あなたも不法侵入を許しているかもしれない?
バウンダリーという言葉、皆さんはご存知ですか?
バウンダリーは「境界線」のこと。心理学的なバウンダリーは「自分と他人を区別する境界線のこと」をいいます。
一般的に、子供の頃は他人(多くは親)との距離が近いのでバウンダリーが曖昧な傾向があります。成長するにつれて個が確立してくると、自分と相手のバウンダリーがハッキリとしてくるといわれています。
バウンダリーを学ぶことは、「自分と相手の心の領域」を尊重するために役に立ちます。今回から4回シリーズでバウンダリーにまつわるお話をお届けしますので、どうぞお楽しみに。
◆バウンダリーとはなにか?
たとえば、二軒のお家が並んで建っているところをイメージしてください。ひとつはあなたのお家、もうひとつはお隣さんのお家だと思ってくださいね。
当然のことながら、あなたのお家とお隣さんのお家には土地の境界線があります。なので、お隣さんのお庭にどんなに落ち葉が落ちていたとしても、あなたが勝手に入っていってお掃除をすることはありません。
お隣さんのお庭には勝手に入りませんが、これがあなたとお母さんとの関係ならどうでしょうか?人と人の境界線は目に見えるものではないので、曖昧になりやすいところがあるのです。
たとえば、あなたが自分の部屋でくつろいでいるときに、突然お母さんがノックもせずに部屋に入ってきてお掃除をしようとしたら、「ちょっと勝手に入ってこないでよ!ノックぐらいしてよ!」と言いたくなりませんか?
これは「あなたの部屋」と「あなたの心の領域」に許可なくお母さんが侵入してきたということになるのです。このようなことは悪気なく、わりと多く行われていることではないでしょうか?
お部屋のお掃除されることを嬉しく思う人もいますから、双方合意のもとで行われているのであれば問題はありません。ただし、イヤイヤそうしているのであれば、そこにはバウンダリーオーバーが起きていることになるのです。
◆バウンダリーオーバー=相手の領域に踏み込むこと
私も知人から似たような話を聞いたことがあります。彼女が仕事に行っている間に、お母さんが勝手に部屋に入ってお掃除をしていることがこれまでもたびたびあったそう。
部屋が散らかっていることはわかっていたので、いつも申し訳なく思っていた。掃除機がかけてあるぐらいならば、まぁいいかなと何も言わなかったけど、その時はいつもと違ったのです。部屋のカーテンが断りもなく変えられていたというのです。
お母さんが選んだ子供っぽいデザインのカーテンがかけられているのを見て、彼女は思いました。「お母さんはいつも私の心のなかに勝手に入ってくる。いまだに私のことを子供扱いしているんだな」と。
彼女がどうしたかというと、自分の部屋に鍵をつけたのです。当然のことながらお母さんは怒りだしました。「あなたのためを思ってやったのに!!」と。
「お母さん、ごめん。これからは自分の部屋の掃除は自分でするね。長いこと本当にありがとうね」。鍵をつけることで彼女は自分の領域を主張したわけです。そして、彼女の領域となったお部屋は、自分でお掃除をするという責任を取ることにしたのです。
◆バウンダリーオーバーを起こしやすいとき
彼女のお母さんが悪いと言いたくてこの話をしているわけではありません。バウンダリーオーバーが起きるのは、じつは「善意」からであることがとても多いからです。お母さんが娘のためを思ってしている行動ですから、している行為自体はとても良いことをしているのです。
バウンダリーオーバーが起きやすいのは「自分が良いと思うことは相手も良いと思い込んでしまうとき(投影)」「相手のためと言いつつ自分がそうしたい(善意のおしつけ)」「相手の気持ちの確認不足(コミュニケーション不足)」などが多くみられるようです。
自分の領域に踏み込まれていると思っても、相手が善意からしているとわかるときには「やめてほしい」とは言いにくくなるわけです。逆をいえば、自分も知らず知らずのうちに踏み込みすぎてしまっているかもしれません。
バウンダリーは、親子であっても夫婦であっても友人であっても
「ここは私の領域」「ここはあなたの領域」
「これは私の問題」「これはあなたの問題」
「これは私の責任」「これはあなたの責任」
「これは私の感情」「これはあなたの感情」
という区別があってしかるべきだと教えてくれているのです。
(続)
- 人間関係に悩んだら心の境界線をチェックしよう
- バウンダリーの視点から考える過干渉と放任主義について
- お母さんとの距離感から作られるあなたの恋愛パターン
- 境界線という意識を身につける