛する人ですか?

このタイトルはずいぶん前、私がカウンセリングを受けるようになった最初の頃に、ある心理学講座に参加したときに出た質問のひとつです。
「あなたの親は、あなたをどんな風に愛する人ですか?」
この問いを前に私は、何も書くことが出来ませんでした。
何も思い浮かばなかったからです。
あの親が愛してくれた?
あの親が何をしてくれた?

その後も時々思い出してこの質問に取り組んできたのですが、何も浮かびませんでした。
やっと出てくるのは、ここまで育ててくれた、食べさせてもらった、学費を出してくれた、こんな答えばかりでした。
これらの理由はありがたいことではあると思うのですが、でも、それらは子供産んだら当たり前にすることじゃないの?しなかったら育児放棄になるんじゃないの?という疑問も湧いてくるので、素直にありがたいとは思えなかったんです。

毎日のように愚痴を聞かされたり、親に反抗したら死ぬって脅されたり、親にとって都合のいい子じゃないと機嫌が悪かった人でした。
それに「親のくせに都合の悪いことは全部私のせいなん?」って、私は母に対して ”そこに愛は、あるんかぁ??” って思っていました。

私はカウンセラーとして活動を始めてもまだ、この答えを見つけられずにいました。
その一方で私は「あなたは自分を毒だと思ってるから、大切な人を遠ざけるようなことを無意識にしてしまうんですね。」と何人ものお客さまにお話をさせていただいてました。

ある日、突然このふたつがくっついたんです。
母は、自分を毒だと思ってるから大切な人を遠ざけてきたんじゃないか。
だから、どう見ても好きになれない態度ばっかり取ってきたんじゃないか。
これが母の愛し方だったんだ。

お客さまには何度も何度もお話ししてきたはずなのに、全く気付かなかったのです。
ずっと交わることのなかったこのふたつが、本当にある日突然、ペンとアップルがくっついたアッポーペンのようにドッキングしたんです(笑)。
あんなに何度も課題に向き合ってきたときには何も浮かばなかったのに。
それでも、向き合おうと思っていたらいつかこんな風に気付けるものだなと改めて思いました。

私の母の場合は、まさか自分を毒だと思ってるなんて、そんな自覚はないと思います。
私も私で、「いつも親身に私に向き合ってくれた」みたいな、いわゆる模範解答ばかりを探していたので全然気付けなかったと思うし、母に愛なんかあるはずがない、愛されてるなんて認めたくない、という抵抗もずっとあったので気付くのに時間がかかったのかもしれません。

あんたのためだと言ってお金や物で私の機嫌を取ろうとする人でした。
本当は自分のためじゃないと思っていたのでずっと拒否してきました。
私の思い通りの愛し方じゃない。
お金やものなんて要らないの。
そんなことで誤魔化されたくないの。
でも、親はそんな愛し方しか知らなかったのかもしれないって、頭ではなくやっと腑に落ちたのです。

自分の思い通りの愛し方をしてくれないからといって、愛されていないとは限らないのです。
でも、だからってこれで母親を許せるかっていうとそうでもなくて、まだ抵抗があります。
親を許すことがいかに難しいか。
お客さまからもよくお聞きしますが、私もいま、全く同じ位置にいるのかもしれません。

親を許すというのがゴールだと思うと、許すくらいなら何もしたくないと思っていた時期が私にはありました。
でもこの考えだと苦しいままでした。
だから、親を許す前に理解することから始めました。
それは親のためではなく自分が楽になるためです。
理解したからってすぐに仲良くしなさいとか、そういうことじゃないと思います。
理解したときに自然に仲良くしたいと思えたのならそれでいいんだし。

それでも、以前と比べるとずいぶん楽になりました。
以前は怒りの感情で一杯だったなぁと思います。
今でも完全に怒りが消えたわけではありませんが、その火はだいぶ小さくなってきたと感じます。

私は母から実際に迷惑だと言われたことが何度もありました。
が、母親自身もまた、自分のことを迷惑な存在だと心のどこかで思ってるのかもしれないと思いました。
「頭ではわかっていること」がこんなふうに一つ一つ腑に落ちていくことで、この問題は乗り越えていけるんだろうなと思います。
道半ばでもいいんだ。
まだ解決出来てなくても、ここまで頑張ってきた自分にエールを送りたいとやっと思るようになったのです。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

対人関係、自分を好きになれない、人の目が気になる等の自己の問題。 母娘関係、家族関係などが得意である。親との関係や対人関係などで悩んだ 自身の経験から学んだことを活かし、感覚的で一緒に考え提案していくスタイルが得意である。母性的で柔らかい雰囲気のカウンセリングには定評がある。